| フェラーリの歴史な常に「モータースポーツ」とともにあった |
「伝統を守る」イメージの強いフェラーリではあるが、常に革新に挑戦してきた自動車メーカーでもある
さて、現在の市販車そしてレーシングカーの多くはターボエンジンを搭載していますが、2024年は「フェラーリがターボエンジンを搭載したF1マシンではじめてチャンピオンシップを制してから42周年」なのだそう。
そしてこのタイトル獲得を決めたのは1982年のラスベガスグランプリ、そしてこの際のマシンは126 C2です(このマシンはフェラーリ初のターボ搭載F1カー、126 CKの発展形である)。
126 C2はフェラーリの初のターボF1カーである1981年の126 CKの流れを受け継いだもので、1.5リットルV6エンジンを搭載しており、強力で速かったものの「運転が難しく信頼性に欠けていた」といい、それがベルギーGP予選中でのジル・ヴィルヌーヴの不幸な事故、ドイツGPでのディディエ・ピローニが体験したクラッシュにつながったのかもしれません。
この「ターボ」パワーは圧倒的であり、その後1989年までF1を支配したものの、高コストが原因で(レギュレーションによって)禁止され、しかし25年間経った2014年に復活し、それ以来すべてのF1カーに搭載されています。
Image:Ferrari
その後1989年に「F1からターボが消える」
ターボチャージャーは、エンジンを小型化しながらもより強力にするため、そして効率化を達成するための重要な技術であり、パワートレインエンジニアの武器の一つとして確立されることとなりますが、まずフェラーリはF1の技術をフィードバックする形で(ターボ搭載F1マシンではじめてチャンピオンシップを獲得した)1982年に「208GTB ターボ」を市販車(ロードカー)として投入。
このクルマに搭載されていたのはKKK製のシングルターボで、これによって小さなエンジン容量によるパワー不足を補っており、3リッターエンジンを搭載する308GTB(240馬力)には及ばないものの、2リッターエンジンながらも220馬力を発生し、かつ税制上のメリットを生み出しています。
Image:Ferrari
さらに「ターボエンジンを搭載するフェラーリ」として有名なのは1984年に登場した288GTOで、現代の限定スーパーカー、または「ハイパーカー」の先駆けとして認められる288GTOはわずか272台のみが製造され、当時「信じられないほど速いクルマ」であったといい、ツインターボチャージャーによってV8エンジンの出力は400馬力にまでも高められ(208GTBターボの220馬力に比較すると圧倒的である)、軽量な複合素材ボディと相まって驚異的なパフォーマンスを誇ることに。※フェラーリはこの288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラ・フェラーリ、F80のみを公式に「スーパーカー」と呼んでいる
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F40はエンツォ・フェラーリが最終的に認証した最後のロードカーであり(1988年に亡くなっている)、多くの人々が今なおその「強烈な」ドライブフィールによってF40を「最もエキサイティングなスーパーカー」として評価しているのはよく知られるところでもありますね。
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その後も「フェラーリとターボエンジン」の物語は続く
その後もターボチャージャーは、フェラーリの現代の多くの車両のパフォーマンスを向上させ、2014年にはカリフォルニアT、2015年には488GTBにもターボエンジンが搭載され、今ではすべてのV8モデルにターボパワーが搭載され、さらにはV6エンジンを搭載する296GTBもやはり「ターボパワー」。
さらにこの296GTBではターボに加え「ハイブリッド」を搭載していますが、このハイブリッド搭載の恩恵は比較的大きいと認識しており、というのも「単にエレクトリックモーターを追加しただけ」ではなく、低回転・低速域をエレクトリックモーターのアシストに任せることでガソリンエンジン(とターボ)は高回転・高速域へと集中することが可能となっていて、ターボエンジンのパフォーマンスをさらなるレベルへと引き上げているから。
この設定はSF90ストラダーレ / SF90スパイダーにおいて顕著であり、これがル・マン24時間レースの覇者である499P、さらには最新ハイパーカーであるF80にもつながるわけですが、この「ターボ」の歴史は”ターボ時代の最初のワールドタイトルを獲得した126 C2”にまで遡ることができるわけですね。
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参照:Ferrari