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テスラが「引き続き」世界中で販売台数急落中。イーロン・マスクCEOのロボット/AI偏重が招いた危機的現状とは。ボクは現時点ではこう考える

テスラ

| テスラが迎えた正念場。EV市場の競争激化とCEOの戦略転換の波 |

果たしてテスラはこの危機を乗り越えることができるのか

サマリー

  • 世界中で販売台数が減少: 2025年10月、テスラの欧州販売台数は前年同月比48.5%減という衝撃的な数字を記録
  • CEOの関心は自動車以外に?: イーロン・マスクCEOの関心は、販売台数よりもロボティクスやAI、そして自身の報酬パッケージに集中
  • 競争激化の波: 競合他社が新しく魅力的なEVを投入する中、テスラのモデルは古さが目立ち、価格競争力も低下
  • 市場予測: テスラのグローバル納車台数は、2024年の1%減に続き、2025年にはさらに7%の減少が予測されている

自動車業界の巨人テスラが、現在”かつてない正念場”を迎えており、2025年11月現在、テスラは世界三大市場(欧州、中国、米国)すべてにおいて販売台数減少という圧力に直面しています。

ここでは、衝撃的な販売データの詳細とともに、なぜテスラが「クルマを売ること」から戦略を転換しているのか、その背景にあるCEOの野望と市場の現状を深掘りしてゆきます。

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 詳細:テスラの世界販売台数はなぜ急落したのか?

テスラは依然として「自動車会社」であるにもかかわらず、その販売実績には急激に暗雲が立ち込めています。※テスラCEO、イーロン・マスク氏は自社について「自動車メーカーではなくテック企業である」と主張するが、売上のほとんどは自動車である

欧州市場での壊滅的な数字

まずこちらはテスラの販売状況と欧州のEV市場との関係性をあらわしたもの。

テスラが欧州で急速に競合他社に追い抜かれている現実を物語っているかのようですね。

期間テスラの欧州販売台数欧州全体のEV販売動向市場での位置づけ
2025年10月前年同月比 48.5%減N/A月間でほぼ半減という驚異的な落ち込み
2025年 年初来約 30%減26%の成長市場全体が伸びる中でテスラだけが大きく後退し、シェアを失っている

グローバルな販売圧力

テスラのグローバル納車台数は、2024年に1%減少した後、2025年にはさらに7%の減少が見込まれています(Visible Alphaのデータ)。

これは、記録的な四半期納車台数(米国のEV税額控除終了前の駆け込み需要)があったにもかかわらずの予測であり、根本的な販売力の弱体化を示していると考えていいのかもしれません。

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複合的な販売不振の要因

そこで販売台数減少の理由として指摘されているのが以下の複数の要因です。

  • 商品の陳腐化(Dated Products): 主要モデルであるModel 3やModel Yの設計が古くなり、新しく魅力的なEVを投入する競合他社に比べて魅力が低下している
  • 品質への懸念(Cheaply Built): 低品質で安価に作られているという認識が、消費者の購買意欲を低下させている
  • CEOの政治的信条: イーロン・マスクCEOの過激な言動や政治的信条が、一部の消費者層の反感を買い、購入を避ける要因となっている

CEOの戦略転換:車ではなく「ロボットとAI」へ

さらにテスラの売上低迷の裏側にはイーロン・マスクCEOの明確な戦略転換があるとされ、彼の関心は既存のEV販売事業から”より高い株価維持に貢献”する「ロボットとAI」に向けられていると報じられており・・・。

  • ロボタクシーへの注力: 採算の取りにくいEV販売よりも、利益率の高い「ロボタクシーサービス」への投資と開発が急ピッチで進められている
  • 巨額の報酬パッケージ承認: CEOは、巨額の1兆ドル規模の報酬パッケージの株主承認を勝ち取ることに注力しており、会社の財務基盤よりも個人の利益と未来のテクノロジーへの投資を優先しているように見受けられる※ただし報酬パッケージを得るにはEVの販売台数を増加ッさせる必要があり、報酬パッケージとEV事業の成長は相反しない

この「脱自動車会社」とも言える戦略は、テスラを単なる自動車メーカーではなく、AIとロボティクス企業として再定義しようとする試みではありますが、現時点ではコアビジネスである自動車販売の足を引っ張っている、というのが市場の評価でもあるわけですね。

