
Image:RUF(Facebook)
| ポルシェカスタムの象徴「Ruf」とは? |
よく知られているようで知られていない、それがRufである
現代では、ポルシェのカスタムといえばテックアートやシンガー・ヴィークル・デザインを思い浮かべる人も多いと思いますが、ポルシェとの間に「もっと深い関係」を持つブランドがあり、それがドイツ・バイエルン州ファッフェンハウゼンに拠点を置くRuf(ルーフ)です。
Rufは「ポルシェのカスタムにとどまらず、完全自社開発のシャシーを持ち、独自のVIN(車台番号)で車両を販売する「正規の自動車メーカー」として活動しており、そのため「ポルシェのチューナー」と呼ぶのは正しくない、とされています(ただ、ポルシェのチューンやカスタムを行うこともある)。※1981年にドイツ自動車工業会(VDA)から自動車メーカーとして認定されている
なお、ルーフの代表作であるCTR “Yellowbird(イエローバード)” は1980年代を象徴するスーパーカーの一台として世界中で知られ、最新のSCRではカーボンファイバー製モノコックを採用。
Rufは「ポルシェを超えた存在」として独自の地位を築いてきた、という歴史を持っています。
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ルーフの始まり ― ポルシェ356との偶然の出会い
物語は1939年、アロイス・ルーフ・シニアが設立した修理工場「Auto Ruf」から始まります。
バス製造まで手がけていた彼が1963年、偶然にも事故で大破したポルシェ356に遭遇したことで「ルーフ」の未来における方向性が決まったといい、そのポルシェ356を修復し所有したことをきっかけとし、ルーフ一家は「ポルシェ愛好家が熱狂的なファン層を持つ」ことを実感したといいます。
さらにはアロイス・ルーフ・ジュニアも若くして「ポルシェをベースにした新しいビジネス」の可能性を感じ取ったと伝えられているので、文字通りポルシェはルーフ一家にとっての転機であったわけですね。
911との運命的な出会い
1964年、父と共に走行中のアロイス・ルーフ・ジュニアは、開発中のポルシェ901(のちの911)をアウトバーンで偶然目撃。
この体験が彼の人生を大きく変えることになるのですが、アロイス・ルーフ・ジュニアは19歳の誕生日には父から一台のポルシェ911を贈られます。
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ただしこのクルマは「事故車でエンジンも欠損しており」、しかし息子にこういったクルマをプレゼントするあたりが「なんともルーフ家らしい」エピソード。
実際のところ、アロイス・ルーフ・ジュニアは自らそのポルシェ911を修復して走らせることに成功し、さらに後年のレストアで、その個体が量産前の極初期型「901」であることが判明し、さらにその個体が「かつて自分がアウトバーンで目撃したあのクルマだった」ことも明らかになったといい、このあたりはまさに「運命」だったと言って良いのかもしれません。
CTR「イエローバード」で伝説に
1974年、父の急逝により24歳で会社を継いだルーフ・ジュニアは、修理業から本格的なチューニングへと会社をシフトさせ、さらには1970年代後半にポルシェが928を投入し「911の終焉」が噂される中、Rufは911を徹底強化することで存在感を高めていきます。※当時、928はポルシェ911の後継として開発・投入されており、911は販売終了となる予定であった
そしてついに1987年、ついにCTR “Yellowbird”が登場することとなるのですが、これは3.4リッター水平対向6気筒にツインターボを搭載して最高出力は460馬力、さらに最高速度は340km/hに達するというスーパーカー。
当時のロード&トラック誌のテストではフェラーリやランボルギーニを抑え「世界最速」の称号を獲得したほか、ニュルブルクリンクを駆け抜ける映像『Faszination Nürburgring』で一躍有名となり、のちに「グランツーリスモ」シリーズにも収録されることで世界中のカーファンに認知される存在となっています。
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進化を続けるRuf(ルーフ) ― 現代のモデルたち
現在、Rufは4代目となるCTR「アニバーサリー」を生産中で、このモデルはオリジナルCTRをオマージュしつつ、完全自社開発のカーボンシャシーを採用するなど「レトロモダン」なクルマです。
なお、ルーフは過去のCTR3では(911のリヤエンジンを変更し)ミドシップレイアウトを採用するなど、ル・マン仕様を想起させるチャレンジも行っているものの、直近では4代目CTRのようにルックスにおいては「原点回帰(ただし中身は最新)」。
さらには空冷911のレストアにも乗り出しており、「ポルシェをベースにしながらも、ポルシェ以上の存在」を示すという方針へとシフトしているようですね。
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まとめ ― Ruf(ルーフ)が特別である理由
Rufは単なるポルシェチューナーではなく、ポルシェの精神を受け継ぎながら独自の道を切り拓いた「独立メーカー」。
- 自社開発シャシーを持つ正規(認定)自動車メーカー
- CTRイエローバードで「世界最速」の称号
- 現代でもカーボンシャシーを採用し進化を続ける
その存在は、ポルシェファンだけでなく、スーパーカーファン全体にとって欠かせないものと言えそうですね。
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参照:Ruf, Porsche