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ブガッティ・トゥールビヨンの「上に開くドア」はデザイン的側面ではなく機能上の理由からだった。「あれは、ドレスを着た御婦人が降りるときに”変な格好”をしなくてすむようにです」

ブガッティ・トゥールビヨン

Image:Bugatti

| エレガントに乗降できるというのもブガッティにとっては「立派な機能」である |

さらにトゥールビヨンはシロンよりも全高が低く、通常のドアでは乗降が困難になっている

さて、ブガッティ・トゥールビヨンはすでに「歴史に残る傑作」だという評価を得ていますが、これはなんと自然吸気V16エンジンを積みハイブリッドシステムと組み合わせて1,800馬力を発生させます。

そしてそのデザインは先代であるシロンを踏襲しつつも「似て非なるもの」で、たとえばそれは(シロンにはない)ディヘドラルドアを採用していたり、全高がシロンに比較して3.3センチも低いことからもわかるかもしれません。

ブガッティが新型ハイパーカー「トゥールビヨン」発表。伝統のW16エンジンではなくV16エンジンを積み、その命名もレーシングドライバー由来ではなく腕時計の複雑機構から
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ブガッティ・トゥールビヨンのデザインはすべてが「必然から」

そして今回、ブガッティにてチーフデザイナーを務めるフランク・ヘイル氏がトゥールビヨンのデザインについて語っており、すべてのデザインは「見栄え」ではなく「機能上の必要性から」生まれたことについても言及しています(ブガッティのデザイン哲学は「すべての形状は機能に従う」である)。

まずここで同氏が触れたのは「ディヘドラルドア」。

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Bugatti

このディヘドラルドアはスーパーカーやハイパーカーにはある意味必須と言えるもので、その構造こそ異なれどケーニグセグ、ランボルギーニ(V12モデル)、フェラーリの(近エンツォフェラーリ以降の)スペチアーレ、マクラーレンなどに装備されており、フェラーリはこのドアについて「スーパーカーには、映画の1シーンのような情景を演出することも重要なのです」と語ったことも。

ただし今回フランク・ヘイル氏はこのディヘドラルドアの採用について以下のように述べ、つまりこのドアは「視覚的高価の演出」を狙ったものではなく(走行性能に直接関係するものではありませんが)ブガッティとして必要と思える機能を考慮して設計されたものである、ということですね。

「ドレスを着た御婦人をオペラハウスに連れて行き、変な格好をせずにレッドカーペットに出ていけるようにしたいですよね。だから、ドアと一緒にルーフの一部も開けて、優雅に降りられるようにしました。

ブガッティがトゥールビヨンに従来のドアを使用していた場合、車内に入るには屋根の下を這って入らなければなりません。それは不快でブガッティらしくありません。」

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Bugatti

上述の通りトゥールビヨンはシロンよりも全高が3.3センチも低く、しかし全高を下げると乗降時に頭をルーフにぶつけやすくなり、しかも「脚をガバっと開かないと」地面に足をつけにくく、つまりフランク・ヘイル氏のいう「変な格好」となってしまいます。

そしてスーパーカーやハイパーカーから降りる際は周囲から注目を浴びやすく(どんな人が乗っているんだろうと皆が興味津々である)、そこでエレガントに乗り降りしなくてはならないのがスーパーカーやハイパーカーの乗員ということになるのですが、ブガッティはこのあたりを考慮してディヘドラルドアを採用したということに(優雅に乗降できるというのも立派な性能であり、ブランドイメージの向上にも貢献する。ディヘドラルドア採用だと、頭をかがめて脚を広げずとも、上に立ち上がるようにしてクルマから降りることが可能である)。

ブガッティはこうやって全高を低くした

なお、クルマの全高を下げることは容易ではなく、しかしスポーツカーであれば前面投影面積の削減、重心の最適化等、そのパフォーマンスの観点からできるだけ全高を下げることが好ましく、しかし全高を下げると乗降性に問題が出たり(しかしブガッティはディへドラルドアの採用でこれを解決)、室内空間、とくに頭上が狭くなるといった問題も。

参考までに、シロン時代でもこの「頭上スペース」問題がつきまとい、ブガッティはこれを解決するため「スカイビュー」ルーフをシロンの発売後に追加で開発し、これによって(ルーフの内張りがなくなるので「2.7センチ」を稼ぎ出しています。※ブガッティはこのオプションの発表時に「背の高いドライバー向け」とコメントしている

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Bugatti

つまり、それほどまでして頭上スペースを確保したかったのに、トゥールビヨンでは逆に3.3センチも全高を下げていて、それが可能となったのは以下の理由からだそうですが、上述のディヘドラルドアはこの「低められた全高」とセットで開発されたということになりそうですね。

「キャビンの人間工学はそのままに、車高を33ミリメートル低くしました。背もたれの傾斜は同じで、足元、頭上、肩回りのスペースも同じです。どうやって実現したかと言うと、シートの下のレールをなくして床に直接置いたのです。シートは上下にだけ動き、背もたれは傾斜しますが、前後の調節はペダルとハンドル側で行い、これらがドライバーの体格にあわせて前後します。」

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Bugatti

そしてフランク・ヘイル氏の話は「例のメーター」にも及び、こちらもやはり必要性から誕生したとされ、そしてその必要性とは「資産価値の担保」、そのためにアナログメーターを採用することになるものの、今度はその「読み取りやすさ」という必要性から”スポークがメーターを遮らない”という構造を考案することに。

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Bugatti

    「このメーターは100年後にも通用するクルマを作るという必要性から生まれました。アナログにする場合は、すべてをクローズアップして読み取れるようにする必要があります。スポークが計器の視界を遮ることは望ましくありません。

    これらのもの(アナログメーター)は数世紀前から存在していますが、今でも存在し、機能しています。時代を超越することが鍵です。これらのものは時代を超越し、本物である必要があります。だからこそ、私たちは、車両の操作方法と車両が情報を表示する方法の間のヒューマンマシンインターフェース全体を完全にアナログ方式で行うことにしました。これが時代を超越するものだと信じているからです。願わくば、100年後のコンクールデレガンスでもこのトゥールビヨンの姿を見たいものですね。」

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    Bugatti

    こうやって話を聞くと、トゥールビヨンの全体的な構造からインテリアのボタンやスイッチまで、すべての構造やデザインに理由があることがわかりますが、その質感についても完璧さが追求され、これについてフランク・ヘイル氏は以下のようにコメントしています。

    「ブガッティのボタンやスイッチをを完璧にするのには、何十人もの人々との会議に何週間も何ヶ月も費やします。例えば、トグルスイッチは、ちょうど良い圧力点を持つ必要があります。アルミニウムから機械加工されているため、触ると冷たいです。ステアリングホイールのパドルを引くと、まるでスナイパーが引き金を引くかのような感覚を味わえます。そしてクラシックなブガッティのように、ボタンを引くとトゥールビヨンが始動します。」

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