| ホンダは純血主義をやめ、地域別展開をやめてグローバル化を目指すべき |
ホンダ社長、八郷隆弘氏がサプライヤーとのミーティングにて「これからはビジネスのやり方を変え、ラインアップ、グレード、オプションを減らさなくてはならない」とコメントした模様。
これはロイターが報じたもので、一連の品質問題やリコールを受け、品質管理体制を見直さねばならないという意図であるようです。
ホンダの操業コストはかなり高い
なお、ホンダはオペレーションコストが高い会社としても知られており、2-3年前のデータではあるものの、たとえばホンダとトヨタの「売上高利益率」は22-24%と「ほぼ同じ」。
売上高利益率とは、売上高から製品の単純な製造原価を差し引いたもので、つまり利益が22-24%ということは、100万円のクルマに対する原価が76-78%ということになります。
そして問題は「売上高”営業”利益率」。
これは営業という文字が入っていることからも分かる通り、製造原価に対し、販売や販売後にかかるコストをプラスしたもの。
製品を売るには宣伝も必要で、カタログを作ったり、ウエブサイトを整備したり、キャンペーンを行ったりという費用、そして販売後のリコール対応費用なども必要。
よって、製造原価とこれらの諸経費を差っ引いて、実際に残ったお金が売上高に対してどれくらいであったかというのが売上高営業利益率という指標です。
そして驚くべきことにですが、この数字について、数年前だとトヨタは10%くらい、ホンダは3%ちょっと。
直近の数字だとトヨタが8.2%、ホンダは1.9%。※自動車業界でもっとも高いのはポルシェの17.9%、そしてフォルクスワーゲンは5.9%くらい
少し前は「トヨタの1/3」だったホンダの売上高営業利益率はいつのまにかトヨタの1/4以下に落ちてしまい、儲からない体質となってきているわけですね。
この数字は、単純に言えば、100万円のクルマを売ったとしても「1万9000円しか手元に残らない」ということを意味し、ホンダ二輪事業の「営業利益率15%前後」とは対照的(つまり、ホンダのバイク部門は儲かっている)。
なぜホンダは儲からないのか
そして疑問なのが「なぜホンダは儲からない会社になったのか」。
ひとつはCASE(自動運転やエレクトリックへの)対応ですが、これは各社とも条件は同じ。
ただ、トヨタは提携や共同開発を強化することでコストを平準化できるように業務改革を進めているわけですね。※先日、FCA(フィアット・クライスラー)とPSA(プジョー・シトロエン)が合併するという話も同じ考え方に基づく
しかしホンダは「同じ業界での」提携をひどく嫌うフシがあり、純血主義を貫いていて、これが根本的な「コスト高」体質を形成しており、この考え方を改めない限りは「コストが利益を食いつづける」のは間違いなさそう(今後どんどん自動車は高度複雑化し、開発コストが低くなるということは考えられない)。
そしてもう一つは「ホンダは地域別モデルを作りすぎ」。
北米専用車種(パイロットなど)、中国専用車種(クライダーなど)等たくさんの「地域限定モデル」があり、この開発や製造コストが割高であるということですね。
なお、報道によるとこういった「地域専用モデル」の販売比率は40%で、残りがCR-Vなどのグローバルモデル。
ただしグローバルモデルについてもエンジンラインアップや仕様がたくさん存在し、この「あきれるほどの複雑さ」がホンダの「儲からない体質」の元凶だとも言われます。
よって、社内でも「同じことをやってる部署」がたくさんあったりするわけですが、トヨタはヴィッツを「ヤリス」に統一したり、マツダも「MAZDA3」「MAZDA3」といった具合に車名を統一し、規格設計段階から「グローバル」を意識することでコストを削減しているわけですね。※トヨタは社内競業も禁止した
ただ、ホンダとしても手をこまねいているわけではなく、シビックについては、これまで各地でバラバラに企画開発そして製造したものを集約することで販売の最大化とコストの最小化を図っています。
それでも、まだまだ40%を占める「地域専用モデル」の統廃合やグローバル化、グローバルモデルにおいても「スリム化」を図らないと、コスト高体質は改善できないと言えそう。
そしてこの改革を行ったのが日産ということになりますが、こちらはスリム化しすぎて売るものが亡くなってしまうという始末。
反面、トヨタは共同開発によって「より多くの」モデルを低コストで発売でき、この手法が今のところ自動車業界における正解なのかもしれません(車種=消費者にとっての選択肢を削るということは同時に販売が減少することを意味するため、反対に、より低コストで多種に渡る選択肢を提供してシェアを獲得するのがベター)。
トヨタ「2年で18車種を投入する」。逆に「3年で10%車種を減らす」とした日産との考え方の違いを考察する