| ステランティスはまだまだガソリンエンジンを諦めない自動車メーカーのひとつ |
「ハリケーン」とは名前からしてスゴそうだ
さて、ステランティスはつい先日「電動化戦略」について触れ、傘下のブランド「ダッジ」においてもエレクトリックマッスルカーを導入すると発表したばかりではありますが、今回は直6ガソリンエンジンを2つ発表。
これらエンジンは「ハリケーン」と命名されており、いかにもスゴそうな名称を持っていて、実際にそれぞれ406馬力と507馬力を発生させるというパワフルさを持っています。
なお、トルクは610Nmと645Nmというこれまた強力な数値であり、ステランティスいわく「V8エンジンよりもパワフルであるにもかかわらず、燃費は15%向上している」。
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ガソリンエンジンに対する考え方はメーカーによって様々
現在は自動車業界あげて「電動化」へと大きくシフトしているという状態ではあるものの、そんな中でメルセデス・ベンツやアウディのようにガソリンエンジンの開発を「終了」させるブランドもあり、一方ではこのステランティスやBMWのように新型エンジンを投入するブランドも。
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これほどまでに自動車メーカー/ブランドによって戦略が大きく分かれる時代もほかにないと認識していますが、ステランティスは「エレクトリック化も推進するが、ガソリンもまだ諦めない」ということなのかも。
その真意についてはわかりかねますが、もし(自社が)エレクトリック化一辺倒になり、しかしなんらかの問題によってガソリンエンジンの存続が許されるようになれば、そのときはもう後戻りできずに大きなダメージを食らうことになってしまい、そのために「どちらにも行けるよう」リスクヘッジを考慮しているのかもしれません。
実際のところ、ロシアによるウクライナ侵攻が引き起こした「資源不足」、そしてそれによるEV価格の値上がりのインパクトはけっこう大きく、これによって「地球の資源には限りがあり」、石油同様にバッテリーやモーターを製造する希少希土類もいつかは枯渇してしまうのだということに気付かされた人も多そうです。
そうなると急に風向きが変わり「ガソリンエンジンのほうが、全体的に見て環境に優しいのでは」と考える向きが出てきてもおかしくはなく、そういった傾向が加速すれば現在の雰囲気が一転して「やっぱり急激なエレクトリック化はやめておこう」となる可能性も。
となれば、ガソリンエンジンの開発を終了させ、エンジニアを解雇し、ガソリンエンジン用の工場をエレクトリックカー向けに改装した自動車メーカーにとっては「え?」ということになりかねず、ステランティスはこういった要素も検討しているのかもしれません。
新型エンジン「ハリケーン」はこういった仕様を持っている
そこでこの新型エンジン「ハリケーン」についてですが、いずれのバージョンもスプレーインシリンダーライナーを備えたアルミニウムブロック、鍛鋼製クランクとロッドを持っており、アフターマーケットのチューニングにおいても十分なパワーに対応することができるもよう(これ重要)。
406馬力版の「SO」はアルミ鋳造ピストン、10.4:1の圧縮比を持ち、507馬力のHOだと鍛造ピストン採用、圧縮比は9.5となっていて、こちらはブースト圧が22 psiから26 psiに高められており、いっそうの高出力化に対応することができそうです(アフターマーケット品を待たずとも、自社のオプションブランド「モパー」からチューニングパーツが登場しそうだ)。
さらにステランティスによると、正確な性能は用途(搭載するクルマ)によっても異なるものの、2,350rpmからレッドラインまでの間でピークトルクの90%を発揮するといい、幅広くフラットなトルクカーブを実現するとのこと。
この新しいエンジンは、ステランティスのメキシコのサルティロ・エンジン工場で製造され、同社は「STLA LargeプラットフォームとSTLA Frameプラットフォームを使用する車両向けの、北米における将来の主要内燃パワープラント」だと紹介され、さらにはハイブリッドの組合せを想定した設計を持つため、現在のガソリン車と、今後10年間にわたって進められる電気自動車への移行における「ギャップ」を埋める主要なユニットでもあるようです。
実際のところ、ステランティス社のパワートレイン関連責任者であるミッキー・ブライ氏によると、「ステランティス社は、2030年までにバッテリー電気自動車(BEV)の販売比率を50%にするという目標を掲げ、電動化における米国のリーダーを目指しており、しかし内燃機関は今後数年間にわたって当社のポートフォリオで重要な役割を果たすことになる」ともコメント。
さらには「ハリケーン・ツインターボは、性能を犠牲にすることなく、燃費の向上と温室効果ガスの削減を実現する、妥協のないエンジンです」とも述べ、その自信の程を語っています。
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