| そのデザインはウワサされた330 P4だけではなく512S、412Pなどもモチーフに |
ボクとしてはピニンファリーナ250 ベルリネッタ・スペチアーレの影響が大きいように思う
さて、フェラーリがその超限定シリーズ「ICONA」最新モデル、「デイトナSP3」を発表。
フェラーリのファン向けとしては2021年フェラーリ・フィナーリ・モンディアリにてムジェッロ・サーキットでデビューしていますが、今回ようやくオンラインにてワールドワイドに公開された、ということに。
ICONAシリーズそのものが「フェラーリの伝統と最新テクノロジーとを組み合わせた」ものだと定義されており、今回のデイトナSP3についても330 P3/4、350 Can-Am、512 Sなど過去のフェラーリのレーシングカーから影響を受けたデザインを持っています。
なお、第一弾として登場したモンツァSP1/SP2については、750モンツァ(MONZA/1954年)、860モンツァ(1956年)のネーミング、フェラーリのバルケッタ(オープンモデル)の元祖でもある166MM(1948年)のエレメントを反映させた、と紹介されていますね。※ここからもわかるとおり、ICONAシリーズのインスパイア元は特定の1つの特定の車種ではない
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フェラーリ・デイトナSP3はこんなクルマ
今回発表されたフェラーリ・デイトナSP3について、「プロトタイプレーシングカーの魂」を再現したクルマだと表現されており、フェラーリいわく「フェラーリがこれまでに製造したモデルの中でも、もっとも効率的なエアロダイナミクスを持つ」とのこと。
それはアクティブエアロや各エアフローの改善において達成されているようですが、ここでその内容を見てみましょう。
まずそのボディについては「美しい」のひとことで、突き出したノーズ、力強く、しかし優雅に盛り上がった前後フェンダー、そしてラップアラウンド型のキャノピーが特徴的。
ノーズには1967年の330 P4を連想させるスプリッターとバンパネットが設けられ、LEDヘッドライトには開閉可能な「アイリッド」が装着されています。
いちばん驚かされたのはリアのデザインであり、スラットを大胆に用いたうえでテールランプをそこへと組み込んでいます。
これはピニンファリーナによる、1968年のフェラーリ250 P5 ベルリネッタ・スペチアーレを思い起こさせる部分でもありますね。
なお、このフェラーリ250 P5ベルリネッタ・スペチアーレは「未来のフェラーリ」を標榜し、ピニンファリーナがシャシーナンバー0862のフェラーリ250 P4をベースに作り上げたコンセプトカーですが、前後ホイールアーチが「円形」ではなく、そして今回発表されたデイトナP3のホイールアーチも円形ではなく(しかし250 P5とも異なるけれど)、やはり今回、この250 P5ベルリネッタ・スペチアーレを意識したというのは間違いなさそう。
参考までに、フェラーリはデイトナSP3に採用されるバタフライドアについては1970年の512S、そしてフェンダーミラーについては1960年代のレーシングプロトタイプから影響を受けたと紹介されていて、モンツァSP1/SP2同様、そのインスピレーションは幅広い(過去の)フェラーリから受けることとなり、ほかにモチーフとしたのは412P4だとも。
なお、「デイトナ」の名称は、1967年のデイトナ24時間レースにおいて、フェラーリが1-2-3フィニッシュを飾ったことを記念して名付けられたと紹介されています。
搭載されるエンジンは「フェラーリ史上最強」
そしてこのフェラーリ・デイトナSP3に搭載されるエンジンは812コンペティツォーネに使用される6.5リッターV12を改良したF140HC型で、その出力は840馬力にも達し、これまでフェラーリが製造したエンジンの中では「もっともパワフル」。
さらにエンジン自体の軽量化や慣性の低減にも注力し、チタン製のコンロッド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)加工を施した新しいピストンピン、3パーセント軽量化したクランクシャフトなどを採用しています。
フェラーリによれば、エンジンのインテークを「根本的に再設計」し、マニホールドとプレナムをよりコンパクトに収めており、812コンペティツォーネよりもパワフルであるにもかかわらず、(812コンペティツォーネ比で)汚染物質の排出量と粒子状物質の発生を30%削減している、とのこと。
レッドラインは9,500回転、圧縮比は13.6:1、トルクは697Nm、そしてこのエンジンに組み合わせられるトランスミッションはF1 DCT(7速デュアルクラッチ)。
なおデイトナSP3の車体重量は1,485kg、パワーウエイトレシオは1.77、前後重量配分は44:56、ボディサイズは全長4,696ミリ、全幅2,050ミリ、全高は1,142ミリ、ホイールベースは2,651ミリ。
0−100km/h加速は2.86秒、200km/hまでは7.4秒、最高速は時速340キロ以上だとアナウンスされています。
エアロダイナミクスもフェラーリ・デイトナSP3のハイライトの一つ
そしてフェラーリはこのデイトナSP3につき「エアロダイナミクス」を大きな特徴のひとつとして挙げていて、すべてのフェラーリの中で「トップレベルのパッシブ・エアロ・エフィシェンシー」を実現した、と主張。
これはメカニカルコンポーネントからの効率的な放熱管理のための革新的なソリューションと、冷却とダウンフォースのための巧妙なデザインによって達成されたと紹介されており、つまりは「ガワ」だけではなく車体の構造を見直すことからはじまっている、ということですね。
実際のところ、最も大きなエアロ的イノベーションは「目に見えない」アンダーボディ部分にあるといい、車体裏面後部のフロアチムニー数本が、垂直ダクトを介してリアウイングのルーバーに接続され、空気の流れを最大化してダウンフォースを増大させている、とのこと(つまりはこの水平方向のルーバーもデザインだけではなく、ちゃんと意味がある)。
さらにドアにインテークが取り付けられたことによってリアサイドのエアインテークが不要となり、そのために美しくクリーンなリアフェンダーを再現することが可能となったようですね。
もちろんホイールもフェラーリ・デイトナSP3専用デザイン(フロント20、リア21インチ)となり、タイヤはピレリによるデイトナSP3専用で、ウェットとドライの両方の性能の最適化がなされていると言われます(ミシュランでないのは意外)。
シートは「車体と一体化」
フェラーリ・デイトナSP3の車体構造はカーボンモノコックを採用し、シートは車体と一体化。
これはF1マシンであったり、メルセデスAMG Oneのようなハイパーカーにも見られる構造であり、ペダルボックスが移動することによってドライビングポジションを調整します。
ステアリングホイールやメーター、シフトセレクターはローマやSF90ストラダーレ/SF90スパイダー、296GTBといった新世代フェラーリをベースとしており、ステアリングホイールから手を話すことなく、車両の機能の80%を操作可能。
ちなみにこのシートデザインは、1960年代のフェラーリ製レーシングカーのシートが「車体に直接取り付けられたクッションであった」ことに由来するそうで、そしてヒップポジションは他のフェラーリに比較して低く、シートバックも「寝た」角度を持っています(実際に全高は1,142ミリと”かなり”低い)。
こうやって見ると、デビュー前には「ラ・フェラーリ・アペルタをベースに、330 P4風のデザインを与えたモデルになる」と言われていたものの、実際には「ラ・フェラーリ・アペルタのカーボンモノコックシャシーを流用しつつ、しかしょ構造にはじまりエアロダイナミクスに至るまで何から何までを再設計し、インテリアにも最新のデバイス、専用の設計を取り入れ、かつデザイン面においても330 P4だけではなく様々なロードカー/レーシングカーの要素を取り入れた「特別な」クルマであることがわかりますね。
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参照:Ferrari