
| 現時点でフェラーリ「エレットリカ」に対する人々の対応は様々ではあるが |
フェラーリ、ついに電動時代の幕開け
フェラーリがついにブランド史上初となる完全電動モデル「Elettrica(エレットリカ)」を発表しましたが、これは車名が示す通り跳ね馬のバッジを付けた初のフルEV。すでに公道でテスト走行するプロトタイプも目撃されています。
4シーター構成を採用し、ポジション的には「Purosangue(プロサングエ)」に近いグランドツアラー的なキャラクターになるとみられる一方、まだまだ「謎」も多く、ここで現在わかっていることを整理してみましょう。
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1.1,141馬力を誇る4モーターパワートレイン
エレットリカの駆動方式は前後に2基ずつ、合計4つの電動モーターを搭載。
スペック | 数値 |
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出力 | 1,000馬力以上(1,141馬力に達する可能性も) |
0-100km/h加速 | 約2.5秒 |
最高速度 | 約310km/h |
リアモーターは各416ps、フロントモーターは各141psを発生し、フェラーリのモータースポーツで培った永久磁石同期モーター技術を活かしつつも高出力かつ高回転を実現しています。
モーターには熱伝導性樹脂などの新素材を採用し、軽量・高効率・高冷却性を両立していますが、フェラーリにとってのエレクトリックモーターは「ガソリンエンジン」と同じ意味を持ち、よって(ガソリンエンジン同様に)エレクトリックモーターについては競合他社の多くがそうするように「サプライヤーからの供給」を受けるのではなく、自社にて開発と製造を行う道を選択しています。
2.バッテリー:軽量化と低重心の両立
エレットリカに積まれるバッテリーは(エレクトリックモーター同様に)フェラーリが完全自社開発・組立したもの。
- 85%の重量をフロア下に配置し、低重心化と理想的な重量配分を実現
- パワーデンシティは約1.3kW/kgという驚異的な数値を誇る
- 均一な温度維持のための先進的冷却システムを装備
- 修理時には容易に取り外し可能な設計を採用
Image:Ferrari
3.空力と軽量化を両立する「Eアクスル」
フロント・リアともにEアクスル(電動アクスルユニット)を採用し、これはフェラーリ社内の鋳造部門で設計・製造されたオールインワン構造を持ち、トルクベクタリング機能を備えています。
- リサイクルアルミ合金を使用し、CO₂排出量を最大90%削減
- 軽量・コンパクト化により効率を向上
- 独自の潤滑システムで必要最小限のオイルを適時供給
Image:Ferrari
4.インバーター:フェラーリ技術の結晶
インバーターは高効率・軽量・低振動設計が特徴で、バッテリーの直流電力を交流へ変換してモーターを駆動するほか、回生ブレーキ時には逆変換による充電も行います。
前方インバーターはフロントアクスルに統合され、スペース効率と冷却性を両立することとなりますが、これによって「全席の足元スペースの確保」にもつながっているようですね。
Image:Ferrari
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5.“跳ね馬サウンド”を継承する独自の音響設計
多くのEVが人工エンジンサウンドを再現する中、フェラーリは独自の「電動サウンド」を開発。
- パワートレインが発する振動や周波数をセンサーで拾い、アンプのように増幅
- ドライバーに走行状況をフィードバックする“楽器的サウンド”
- エレキギターのような自然な共鳴音を再現
Image:Ferrari
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6.サスペンション:次世代アクティブ制御
足回りにはプロサングエやF80で採用されたアクティブサスペンションの進化版を搭載。
各ホイールごとに垂直荷重を制御し、走行安定性と快適性を両立したほか、新設計のショックアブソーバーにより2kgの軽量化を達成しています。
Image:Ferrari
7.“トルクシフト・エンゲージメント”によるフェラーリらしい加速感
フェラーリ伝統の「押し出されるような加速感」を再現するため、Elettricaにはトルクシフト・エンゲージメント機構を採用。
- 右側のパドルで5段階のトルクレベルを選択可能
- 左側のパドルではエンジンブレーキ効果を段階的に増加
- 電動モーターの即応性により、滑らかな移行とリニアなレスポンスを実現
Image:Ferrari
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8.ドライバーインターフェース:「マネッティーノ」と「E-マネッティーノ」
ステアリング上には2つのコントローラーを装備し(インテリアについては来年1月に公開予定)これにより、エレットリカはドライバーの感性に応じた操作体験を提供します。
- マネッティーノ:ESCオフ、Ice、Dry、Wet、Sportなど、走行モードを選択
- E-マネッティーノ:駆動方式(RWD/AWD)や出力特性を調整
Image:Ferrari
9.専用タイヤ:3社共同開発による新技術
エレットリカ専用タイヤは、3つの異なるサプライヤーの共同開発による成果でもあり、EVに求められる要件を高いレベルで満たすことに。
- 転がり抵抗を15%低減しつつ、ドライ/ウェット両性能を維持
- 5種類のタイヤラインナップ(ドライ3種、ウィンター1種、ランフラット1種)
- どんな路面状況にも対応する多用途性を実現
Image:Ferrari
10.先進的なシャシー技術
エレットリカに採用されるシャシーはフェラーリ初の「75%をリサイクルアルミで構成したスケートボード型」。
バッテリーの85%はフロアパンに”可能な限り低く”マウントされ、残り15%はフェラーリのミドシップスポーツにインスピレーションを得て「リアシート真下」に配置することで重心を最適化しています。
なお、ホイールベースは他社製EVのように「ロング」ではないとされ、さらには後輪操舵を備えることが明らかにあっているため、エレットリカはコーナリング性能を重視していることもわかりますね。
Image:Ferrari
更に主要コンポーネントが「車体の中心線上」に配置されていることがわかりますが、シャシーとコンポーネントの接合、とくにリアアクスルの結合に関しては強度を重視しており、これによってNVHを最小限に抑えているというので、静粛性や乗り心地にも配慮した「新世代のフェラーリ」としての設計を持っているのだと解釈できます。

Image:Ferrari
まとめ:フェラーリが描く“電動でも情熱的な未来”
フェラーリ エレットリカは、単なるEVではなく「電動でもエモーションを失わない跳ね馬」を体現するモデルになるものと思われ、「完全自社開発によるパワートレイン、音響、バッテリー、そしてデザイン」を採用することにより、フェラーリは電動化時代にも“走る芸術”の理念を貫くこととなるのかもしれません。
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