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| 往年のイメージそのままの「エスプリ」が登場することを期待 |
もちろん単なる「レトロ」ではなく未来志向にて
ロータスが約30年もの間、ブランドを象徴した名車「エスプリ(Esprit)」の商標を再出願。
これは「単なるノスタルジーか、それとも次世代EVスポーツカーへの布石か」と話題になっており、来年で50周年を迎えるエスプリ復活の裏側にある、ロータスの戦略的意図と新型モデルの可能性を考えてみたいと思います。
自動車ファンを熱狂させる「伝説の復活」の予感
スポーツカーの世界において、一つのモデル名が持つ重みは計り知れず、特に、英国の軽量スポーツカーメーカーであるロータスの歴史を語る上で欠かせないのが約30年間ブランドを象徴し続けた伝説のモデル「エスプリ(Esprit)」。
ロータスはこれまで、前身モデルを刷新する際にも、Evora(エヴォーラ)→Emira(エミーラ)とするなど、新しいネーミングを使うことを好んでおり(過去の焼き直しではなく、未来へ進むことを示唆するためだと思われる)、しかし、このたびロータスがその最も成功したモデルの一つである「エスプリ」の商標を新たに再出願したことが明らかになり、「ついにエスプリ復活か」と(ぼくを含めて)ファンが換気しているわけですね。
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ただ、現時点ではエスプリを示唆する情報はなにもなく、よって「これは単なる過去の保護か、それとも未来のスーパーカー市場への大胆なカムバックを意味するのか」など様々な憶測が囁かれているというのが現状です。
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エスプリ商標登録の裏側にある「必然性」
CarBuzzが報じたこの商標登録は、10月末に欧州連合知的財産庁(EUIPO)に対して行われたもので、車体や部品だけでなく、ゲームや玩具などにも適用されることから、ライセンス収入保護の意図も考えられます。
しかし気になるのは「なぜ今、ロータスはエスプリの商標を再登録したのか」。
1. 来年迎える「50周年」のインパクト
最大の理由は、エスプリの初代モデルが生産を開始した1976年から数えて来年(2026年)がちょうど50周年の節目となること。
ロータスにとって、エスプリは何度もモデルチェンジを繰り返し、最終的にツインターボV8エンジンを搭載するハイエンドモデルへと進化を遂げた”長期にわたる成功の象徴”でもあり、この偉大な歴史を持つモデルを記念して何らかの特別なアクションを起こすのはブランド戦略上”極めて自然な流れ”です。
2. エスプリが築いた「ハイエンド」への道
エスプリはロータスが「軽量・簡素」なスポーツカーだけでなく、スーパーカーを脅かすほどの高性能、そしてより快適でハイエンドな仕上がりを提供できることを証明したモデルでもあり、この「ハイエンド・スーパーカー」としての過去の成功こそが、EV時代に突入したロータスが”ブランドイメージを再構築する”上で最も頼りたい遺産なのかもしれません。
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「エスプリ」復活が担うロータスの戦略的役割
商標登録が意味するものが具体的にどのようなモデルになるのか?
現在、ロータスのラインナップ(エヴァイヤ、エミーラ、エレトレ、エメヤ)の構成、そして「完全電動化」からガソリンエンジン存続へと舵を切った最新の動向を踏まえると、エスプリ復活には以下の3つのシナリオが考えられます。
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1. シナリオA:内燃機関時代の終焉を飾る「特別限定車」
現在販売されているエミーラは、ロータスにとって最後の純粋な内燃機関(ガソリン)モデルとなる予定(ただしV8搭載にてフェイスリフトを迎える説もある)。
エスプリの商標を、このエミーラ、またはフラッグシップEVであるエヴァイヤの特別仕様車に冠し、レトロなカラーリングや特別な機能を持たせることで過去の栄光を讃えつつ、記念モデルとしてのプレミア感を高める可能性がまずひとつ。
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2. シナリオB:高性能「プラグインハイブリッド」へのリネーム
現在、エミーラにプラグインハイブリッド(PHEV)パワートレインが追加され、販売期間が延長される可能性が示唆されていますが、PHEVは一般的に、システム出力の最適化により驚異的なパワーを発揮できます。
もし、極めて高性能にチューニングされたハイブリッド版エミーラが登場する場合、これを「新時代の高性能スポーツカー」として位置づけ、新しい名前として「エスプリ」を与える可能性も十分に考えられます。
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3. シナリオC:EV時代のラインナップを埋める「完全新型スポーツカー」
現在のロータスのラインナップは高額なエヴァイヤ(EVハイパー)と、比較的安価なエミーラ(ガソリン)というスポーツカー、そして市場の主力となりつつあるエレトレ(EV SUV)、エメヤ(EVセダン)という実用的なモデルに分断されています。
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よってロータスには「EVハイパーとガソリンスポーツカーの間に位置する、新しいEVスポーツカーが必要」という声がたびたび聞かれており、エスプリの名を冠した新型エレクトリックスポーツカーを投入することで、スポーツカーとしてのアイデンティティを再強化し、同時に実用的なEVモデル群との間の橋渡し役を担わせるという、最も大胆なシナリオも考えられるわけですね(ただ、現在のロータスはEV専売化路線をやや緩めている)。
結び:過去を力に変え、未来を築くロータスの決断
ロータスが今回、エスプリの商標を再登録したという事実は、ブランドが単なる過去の遺産に浸るのではなく、その成功体験をテコに、新しい時代への転換期を乗り越えようとしている証拠ともいえるもの。
特に、EV化の波が押し寄せる現代において、自動車メーカーにとって最も重要なのは、ブランドの「核」となるイメージを明確にし、そこにリソースを集中することであるとも考えられ(ロータスにとってのみではなくスポーツカー業界全体において)、エスプリという偉大な名前がロータスの未来のどのモデルに、そしてどのように受け継がれるのか。
その決断は、今後のロータスのブランド戦略、そしてEVスポーツカー市場の行方を占う上で極めて重要なものとなりそうです。
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参照:Carbuzz, Lotus














