
| アウディの危機と「TT」復活の噂 |
TTは単なるラインアップのひとつではなく、アウディの象徴であり救世主である
近年、アウディは平凡なラインナップや分かりにくい車名戦略により、販売が低迷しています。しかし同社は過去にも似た危機を経験しており、そのときブランドを救ったのが1999年に登場した初代「TT」。
斬新なデザインとバウハウス的なインテリアは瞬く間に注目を集め、アウディの象徴的存在へと成長するとともにアウディのイメージを大きく変えることに成功し、アウディを「もっとも注目すべきブランドのひとつ」へと押し上げたわけですね。
そして現在、アウディは再び「TT」の復活を検討しているとされ、2027年モデルとして登場する可能性が浮上していますが、その名は「TT e-tron」と噂され、今回は電動スポーツクーペとして再誕する見込みです。
今回の動きは「TTモーメント2.0」と題されており、様々な状況を考慮すると、今回の「TT復活」は単なるラインアップの追加ではなく、「危機からアウディを救った存在」としてのTT再来を期待しているように思われ、つまり売上どうこうよりも「ゲームチェンジャーとして、現在のアウディの流れを変える」という役割が課せられているように思えます。
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初代TTの功績とブランドへの影響
TTは1999年のクーペ、2000年のロードスターでデビュー。
手頃な価格ながら高いデザイン性を誇り、当時のアウディにおけるブランド価値を一気に押し上げた存在です。
- 初代:デザイン主導型、デュアルクラッチを北米初導入
- 2代目:軽量アルミ構造、ハイパフォーマンス仕様「TT RS」追加
- 3代目:394馬力のTT RSを設定、より洗練されたスタイルを採用
2023年に生産終了するまで、TTはアウディの「デザイン哲学を象徴するモデル」として存在感を放っていましたが、このTTについてはいくつかの裏話があり、代表的なものは「ポルシェのニューモデルとして企画されていた」。
TTのデザイナーとして知られるフリーマン・トーマス氏は過去にポルシェに在籍していた時期があり、その時の同僚がケン・オクヤマ(奥山清行)氏。
同氏の著書「ムーンショット デザイン幸福論」では、当時両名がポルシェに在籍していた際のエピソードが紹介されており、フリーマン・トーマス氏は「新しいポルシェ」の開発に携さわっていたそうですが、ここで同氏が提案したのがTTの原型となる新しいスポーツカー(TT市販の15年前の話である)。
ただしこれはポルシェ上層部が却下してしまい、その後フリーマン・トーマス氏はアウディへと移籍し(当時、ポルシェとアウディとは別会社である)、アウディにて「ポルシェが却下したデザイン」の発展版を見せたところ、これに対してフェルディナント・ピエヒVW会長の一発OKが出てTTとして世に出たとされています。
Image:Audi
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なお、2023年の「TT生産終了」に際し、フリーマン・トーマス氏は当時を振り返っていくつかの談話を残していますが、アウディにてTT開発にGOサインが出た際、(おそらく1993年あたりに)ポルシェと共同開発を行い、「ポルシェの新型車と、アウディTTが兄弟車になるはずであった」という事実にも触れています。
しかしこの協業はうまくゆかず「解散」となったものの、アウディからはTT、そしてポルシェからは「ボクスター」が登場しているため、お互い何かしら得るものがあったのかもしれません。
ただ、ちょっと面白いのは、その語2012年にポルシェがVW傘下に入ってアウディと「同じグループ内企業」となり、両者の関係性が一気に接近したこと。
そして今回「TT e-tron」と見られているニューモデルは「718ボクスターの外装をまとって」テストがなされており、つまり718ボクスターEVとの兄弟車となる可能性が非常に高く、「数十年の時を経て」ついに「ポルシェとアウディとの共同開発によるスポーツカー」が誕生する可能性があるわけですね(意図した流れとは異なるであろうが、やはり”事実は小説より奇なり”である)。
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新型アウディ TT e-tronの予想スペック
- シングルモーター後輪駆動:322馬力前後
- デュアルモーター四輪駆動:450馬力以上
- 価格帯:約900万~1350万円
ライバル比較
電動スポーツクーペ市場はまだ小さく、直接のライバルは限られていますが、あえてピックアプするならば以下の通り。
モデル | 予想価格 | 出力 | 備考 |
Audi TT e-tron | $60,000~90,000 | 350~400hp | スタイリッシュEVスポーツ |
Porsche 718 Cayman/Boxster EV | $80,000~120,000 | 350~500hp | グループ内の直接ライバル |
Maserati GranTurismo Folgore | $197,800 | 761hp | ハイエンドEV |
Polestar 5 | $100,000以上 | 884hp | ラグジュアリーEVファストバック |
ポルシェの718 EVが8万ドル(約1200万円)以上と予想される中、アウディTT e-tronはより手頃な価格で登場する可能性があり、電動スポーツ市場におけるユニークな存在となりそうですね。
アウディに求められるもの
次期TTが成功するには、単なる「懐古モデル」ではなく、初代のDNAを現代的に解釈することがなによりも重要です。
それに加え、アウディの新しい未来を切り開くための要素をも併せ持つ必要があり、特徴的な円形デザインやシンプルな美学を継承しつつ、最新のEV技術と高級素材をもって)昇華させる必要があり、アウディが掲げる「ボリューム追求ではなく、デザイン・テクノロジー・ドライビング体験による差別化」が実現できれば、新型TTは再びブランドを象徴するモデルとなるのかもしれません。
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参照:CARBUZZ