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テスラオーナーが直面する課題

テスラオーナーや購入検討者にとって、この販売台数の急落は単なるニュースではなく、以下のような懸念材料も。

課題説明影響
リセールバリュー販売台数の低迷、そして競合の増加は、中古車市場での価格競争力を低下させる可能性将来的な車の買い替えで損失が拡大するリスク
モデルの刷新CEOの関心がAIに集中することで、既存モデルのモデルチェンジや新型車開発の遅延が発生する可能性「いつまでも新しいモデルが出ない」というフラストレーション
サービス体制コスト削減の波が押し寄せることで、世界的に見て一貫性のないテスラのサービス体制がさらに手薄になる懸念修理やメンテナンスにおける不満が増加する可能性

結論:テスラは試練の時代へ。問われる「自動車会社」としての本気度

テスラはまだまだ市場をリードする企業ではありますが、その強みはすでに「先進性」や「技術力」ではなく、巨大なブランド力と充電インフラに依存しつつあるのもまた事実。

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テスラの販売台数急落は、自動車業界全体におけるEVのコモディティ化(一般化)の進行を示しており、もはやテスラだけが「未来のEV」ではなくなっていて、テスラがこの危機を乗り越えるには、以下の2点が不可欠だと見られています。

  1. 既存モデルのテコ入れ: Model 3/Yの後継モデルや、より安価な新型車の迅速な市場投入
  2. 経営の再フォーカス: AIやロボティクスへの投資は続けつつも、依然として会社の収益の柱である自動車販売事業への真剣な再注力

イーロン・マスクCEOの戦略は、短期的には株価維持に貢献するかもしれないものの、長期的には消費者に「テスラは車を真剣に作っていない」という印象を与えかねず、テスラが再び市場を牽引できるか、それとも他の競合にトップの座を明け渡すのか、2026年が試金石となるのかもしれません。

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ボクはテスラについてこう考える

なお、ぼく的な見解であればこの状況については「心配しておらず」、というのも現在の状況はほぼ(イーロン・マスクCEOにとって)織り込み済みであると思われるから。

同氏の計画としてはおおよそ以下のようなものがあって、それは(予想外に速い中国勢の躍進を除けば)想定通りに進んでおり、実際のところ「ブレがなく」、日々の奇っ怪な言動にまどわされずに真意を読み解いてゆくと「確実にゴールに向かって進んでいるんじゃないか」とも考えているわけですね。

  • EV黎明初期・・・EVはお金持ち、かつアーリーアダプターしか買わないので、あえてニッチ、かつ高所得者層、そして知識層向けの”高性能で高価な”EVを発売する(ロードスター、モデルS、モデルX。この頃日産は大衆向けのリーフを販売しており、真逆の戦略である)。さらには「環境に配慮する」著名人の指示を集めることでブランド価値を高める
  • EV普及期・・・この前の段階で得た資金によって「普及価格帯」のEVを製造し、アーリーアダプターからマジョリティへとメインターゲットを転換する(モデル3、モデルY。この戦略を理解せず、テスラの成功にあやかろうとしたポルシェやメルセデス・ベンツはテスラ・モデルSをターゲットにしたプレミアムEVを発売したが、その頃にはもうEV市場そのものが変化しており、消費者の興味を惹きつけることができなかった)
  • EV戦国時代・・・多くのメーカー / ブランドが参入してくることを想定し、テスラは次の段階(自動運転、ロボット、AI)への移行を計画しており、自動車にかかわらず人々の生活より良いものへと変革しようとしている
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つまるところ、イーロン・マスクCEOは「常に先を見て」行動し、自分の行動を真似する競合が大量に発生することも見越していて、自身が開けたドアからそれらがなだれこんで部屋が過密になる前に「別の部屋」へと移動しているわけですね。

そして残された「テスラのフォロワーたち」は熾烈な競争によって大半が自滅してゆくこととなるわけですが、そもそもイーロン・マスクCEOの目的は「環境の改善」「人類への貢献」であり、EV業界で勝ち残ることではないため、いまここでEVに固執せず、逆に(競争が厳しい)EV業界に見切りをつけ、その先に進むことは「至極当然な判断」であるとも考えています。

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参照:Jalopnik

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