
| Z4にも販売台数で抜かれたところを見ると”やはりBMWはSUVではなくスポーツカーを作るべき”であったのかも |
一方のZ4は逆の意味での「想定外」である
さて、BMWはM専売モデル「第二弾」としてXMを発売しているものの、このXMがどうにも売れず、北米だと300万円以上の値引きを提供しても「誰も買わない」状態であると報じられています。
なお、このXMは「M1に次ぐ」第二のM専売モデルとしての登場であったのですが、その敗因は「SUV」ボディを採用したことにあると分析されていて、実際に人々が求めていたのは「スポーツカー」であったということがその販売台数から今回明らかになっているわけですね。
BMWは「賭け」に負けた
BMWが「第二のM専売モデルを企画中である」とアナウンスした際、誰もがそれは「スーパーカー」になるであろうと考えたものの、その後明らかになった開発状況によって「第二のM」はスーパーカーではなくSUV」ということが判明し、まずこの時点で多くの人が大きく失望することに(初代M専売モデル、M1が素晴らしいスポーツカーであっただけに”失望感”が大きかった)。
もともとXMは、Mブランドの独立モデルとして設計されたわけではなく、当初の計画では「X8」として登場し、BMWのSUVにおけるラグジュアリー性とパフォーマンスをさらに高めることを目的に企画されています(BMWはウルトララグジュアリーセグメントのSUVを当時持っていなかったため)。
その意味では、XMは確かに素晴らしいSUVであり、2100万円~2600万円もの価格にふさわしいドライビング体験と快適性を提供しますが、2024年だとBMWはXMを世界でわずか7,813台しか販売できず、一方では(売れずに販売を終了させると報じられる)Z4が同期間に10,482台を販売したことからも「BMWの見込みが外れた」ことがわかりますね。
XMの企画段階に話を戻すと、もともとBMWはm専売モデルとして、SUVではなく「(i16と呼ばれる)フラッグシップスーパーカー」を作ることを計画しており、しかしここで折悪しく発生したのがコロナウイルスのパンデミック(2020年)。
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ここで状況が大きく変わってしまい、BMWは「市場の不安定さ」「スポーツカーのリスクの大きさ」を考慮してM専売モデルの計画をスポーツカーから(X8を転用した)SUVへと計画をスイッチさせたものの、実際にはコロナ禍によってスポーツカーに対する渇望が高まり(自身の楽しみを追求する傾向が強くなったからだと言われるが、その前にスポーツカーが売れなくなり、新車市場からスポーツカーの選択肢が減ってしまったことも飢餓感を煽ったのだと思う)、事態はBMWが思うのとは逆の方向へ。
一方、SUV市場では(各社がどんどんニューモデルを投入するので)飽和状態となって選択肢が多くなりすぎるという状況となり、しかしBMWはレッドオーシャンの中でもプレゼンスを高めるべく「奇抜なデザイン」を採用するも、これもまた「裏目」に出てしまって商品力を失うという「二重の選択ミス」が生じたのだとも考えられます。
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もちろんXMが売れていないのは「価格が高いから」という理由も考えられ、しかし同じくらいの価格帯であっても「売れる」ハイパフォーマンスSUVが存在することからも「XMの商品力がほかに比較して劣っている」と考えていいのかもしれません。※BMWは過密になった超高級SUV市場の中でも、BMWが持つ「走り」のイメージを活用すれば”勝てる”と踏んだのであろう
つまり、BMWは「超富裕層がXMに飛びつく」と考えていたものの、実際にはそういった現象は発生せず、「MモデルなのにSUV」「BMWというブランドと価格帯、クルマの性格とのミスマッチ」「そのミスマッチを解消するために取り入れた手法が受け入れられなかった」という様々な要素がXMの販売低迷につながったのだと考えることが可能です。
その反面、BMWはZ4に「M」モデルを設定せず、つまりは(スープラとの共同開発がなされたという事実からももわかるように)Z4に対してあまりコストをかけておらず、「一部の層にだけ売れればいい」という考え方から「補完的に」ラインアップされていたモデルであるとも考えられます。
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しかしながら実際の販売状況では「XMは芳しく無く、Z4は発売から7年が経過するのに、2024年では前年比140%くらいの販売を記録」するなどその人気ぶりをうかがわせ、現状を見るだけだと「なにもかもがBMWの思惑とは逆」に推移しているという印象も。
こういった状況を鑑みるに、BMWは「超高級SUVに手を出さず」、BMWのイメージ、そしてM1の伝説を活用したスーパースポーツを「第二のM」として発売すべきであったのかもしれず、XMは「BMWの歴史に残る」判断ミスの産物なのかもしれません(ただ、これはBMWを責めることはできないと思う)。
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