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フェラーリ初のEV「エレットリカ(Elettrica)」、中国市場での切り札に?

今日のフェラーリ296GTB納車待ち(420日目)。フェラーリ本社に問い合わせていたオプション2点への回答があり、ようやく生産待ちの列に並ぶことに

| フェラーリ・エレットリカは「中国市場にマッチした」条件を持っており、最大のターゲットは中国なのかも |

フェラーリが中国でエレットリカを大量に販売したとしても、それがブランドイメージや中古市場に与える影響は「極めて小さい」

フェラーリが2026年に投入を予定している初の電気自動車「Elettrica(エレットリカ)」。

これは単なる電動化の一歩ではなく、落ち込みが続く中国市場での復活をかけた戦略的モデルとなるのでは、と見られています。

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中国での高級車販売が2024年に急減、フェラーリも25%減

中国では2024年、経済減速の影響を受け、50万元(約1000万円)以上の高価格帯車の販売が前年比20%減少。

この価格帯の販売台数はわずか67.7万台にとどまり、フェラーリの出荷台数も第1四半期で25%減と深刻な状況です。

なお、フェラーリは基本的に「その車両の100%が顧客によってなされた発注に基づき製造される」と認識していたのですが、先日上海のフェラーリディーラーを訪れた際には「新車のプロサングエの売り物が3台ある」と言っていたので、中国では「ディーラーあるいはインポーターが見込みで発注し、入荷した車両を販売する」という流れを取っているのかもしれません(あるいはその3台のプロサングエにつき、キャンセルによって浮動となった在庫車なのかも)。

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税制優遇でEVに追い風|エレットリカはガソリン車の4分の1に

中国市場におけるエレットリカ最大の強みの一つは「税制面での優遇」だとされ、というのも中国では輸入ガソリン車には車両価格の最大4倍もの税金(排気量、価格帯など様々な種類の税金が課される)がかかる一方、EVはその税金が販売価格の約30%に抑えられる見込みだからです。※しかもナンバー取得費用についても大きな差があり、上海だとガソリン車は最大150万円くらい、EVはゼロだと聞いている

よって、仮にプロサングエとエレットリカの「イタリア本国価格が同じ」だとしても、エレットリカはプロサングエの数分の一の価格で購入できるということを意味し、この差は価格競争力上での大きなアドバンテージとなることは間違いなく、EVモデルの普及が進む中国市場においてフェラーリブランドの再評価を促す可能性がある、とも見られているわけですね。

そう考えるならば、「時期尚早」だと考えられていたピュアEVの投入につき、実際には「実にいいタイミング」で投入されるのだとも考えられ、このエレットリカは「実は中国対策」だったのかもしれません。

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中国市場はプレミアムカーメーカーにとって「諸刃の刃」

なお、フェラーリは2010年代はじめには中国に対して非常に力を入れていたものの、その後フェラーリで無謀な走行をしての事故が相次いでしまい、ブランドイメージの失墜を懸念して「中国での販売を抑えるようにした」とも言われています(急速に経済が発展して富裕層が誕生しフェラーリをこぞって購入したが、それまでの中国は自家用車普及率が低く、彼ら/彼女らは運転経験が浅く未熟であった)。

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実際にこういった動きが本当なのかわからないものの、ランボルギーニも同様に「中国での販売を絞る」対策を取っていて、しかしこれには(おそらく)同時期に導入された、官僚の腐敗防止を主眼とした贅沢禁止令による急激な販売の落ち込みも関係していると言われており、「中国市場に依存すると、コロコロ変わる政策や環境の要因を大きく受けてしまい業績を安定させることができない」という経営的判断が働いていると言われています(これはロールスロイスも同様で、この時期以降、プレミアムカーメーカーは世界を3つないしは4つに分け、均等な販売を目指すようになった)。

