
| 超富裕層の本音を語り戦略変更を余儀なくされる |
ロールス・ロイスは「EV化は顧客に受け入れられている」とコメントしていたが
「静寂こそが究極のラグジュアリー」――。そう謳って2022年には初の電気自動車(EV)『スペクター』を投入したロールス・ロイス。
今回大きな戦略修正を余儀なくされたと報じられており、2026年3月、同社のクリス・ブラウンリッジCEOは、2030年までにラインナップをすべてEVにするという当初の計画を事実上撤回し、V12ガソリンエンジンの生産を継続することを明らかにしています。
同氏は「5,000万円を超えるクルマをオーダーする超富裕層たち」が求めていたのは、モーターの無音ではなく、伝統のV12エンジンがもたらす「余裕」と「歴史」だったとコメントしており、これは事実上の「路線変更」。

少し前に、トヨタがセンチュリーにガソリンエンジンを搭載するのは「品格を維持するため」だとコメントしていますが、やはりラグジュアリーカーには「ガソリンエンジンの鼓動が必要」ということなのかもしれませんね。
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この記事の要約(30秒チェック)
- 2030年目標を廃止: 「EV一本槍」から顧客の需要に合わせた「V12との併売」へ転換
- 顧客の声が決定打: 「EVを愛する客もいれば、そうでない客もいる。彼らはV12を求めている」とCEOが断言
- 規制緩和が追い風: 主要市場でのEV義務化目標の軟化により、少量生産ブランドとしての猶予を獲得
- ライバルも追随: ベントレーやランボルギーニ、アストンマーティンも同様にEV計画を先送り中
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なぜ「無音のEV」では満足できないのか?
理論上、ロールス・ロイスが追求する「魔法の絨毯のような乗り心地」や「究極の静粛性」にエレクトリックモーターは最適なはず。
実際のところ、ロールス・ロイス創業者も「充電インフラさえ整えば、自分の理想を実現するのに最適なのはエレクトリックモーター」だと述べたほどではありますが、しかし現実は「大きく異なった」ということに。
- 「V12」というステータス:超富裕層にとって、シルクのように滑らかなV12エンジンは「動力源」にとどまらず「工芸品」「ステータス」としての価値を持っていた
- 航続距離と利便性:長距離を移動する際、40万ドルのクルマを所有しながらも充電スタンドを探し、30分以上も充電のために待つという行為が「ラグジュアリーな体験」とは程遠いと判断されている
- スペクターの苦戦:鳴り物入りで登場したEV『スペクター』ではあるものの、中古市場での大幅な値崩れが報じられており、投資価値を重視する富裕層の買い控えを招いている
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ラグジュアリーブランドのEV計画修正状況(2026年3月時点)
上述の通り、多くの自動車メーカーが「完全電動化」から「ガソリンエンジン混在のラインアップ」へと舵を切っていて、これは今回のロールス・ロイスのようなラグジュアリーブランドにとどまらず、ホンダや日産といった普及価格帯のブランド、少量生産メーカー、スポーツカーメーカーであっても同様です。
| ブランド | 当初の目標 | 現在の状況 |
| ロールス・ロイス | 2030年までに完全EV化 | V12継続、需要重視へ転換 |
| ベントレー | 2030年までに完全EV化 | 2035年以降へ延期、PHEV重視 |
| アストンマーティン | 2025年に初のEV | 計画を数年延期、ガソリン車継続 |
| ランボルギーニ | 2020年代後半に初のEV | PHEV(ウルスSE等)を主軸に |
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結論:ラグジュアリーの定義が「多様性」へ戻る
今回のロールス・ロイスの決断は自動車業界全体を覆う「EV一本主義」の終わりを象徴しており、ポルシェ、ホンダ、そしてロールス・ロイスなど各社が数兆円規模の投資をEVに投じながらも、結局は「顧客が何を求めているか」という原点に立ち返っているというのが現在の状況であり、ロールス・ロイスのような低ボリュームブランドにとっては「無理にEVへ移行するよりも」顧客の望むV12を磨き続けることこそが(逆説的ではあるものの)最も持続可能なビジネスモデルである」と判断されたのかもしれません。※電動化への移行によってそうとうな無駄が生じてしまった

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今後の展望:V12エンジンの寿命はどこまで?
ロールス・ロイスは今後、EVの『スペクター』と、ガソリン車の『ファントム』『ゴースト』『カリナン』を併売していくことになり、欧州や米国の規制が軟化したことで2030年代半ば、あるいはそれ以降も「シルク・スムーズなV12」の咆哮(あるいは微かな囁き)を新車で楽しめる可能性が高まっているというのが今の状況。
現時点でV12エンジンを継続させるのはアストンマーティン、ランボルギーニ、フェラーリ、ロールス・ロイス、メルセデス・ベンツ、その他だと少量生産メーカーであるパガーニやゴードン・マレー・オートモーティブ、そしてデ・トマソあたりかと思いますが、現在の様々な事情を考慮すると「欧州がさらに姿勢を軟化させる」可能性もあり、もしかするとV12エンジンは(制約を受けつつも)今後も永続するのかもしれません。
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「ワフタビリティ」とはロールス・ロイスが好んで使う造語であり、「ふわふわと漂うように進む能力」を指しています。
エレクトリックモーターもこの感覚に近いものの、重厚なV12エンジンが低回転で悠々と巨体を押し出す感覚こそが「100年以上続くロールス・ロイス流の「ワフタビリティ」の源流であるも考えられ、ロールス・ロイスがV12エンジンに回帰するのは当然のことなのかもしれませんね。

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参照:Rolls-Royce











