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北米市場でのEV戦略の誤りを認めたフォードが欧州でも敗北宣言。「2023年に全車種EV化という目標は野心的すぎました」

北米市場でのEV戦略の誤りを認めたフォードが欧州でも敗北宣言。「2023年に全車種EV化という目標は野心的すぎました」

Image:Ford

| 選択を誤ることは問題ではなく、誤りを認めて正しい方向へと修正することが重要である |

フォードは比較的早い段階で「誤り」を認めており、対応が早い自動車メーカーである

過去数年間、フォードは他の自動車メーカーと同様に、より多くのEVを路上に走らせるため「EVシフト」に向け積極的に取り組んできたという実績がありますが、お膝元の北米では思うようにEVが売れず(ただしこれはフォードに限ったことではない)、つい先日「EV生産のために建設した工場の生産ラインを変更し、ガソリンエンジンを積むトラックを製造する」と発表したばかりです。

こういった「過ちを認め、新しい環境に対応する」という行動をとることは大企業であればあるほど難しく、しかしフォードは大々的にそれを行った最初の大手自動車メーカーかもしれません。

フォード「EVが売れないのでEV工場をガソリン車用に転換しトラックを生産します。トラックの需要は非常に強く、これによって利益を最大化します」
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フォードは欧州においても「電動化」シフトの姿勢を緩める

なお、現在世界中の市場では電動化シフトの速度が大きく異なり、まず日本では「ほとんど進まず」、一方で「中国では最も速く電動化が進み」、「北米ではガソリンエンジンに対する支持が厚いながらも徐々に電動化が進んでいる」状況。

テスラ
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そして欧州では、もともとの高い環境意識を背景に(中国ほどではないにせよ)けっこう速いスピードにてEV転換が進んでいたわけですが、今回フォードは欧州市場においても「以前に立てた計画があまりに野心的すぎて」その達成が難しいとコメントしています。

フォードのモデルE(電動化車両)部門のCOO、マリン・ジャジャ氏はオートカーのインタビューに対し「欧州市場にて、2030年までに全電動化することは、当社の事業、特に顧客にとって良い選択ではないと考えています」と述べ、これは事実上「(2021年に発表した)2030年までに欧州で販売する全車両をEVにする」という計画に対する敗北宣言だと考えていいのかもしれません。

実際のところ、これに先駆け今年の5月にはフォード・オブ・ヨーロッパのゼネラルマネージャー、マーティン・サンダー氏が「ガソリンエンジンは2030年以降も継続する可能性があり、プラグインハイブリッド車などの需要が高まれば提供する準備がある」と語っているため、まだフォード内部では検討が行われている可能性があるものの、現実的に「計画の見直し」が行われるのは間違いないものと思われます。

前出のマリン・ジャジャ氏によると、「計画があまりに野心的すぎた」と語る理由は”EV普及の鈍化と生産コスト上昇”とのことで、おそらくフォードはここからEV開発の手を緩め(EV開発を停止するわけではない)、ハイブリッドそしてプラグインハイブリッドへと移行するのかもしれません。

なお、現在フォードが欧州で販売するEVはエクスプローラーEVとマスタング・マッハEの2種類で、ここへ新型カプリが加わることとなりますが、ポートフォリオの大幅な見直しが入ることは間違いないものと思われます(米国での展開含め、フォードの修正EV計画については発表がなされていない)。

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参照:Autocar, Automotive News

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