| 近年、フェラーリは「テスタロッサ」の商標を再取得している |
テスタロッサはフェラーリの歴史に残る「強烈な個性を持つ」スーパーカーであることは間違いない
さて、フェラーリが「テスタロッサトリオ」に関するコンテンツを公開。
このトリオとは「テスタロッサ」そして「512TR」「F512M」を指しており、フェラーリ自らがそれらの相違について述べているわけですね。
まず、このトリオの始点となる”テスタロッサ”は先代の512BBiの後継として登場していますが、この発表は当時の通例であったモーターショーではなく、なんとパリのシャンゼリゼ通りにあるキャバレー「リド」にて行われており(その直後にパリ・モーターショーで公開されている)、フェラーリいわく「完全にショービジネス的なクルマであった」。
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フェラーリは急速に大衆化姿勢を強める
そしてこの「ショービジネス」的側面を証明する例が米人気TVドラマ「マイアミ・バイス(1984年~1989年)」への供与。
これはフェラーリ(正確にはアメリカのインポーターだと言われる)が制作サイドに車両を提供したという非常に珍しい例で、その意図は当然ながらアメリカ市場での拡販です。
そして興味深いのがこのマイアミ・バイスのプロデューサーが「マイケル・マン」であったという事実で、ここでマイケル・マンとフェラーリとの接点が生じ、よってこれがマイケル・マン監督最新作「フェラーリ」へとつながってくるわけですね。
マイケル・マンは祖父が乗っていたフェラーリ275GTBに触れたことでフェラーリに興味を持ち、20~30年という長い間「フェラーリ」の構想を練っていたといいますが、マイアミ・バイスにおけるテスタロッサ(モノスペッキオ)の採用にしては同氏からのフェラーリへの働きかけもあったのかもしれません(マイアミ・バイスのシーズン1ではデイトナスパイダーのレプリカが使用されており、このドラマにフェラーリは”必須”であったのだと思われる)。
そしてこのマイアミ・バイスでは「マイアミという華やかな舞台にて、イタリア製の高級スーツを着て、フェラーリを乗り回すスタイリッシュな刑事」が描かれることになるわけですが、これについてもフェラーリは「フェラーリのV12フラッグシップが、スーパーカーというポジションに加え、GTという性格を獲得した瞬間」だとも述べています。※マイアミ・バイスへの登場により、北米におけるフェラーリの知名度が格段に向上したとされるので、フェラーリはマイケル・マンに対しては頭が上がらないのかもしれない
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テスタロッサといえば「あのフィン」である
そしてテスタロッサの象徴ともいうべきデザイン的特徴がサイドのフィン(ストレーキ)ですが、この採用にはエンジニアリング要件が関連しているといい、というのも先代の512BBiではフロントに設置されていたラジエターが、テスタロッサではボディサイドに移動し、これによって全幅が152ミリも拡大しています。
そしてこのストレーキはサイドに内蔵されたラジエーターの保護(走行中の飛来物からラジエターを守る)のために考案され、ピニンファリーナが「構造上の特徴」をデザイン上のチャンスとして活用した結果なのだそう。
Image:Ferrari
ちなみにピニンファリーナはもともとこういった「フィン」が大好きで、テスタロッサと同年代(1984年)にデザインされたホンダのコンセプトカー、HP-Xにもフィンが見られます。
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さらにはデイトナSP3(これ自体のデザインはピニンファリーナではない)のリアセクションのモチーフの一つとなった、1968年のフェラーリ250 P5 ベルリネッタ・スペチアーレにも同様のフィンが見られますね。
かくしてこのテスタロッサの「サイドストレーキ」「ワイドでフラットなリア」はフェラーリにとっての一つのアイコンになったわけですが、ハンドリング面では(当時の技術的限界により)高速走行時のフロントリフト、それに関連した接地性の問題を抱えていたとされ、それを改善したのが1991年に登場した512TR。
エンジン出力の向上(390馬力から428馬力へ)に加えてエンジン搭載位置を30ミリ下げ(テスタロッサではエンジン搭載位置が高いことも問題視されていた)、さらには車体剛性を向上させたほか、ホイールサイズは16インチから一気に18インチへとアップされるなど「大幅に再設計」されたモデルです。
一方で外観だとフロント周りやエンジンカバーの塗装の変更など「小規模な改良」にとどまっていて、これがテスタロッサとの差異を小さく見せているものの、事実上は「ほぼ別のクルマ」といえるほどに進化しています。
Image:Ferrari
そして1994年になると特徴的なリトラクタブルヘッドライト(ポップアップヘッドランプ)を廃止し、大きく見た目が変わったF512Mが登場。※「M」はモディフィカータ=改良版を意味する
エンジンにはチタン製コンロッドが組み込まれ出力は440馬力にまで向上し、新設計のステンレス製エキゾーストシステムによってさらにサウンドが情緒豊かなものとなっています。
そのほかフロントフードのダクトがF40(1987年)にも採用されたNACAダクトへ、そして(サイドとリアのフィンは残されているものの)テールランプがクラシカルな丸4灯へと回帰していることも大きな特徴。
Image:Ferrari
そしてこのF512Mで特筆すべきは「限られた顧客にしか販売が許されなかった」ということで、そのため生産台数はわずか501台に絞られています。
なお、512TRの生産台数は2,261台、テスタロッサの生産台数は8,000台近いとされるため、このテスタロッサファミリーは合計で1万台超を販売したということになりますが、後継モデルの550マラネロではエンジン搭載位置がフロントに移り、これ以降(カタログモデルとしての)フェラーリのV12フラッグシップは”フロントエンジン”へとシフトし、今に至るまでV12ミドシップの系譜が途絶えています。
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