
| マクラーレンF1 オークション落札額25.3百万ドル:ブルネイ王室秘蔵車が放つ圧倒的価値 |
近代のクルマとしては「最高額」の部類に
数々の伝説を生んだ1990年代のハイパーカー、マクラーレンF1の一台がオークションにて驚愕の価格をつけて落札され、さらにその伝説へと新たな1ページを加えることに。
その金額は2500万3000ドル(約39億円)にものぼり、ここでは「なぜこれほどまでに高値がついたのか」この車両の特別な由来、そして「世界最高の公道走行車」と言われるマクラーレンF1が今日なお不動の地位を保ち続ける理由を探ってみます。
2500万3000ドルが語る3つの事実
- 希少性の極致:全64台のうち、ハイダウンフォースキット(HDK)を装着した8台のうちの「最後の1台」
- 由緒正しい出自:新車時からブルネイ王室ガレージに納められていた「旧蔵車」というプロヴェナンス(来歴)
- 完全な状態:走行距離は13,711マイル(約22,000km)と比較的低く、2007年にはフルリビルト済み
なぜ「ブルネイ旧蔵車」は特別なのか?
「ブルネイ・コレクション」という神話
1990年代、石油マネーに沸くブルネイ王室は世界でも類を見ない規模と内容の自動車コレクションを築いており、メーカーに特別注文を出して市販モデルには存在しない色や仕様、時にメカニカルな改造まで施された「ワンオフ」の車両が多数納入されたことでも知られます。
そこではフェラーリやベントレーのワゴンボディ、ランボルギーニLM002のハイルーフなども含まれますが、驚くべきはすべて合わせると1万台以上ものクルマが所蔵されていたということ(ただ、その全容は誰にもわからない)。
このマクラーレンF1もその一台で、そのため、「ブルネイ旧蔵車」は単なる中古車ではなく、自動車収集史上で特別な位置を占める「由緒正しいコレクション」 として認知されているわけですね(さらに、マクラーレンF1だけでも20台以上が納車されたという説がある)。
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二重の希少性:HDK仕様 & ブルネイ旧蔵車
この車両(シャーシNo.14)の価値を最大化しているのは、以下の二つの希少要素が重なっている点です。
- マクラーレンF1の中でも「さらに上の」HDK仕様:ハイダウンフォースキットは、ル・マン優勝車「F1 GTR」に近い大規模なエアロパーツとエンジンチューンを施した特別仕様。公道走行可能でありながらレーシーな性格を強めた、文字通りの「究極形」となっている
- 「謎に包まれたコレクション」からの出品:長らく一般の目に触れることなく保管されていたブルネイ王室の車両が、比較的良好な状態で市場に出ることは極めて稀。コレクターの「入手したい欲求」と「二度とチャンスがないかもしれない」という焦燥感が、価格を押し上げたものと思われる
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今回落札されたマクラーレンF1の詳細
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| シャーシ番号 | No. 14 (全64台中) |
| 当初納入先 | ブルネイ王室ガレージ |
| 当初カラー | チタニウムイエロー / ブラック |
| 現状カラー | プレーン・ホワイト(2007年リビルト時変更) |
| キット | ハイダウンフォースキット(HDK)装着 (全8台中の最終号) |
| 内装 | LM仕様(軽量・レーシーな仕様) |
| 走行距離 | 13,711マイル (約22,000km) |
| 履歴 | 2007年に完全リビルト実施 |
| オークション | RMサザビーズ アブダビ (2025年12月) |
| 落札価格 | 25.3百万ドル (約39億円) |
比較:他の伝説的オークション落札価格
この落札額がどの程度のものか、近年の有名なオークション落札例と比較してみましょう。
- マクラーレンF1 (2022年, ロングテール仕様): 20.5百万ドル
- フェラーリ 250 GTO (2018年): 48.4百万ドル (史上最高額)
- メルセデス・ベンツ 300SLR ウーレンハウト・クーペ (2022年): 1.35億ユーロ (約195億円、世界最高額)
マクラーレンF1の落札額は、フェラーリ250GTOには及ばないものの、「現代のスーパーカー」カテゴリーではトップレベルであり、その価値が時間とともにますます結晶化していることを示していることがわかりますね。
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結論:これは「車」ではなく「歴史的アイコン」への投資である
25.3百万ドルという数字は一台の「乗り物」としての価値をはるかに超えており、この落札は以下のような「モノ」としての価値が認められた結果です。
- 技術史の金字塔:F1技術者が一切の妥協なく作り上げた、自然吸気エンジン車の頂点
- 文化的アイコン:1990年代の技術的楽観主義と、究極のものを追い求めた時代精神を体現するシンボル
- プロヴェナンス(来歴)の価値:「ブルネイ旧蔵車」という伝説的コレクションの一片であるという物語性
今回の落札は、最高峰のコレクターカー市場が、「走行性能」だけでなく「完全な歴史書類」「ユニークな出自」「比類ない希少性」 といった総合的な物語に対して巨額の価値を認めていることを如実に示しており、このマクラーレンF1の新たな所有者は単に超絶性能を持つ車を手に入れただけでなく、自動車文化史の一ページを自身のガレージに招き入れるということに。
そしてこの取引が他の「ブルネイ・コレクション」の車両、ひいては将来のマクラーレンF1の市場価格に与える影響は計り知れないと考えられています。
そのほかにはこんなクルマがこんな価格で落札されている
今回のマクラーレンF1はアブダビにてRMサザビーズが開催したオークションに出品されたもので、この場では以下のようなクルマが出品され、また落札されており、その一部を紹介してみたいと思います。
2016年式のフェラーリ458スペチアーレは511,250ドル。
2019年モデルのマクラーレン・セナは905,000ドル。
2015年式のポルシェ918スパイダーは1,715,000ドル。
2015年モデルのフェラーリ458スペチアーレAは933,150ドル。
2022年モデルのフェラーリ モンツァSP1は2,536,250ドル。
2016年モデルのフェラーリF12tdfは1,096,250ドル。
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参照:RM Sotheby's











