
| もはや株価は「業績」よりも「期待値」「市場心理」に大きく左右される |
今後の株価の回復には期待がかかる
さて、昨日フェラーリは株主・投資家向けに「キャピタル・マーケッツ・デイ」を開催し、様々な財務指標、そして今後の計画について公開しています。
そしてすでに第三四半期の決算内容が公開されているポルシェ、メルセデス・ベンツ、BMWとは異なって「非常に」優れる内容ではあったものの、フェラーリの株価は-14.99%という、ぼくが知る限り「最大の」下落幅を記録しており、その理由について考えてみましょう。
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今回の下落は「暴落」といってもいい
なお、この「15%くらい」の下げ幅は非常に大きく、「暴落」といってもいいかもしれません。
しかし上述の通り、フェラーリは「好調な」業績を発表しており、さらにはファン待望の「内燃機関の存続」についても表明しています。
- 2026年に達成する予定であった利益目標を2025年に「1年前倒しで」達成
- それに関して「目標を上方修正」
- 自動車業界において「群を抜いて高い」利益率をさらに引き上げる
- オーダーブックは2年先まで「いっぱい」
- ファンからの支持が厚い内燃機関「V12、V8、V6」エンジンの開発を継続
- 株主への還元も強化
こういった内容を考慮すると、どう考えても株価が上がりそうなものですが(じっさいぼくもそう考えていた)、しかし実際には市場稀に見る下落幅を記録しているわけですね。
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やはり「エレットリカ」が関連していると考えられる
ここで唯一「株価下落」の原因として考えられるのがフェラーリ初のEV、エレットリカ。
フェラーリは今回の業績発表に合わせてエレットリカの情報を公開しているのですが、このニューモデルの「競争力が低い」と考えられた可能性がまず1つ。
「1,000馬力、0-100km/h加速2.5秒、最高速310km/h」という驚愕の性能を誇るものの、いずれの数字も「既存のハイパフォーマンスEVに対し抜きん出ているわけではない」ことから、このクルマがブランド価値を押し上げたり、「もはや誰も関心を示さない」高級EV市場において顧客を惹きつけるだけの魅力を持たず、かつ「とんでもない数字を掲げる」中国製EVに対抗できないと考えられたのかもしれません。
Image:Ferrari
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実際のところ、ポルシェ・タイカンは中国製EV(主にシャオミSU7)に販売を侵食され大きく数字を落としていることが報じられているため、「最強のブランド価値を誇るフェラーリといえど」ポルシェの二の舞いになるのではないかという不安を抱いた投資家が少なくなかったのだとも考えられます。
もちろんそのクルマの魅力は数字だけでは語ることができず、それは今までフェラーリが身を持って実証したことではありますが、エレットリカが「想像を超えない」「予想の範囲内」であったと認識された可能性が推測され、期待値を超えなかったことが嫌気されたのかもしれませんね。
参考までにですが、フェラーリは現在「中国市場での販売」を戦略的に絞っており、2024年だと、それまでのピークであった11.7%から8.4%にまで縮小させていて、この点においても(中国に依存する)ポルシェとは事情が異なるものの、エレットリカ単体では中国市場での販売が見込まれていただけに(フェラーリは”スポーツカー”を中国市場へと回さない代わりに、中国市場へとエレットリカを多めに供給する計画を持っていたのかもしれない)、投資家にとっての失望が大きかったのかもしれません。
Image:Ferrari
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フェラーリは電動化にかかるコストを回収できない?
そしてもうひとつ、もちろんエレットリカ絡みとなりますが、今回フェラーリは「本来、(2030年に)40%としていたEVの販売につき、20%に縮小すると正式にコメントしています。
これが意味するところは、「これまで進めていた電動化計画の縮小」で、そして投資家の間では広く「電動化にはとんでもなくお金がかかること、その元を取るには大量の販売が必要なこと、シャオミですらEV事業単体では黒字化できていないこと」が知られているため、販売規模を縮小することによってフェラーリが「投じたコストを回収できない」と判断された可能性があるのかも。
これはしごく”もっとも”であり、フェラーリはEV及びそのコンポーネント製造を主目的とした「Eビルディング」を建設していますが、この設備を有効に活用できないのではないかと捉えられても不思議はないだろうと考えています。
だ、Eビルディングの”E”はエレクトリックではなく「進化(evolution)、環境(environment)、エネルギー(energy)」という3つの意味」を持つと(竣工時に)説明されており、、先日の”Eボルテックス”しかり、フェラーリは新しい時代に向けて”E”を押し出してゆくのかもしれません。
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もちろんフェラーリはEVを減らす変わりに「内燃機関」を増加させることになり(EV専業でもなく、ハイブリッド車も製造するため、EVのみで電動化コストを吸収するわけでもない)、こちらは電動化ほどではないにせよ、それでも計画外のクルマを投入するのだとすれば「追加コストが必要になり」、当初の計画よりは「利益が削らてしまう」ことが嫌気されたという可能性も。
しかしぼくとしては、今回の売りは「ここ最近株価が上がったための利益確定」といった動きも多分に含まれているとも捉えていて、今後フェラーリの新しい計画が具体化してゆくにつレ株価を戻すだろうとも考えており、よって(例によって)下がったところで買増ししてゆく予定です。
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