なお、ランボルギーニはこの解決策として「ウルス」を投入していて(ウルス・コンセプトは北京モーターショーでデビューしている)、ウルスだとスーパースポーツのように「無茶をして事故を起こす」可能性もさほど高くはなく、そしてスーパースポーツラインアップ(当時だとアヴェンタドールとウラカン)を増産することなく販売台数を伸長させることが可能なので(スーパースポーツを大量に生産するとその価値とブランドイメージが下がる)、ランボルギーニとしては「一石二鳥」であったのかもしれません。

そして今回のフェラーリ「エレットリカ」もまた同様である可能性が高く、これを中国市場で大量に販売したとしてもフェラーリのブランド価値を毀損する可能性は非常に低く、というのも「エレットリカはこれまでのフェラーリとは完全に異なる存在であり、関連性がない」「誰もがエレットリカを”新種”と捉え過去のフェラーリのモデルと結びつけることはしない」「中国市場は隔絶された環境にあり、そこで”フェラーリのEV”が溢れようとも誰も気にしない」だろうから。

そして中国市場で購入されたエレットリカが他の国や地域に中古車として大量に流れることも考えにくく(30%といえど税金を考慮すると販売価格が高価であり、中古市場ではこれを反映させた相場が形成されるはずで、この相場をベースにした買取価格が中国の標準になると他国のバイヤーは手を出せない)、「中国市場はそこだけで完結する」ガラパゴスなのかもしれません。

さらにいまの中国市場は「電気自動車ばかりが売れる」という傾向があり、そしてSUVを好むということからも、やはり「エレットリカはうってつけ」であるとも考えられ、考えれば考えるほど、エレットリカは”フェラーリのイメージを損なわず、スーパーカーラインアップの価値を維持しつつフェラーリの利益を伸長させるための”中国対策なんじゃないかという気もしてきます。

そのデザインはプロサングエ風クロスオーバー

現在のところ、エレットリカはSUVスタイルを持つプロサングエに近いハッチバック型クロスオーバーになると予想されていますが、車体サイズは(日常使いを考慮し)ややコンパクトに抑えられる見込みだとも。

さらに特許情報によると、エレットリカには以下のようなユニークなドライビング体験を再現する仕組みが採用される予定です。

  • 擬似V8サウンド(内燃機関風のサウンド再生)
  • 仮想ギア変速機能(アイオニック 5 Nのような操作感)
  • パドルシフト対応のトルク変化演出

これにより、「エンジン音とシフトチェンジの感覚」が恋しいファン層にも対応し、従来のフェラーリらしさをEVでも再現する狙いが見られますが、中国市場では「ダンス」「カニ歩き」などの特殊な機能に加えて「自動運転」「室内空間の広さ」も重要視され、フェラーリがどこまでこれらの要素を追求し、あるいは満たせるのかについても注目が集まりますね(中国に媚びすぎると間違いなく旧来のファンの反感を買うであろう)。

フェラーリ・エレットリカはすべてイタリア国内で開発・生産

なお、フェラーリはこのエレットリカにつき、バッテリーパック、インバーター、エレクトリックモーターといった主要コンポーネントを全てイタリアで開発・製造すること、ブランドとしての「Made in Italy」へのこだわりを堅持することについても言及しており、これは(イタリア大好きな)中国のバイヤーにとって大きな意味を持つことになるであろうとも考えています。

まとめ:エレットリカは中国市場におけるフェラーリ再浮上のカギとなるか?

なお、エレットリカに関する今後のスケジュールは以下の通りで、ある意味では「これまでのどのクルマよりも」このエレットリカは重要な位置にいるのかもしれません。

そして、フェラーリがこのエレットリカを「過去のフェラーリと強く結びつけ、正当なフェラーリの一員として世に送り出す」のか、それとも「全く新しい考え方を持った、これまでのフェラーリとは異なる”固有種”としてアピールするのか」についても気になるところですが、近年のフェラーリはモデルごとの個性を分離・強化する傾向があるため、ぼくとしては「後者」であろうと考えています。

  • 2025年10月:パワートレインのプレビュー発表予定
  • 2026年春:エレットリカ正式デビュー(もしかすると中国で発表されるかも)
  • 2026年10月以降:中国市場へのデリバリー開始予定

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