| フォードはEVの販売不振に加えてブロンコはじめ主力モデルのリコールに悩まされる |
品質問題は一過性のものではなく、管理体制を改めねばこのまま尾を引くことになるだろう
さて、先日はフォードがリコール件数、リコール台数ともに「リコール王である」というニュースをお伝えしましたが、そのリコールが業績に対し深刻な影響を与えているとの報道。
フォードが発表した2024年第2四半期の決算内容によると、この期間のリコール関連費用は前年同期比で8億ドル増加してしまい、そのため純利益が昨年の19億2000万ドル(1株当たり47セント)から18億3000万ドル(1株当たり46セント)へと下落し、1株あたり利益についてはアナリストの事前予測であった68ドルとは大きな乖離が生じています。
-
2024年上半期の「リコール王」はフォードに決定。台数と件数ともに最高、2番目にリコール台数が多いのはテスラ、ホンダとトヨタはそれぞれ5位と6位
Image:Ford | フォードは販売台数も多いがリコール台数も多い | ただし「リコール率」だとフォードより分が悪い自動車メーカーも さて、アメリカの自動車市場において、2024年上半期に届け出ら ...
続きを見る
様々な要因にてフォードの業績が悪化
フォードは2024年上半期だけで31件/366万台のリコールを届け出ていますが、ライバルであるGMは65万6000台の車しかリコールしておらず、あれだけ不具合が多いと騒がれたテスラであっても255台(8件)のリコールにとどまります。
そしてこのリコールがフォードの業績を悪化させていることは間違いないものの、このほかにもフォードにとって頭の痛い問題があり、それは電動車両事業部である「モデルE」の不振。
フォードも他の自動車メーカーの例にもれずEVが売れずに苦戦していますが、この部門だけで(第2四半期に)11億ドルもの損失が出ています(それでも第1四半期の13億ドルよりは小さい)。
反面、商用車部門の「フォードプロ」では26億ドルの利益をあげ(利益率15.1%)、内燃機関を搭載する乗用車部門の「フォードブルー」は12億ドルの黒字となっており、「未来」だと目された電動化部門が「過去の遺物」である内燃機関当社車に助けられているという構図が明らかに(これもまたフォードに限ったことではない)。
-
フォードは「EV1台の販売につき1550万円の赤字」。わずかしか売れないEVがガソリン車の利益を一瞬で奪い去り、未来だと思われたEVが業績の大きな「重し」に
Image:Ford | まさかEVがこんな状況になるとは誰も想像していなかったであろう | もう少し状況が進めば「EVを売ること」がビジネス上良い判断だと言えなくなるだろう さて、フォードが2024 ...
続きを見る
これらによって全体の収益は6%増の478億1000万ドルとなったものの、上述の通り1株あたりの利益が「あまりにも期待外れ」だとして株価が11%も下落してしまい、フォードとしては電動化部門(フォードE)の黒字化を進めることが早急に期待されるところです。
なお、フォードとしても十分にその必要性を理解しており、2020年代末までに「小型で手頃な、3万ドルの電気自動車」を発売すべく取り組んでいるものの、その頃にはまた事情が変わっている可能性もあり、とにかく今の自動車メーカーの経営に求められるのは「どのように状況が変わっても即座に動ける柔軟性」なのかもしれませんね。
合わせて読みたい、フォード関連投稿
-
フォード「EVが売れないのでEV工場をガソリン車用に転換しトラックを生産します。トラックの需要は非常に強く、これによって利益を最大化します」
Image:Ford | それにしてもアメリカ人のトラック大好きっぷりには驚かされる | フォードはこれまでの戦略を転換し「マルチパワートレーン」へ さて、現在多くの自動車メーカーがEVの需要減退に対 ...
続きを見る
-
フォードが中国製EVに対抗するためにテスラやアップルから人材を引き抜き「低価格EVプロジェクト」をスタートさせたとの報道。その成果には期待がかかる
| 中国車に対抗するかしないか」は各自動車メーカーによって対応が分かれる | そもそも「対抗できない」「対抗しても利益を失うのみ」と考えるメーカーも さて、「EVを1台販売するごとに大量の赤字を出して ...
続きを見る
-
北米市場でのEV戦略の誤りを認めたフォードが欧州でも敗北宣言。「2023年に全車種EV化という目標は野心的すぎました」
Image:Ford | 選択を誤ることは問題ではなく、誤りを認めて正しい方向へと修正することが重要である | フォードは比較的早い段階で「誤り」を認めており、対応が早い自動車メーカーである 過去数年 ...
続きを見る
参照:CNBC