さて、ターボエンジン搭載のフェラーリV8モデル、488GTBに試乗。
ランボルギーニ・ウラカン、マクラーレン650Sとライバル関係にある車ですが、車の性格やF1での関係性を考えるとランボルギーニ・ウラカンよりもマクラーレン650Sのほうが直接のライバル、と言えそうです。
【価格、スペック】
フェラーリ488GTBは価格3170万円、0-100キロ加速は3.0秒、670馬力、最高時速は330キロ以上。
ランボルギーニ・ウラカンLP610-4は価格2970万円、0-100キロ加速3.2秒、610馬力、最高時速は325キロ以上。
マクラーレン650Sは価格3160万円、0-100キロ加速が3.0秒、650馬力、最高時速は333キロ。
サイズ・重量だと全長/全高/全幅/重量において、フェラーリ488GTBは4568/1952/1213/1370、ランボルギーニ・ウラカンLP610-4が4459/1924/1165/1422。
マクラーレン650Sは4512/2093(ミラー含む)/1199/1330。
パワーウエイトレシオだと488GTBが圧倒的とも言えますね。
【内装や外装など】
内外装については以前既に確認済みなのでサクっと試乗開始。
シートのフィット感が素晴らしく、レッドをメインに使用したレザー内装は異次元空間そのもの。
このあたり何度もお伝えしている通り、フェラーリは内装カスタムの選択肢が多く、まさに非現実的な空間を容易に演出することが可能で、ここはランボルギーニ・オーナーからすると非常に羨ましいところ。
シートポジションをあわせてミラーも調整しますが、ドアミラーに映るリアフェンダーの盛り上がりは非常に独特で、それだけでもこの車が「何者であるか」を再確認させられます。
ダッシュボードの中央と先端は低くえぐられており、これが前方視界を確保するのに役立っているほか、リアサイドウインドウからの斜め後方の視認性も高く、フェラーリは「運転しやすさ」という現実性においても高いレベルを確保していることがわかりますね。
【実際に運転した印象】
キーはついに「スマートキー」になりステアリングコラムのキーシリンダーにキーを差し込む必要がなくなり、キーは適当なところに置いたままステアリングスポーク脇にあるプッシュボタンを押してエンジンをスタートさせますが、エンジンが目覚めた後に一瞬大きな音が出て、すぐに音量は落ち着きます(このあたりエンジンが暖まっていたためかと思われる)。
アイドリング時の音量、振動に関しては458イタリアに比べてかなり小さいレベルと言え、駐車場を出すときのステアリングを切った感覚も若干「おおらか」になっているようで、サウンドやステアリングフィールなど体感できる部分が「GTカー」っぽくなっている印象。
タイヤ、エンジンはもう十分に暖まっているため、ここで遠慮無くフル加速を試みますが、とにかく加速が速いのなんの(助手席でこれを体験したら漏らすレベル)。
ウラカンに比べて0-100キロ加速の差はわずか0.2秒ですが、体感上は0.2秒以上。
ぼくが体験した中ではマクラーレン650Sが「加速では最速」ですが、それに匹敵する速さがありますね。
この「異常な速さ」はターボエンジン特有の加速の立ち上がりに起因すると思われ(関連記事:NA、ターボ、EVの加速性能と体感上の差について)、これが体感上の「ウラカンとの差」になって表れていると考えられます。
なおフル加速時には車体後方から盛大な吸気音が発生し、これが気分を大きく盛り上げることに。
【ターボエンジンについて】
先日のターボエンジンを搭載したポルシェ911の試乗でも感じたことですが、最近の車はシフトポジションをオートにして走っていると低い回転数でシフトアップしているので必然的に高いギアで走ることになり、その状態でそこから加速しようとするとNAの場合は回転数が上がるのを待つ必要があるものの、しかしターボエンジンだとそこを待つまでもなくトルクが発生しているので、逆に「タイムラグなし」で加速が可能。
その意味では昨今のトランスミッションの設定とターボエンジンというのは非常に相性が良いと思われますね。
逆にNAエンジンの「おいしいところ」にタコメーターの針を閉じ込めて走行している場合、NAだとそこからさらに踏み込むとカミソリのような切れ味をもって加速しますが、ターボエンジンの場合、やはり多少のターボラグを感じます。
その意味では、走らせ方にもよりますが、ある程度回転数高め、低めのギアで走ることが多い場合は458スペチアーレのほうが楽しく、「流す」ことが多い場合は488GTBのほうが向いているのかもしれません(488GTBのほうがフレキシビリティが高い)。
【ハンドリング、足回りについて】
なおハンドリングに関しても458スペチアーレのほうが「スパっと曲がる」感があり、もしかするとこれはステアリングのロックTOロックが異なるかもしれない、とも思います(関連記事:ランボルギーニ・ウラカンのインプレッション~納車二ヶ月目、ハンドリングについて)が、これも488GTBが曲がらないというわけではなく、切ったら切った分だけはしっかりと曲がる不思議な設定。
もちろん車の性格の違い、意図するところの違いはありますが、足回りに関しても458スペチアーレの硬さと鋭さに比べて488GTBは「GT的」。
ただし柔らかい、ロールが大きいという意味ではなく「しっとり上質」という意味で、後輪駆動ながらも4WDのような安定性を持っており、マクラーレン650S、ウラカンLP580-2のほうがかなり硬く感じるほど。
フェラーリ488GTBの足回りはその点驚異的で、しっかりと衝撃を吸収するのにロールが少なく、高速域のコーナリングにおいてもまったく不安なく踏んで行ける設定(もしかするとタイヤの銘柄の関係もあるのかもしれない)で、イメージ的には(そんなことはありえないのですが)メチャクチャに大きなタイヤを装着して走っているような安心感。
ハンドリングは極めてニュートラルでオンザレール感覚ですが、おそらくそこから踏んでゆくと「アクセルで車体を曲げる」領域になるのだろうな、という感じですね。
接地感というかグリップ感は抜群で、ちょっとやそっと飛ばしても「これでコントロールを失うことはまずないだろう」という安定感を誇っており、海外で報道されるようなフェラーリの事故は「どうやったらあんな事故になるのか」が不思議なほど。
【総括】
どれだけ踏んでも、どれだけステアリングを切っても思った通りの反応をしてくれるのがフェラーリ488GTBで、これに乗るとまさに「自分が無敵になった」という錯覚すら覚えてしまう、文句無しに楽しい車と言えるでしょう。
加えて、とにかく静かで振動が少なく快適で、どのような速度域や回転数からでも完璧な加速を見せ、まったくドライバーに凄さを感じさせないままにライバルを凌駕する加速性能や旋回性能をあっさりと発揮するのが488GTBではないかと感じており、非常に高いパフォーマンス、懐の深さ、器の大きさも感じさせます。
なお「ドライバーに凄さを感じさせない」というのは重要な要件であり、「凄さ」というのはなんらかの違和感で、それは過敏に反応するアクセルやステアリング、ブレーキにも置き換えることができ、よって「凄いと感じないのに速い」というのは優れた車の条件だとぼくは考えています(こういった車はポルシェだけだとぼくは今まで考えていましたが、488GTBもそこへ仲間入り)。
もしかすると488GTBは「凄さ」を感じないぶんマイルドになったと感じる向きもあるかもしれませんが、そこは追々出てくるハードコア版がその不満を解消してくれると考えられ、しかし488GTBは幅広い客層を獲得するには最適なセッティングで、ポルシェやマクラーレンからもけっこうな流入があるかもしれない、と考えたりします。
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試乗記について
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