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【直5エンジン+AT?】ホンダS2000誕生の裏に隠された“もうひとつの可能性”。原点は1995年のSSMコンセプトにあり

【直5エンジン+AT?】ホンダS2000誕生の裏に隠された“もうひとつの可能性”。原点は1995年のSSMコンセプトにあり

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| ホンダ S2000──“絶滅危惧種”となった純粋なFRスポーツ |

NA・高回転・50:50重量配分の三拍子が揃った国産名車

ホンダ S2000は、今なお「究極の国産スポーツカー」として語り継がれる存在です。

1999年に登場したこの2ドア・オープンモデルは、自然吸気2.0リッター直列4気筒(しかも9,000rpmまで吹け上がる高回転型ユニット)、50:50の重量配分、FRレイアウト、6速MT、ダブルウィッシュボーンと、スポーツカー好きにとって理想的なスペックを備えていたことが知られていますが、もしかすると「直列5気筒」エンジンを積んで発売する可能性があったもよう。

実際のところ、S2000の原型は1995年に東京モーターショーにてホンダが発表した「SSM(スポーツ・スタディ・モデル)」というコンセプトカーにあるのですが、その心臓部は“直列5気筒エンジン”であったと公式にアナウンスされています。

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実は直5だった、S2000の原点「SSMコンセプト」

SSMがデビューしたのは1995年。

これはホンダが新時代のスポーツカーを模索していた時期で、ライバル各社(メルセデス SLK、BMW Z3、ポルシェ・ボクスターなど)が続々と(マツダ・ロードスターの成功に触発されて)新型ロードスターを投入していた時期でもあります。

そしてこのSSMは、イタリアのピニンファリーナの協力も受けつつデザインされ、未来感あふれるオープンモデルとして発表と同時に注目を浴びたわけですね。

  • 2シーターの分離型コクピット
  • ヘッドレスト後方のロールフープ
  • 完全オープン(タルガ、ソフト、ハードなどトップなし)
  • デジタルメーター&高いセンタートンネルにシフトレバー
  • NSX譲りのダブルウィッシュボーン&アルミ製足回り
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直列5気筒・8,000rpm・RWDという未完のパッケージ

注目すべきは、エンジンが直列5気筒 2.0リッター自然吸気、そして8,000rpmまで回る設計だった点。

トランスミッションはNSXのFマチック4ATをベースにした5速ATが搭載され、ステアリング裏のシーケンシャルレバーでマニュアル操作も可能という、当時としては革新的な機構を備えています。

さらに、スチール製モノコックボディに軽量コンポジット素材を組み合わせ、軽量化と剛性確保を両立。

駆動方式はもちろん後輪駆動(FR)で、50:50の前後重量配分が実現されていたわけですね。

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“幻のS2000”が現実になった1999年──スペックはこう変わった

そして1999年、量産モデル「S2000」がついに市販化され、SSMとの違いは以下のとおり。

項目SSM(1995年)S2000(1999年〜)
エンジン直列5気筒 2.0L NA(試作)直列4気筒 2.0L NA(F20C)
最高出力推定 180〜200馬力?237馬力 / 9,000rpm
トランスミッション5速AT(Fマチック改)6速MT(専用設計)
駆動方式FRFR
ルーフなしソフトトップあり
メーター類デジタルパネルデジタルメーター採用

結果的に直列5気筒エンジンは採用されず、代わりにF20C型・VTEC直4エンジンが選ばれたことで「119ps/L」という当時世界最高の自然吸気パワーレシオを達成。

6速MTと組み合わせることで、“官能的”とすら言われるドライビングフィールを実現しています。

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名車としてのS2000の評価は今なお健在

S2000は軽快なハンドリング、正確なシフトフィール、FRらしいドリフトコントロール性を武器に、登場からわずか数年で世界中のジャーナリストやファンの支持を獲得し、2004、2006、2008年にはJ.D.パワー「プレミアムスポーツカー部門」で最高評価を獲得し、生産終了までに11万台以上が販売される人気モデルとなっています。

結論:直5か直4か──ホンダが選んだ“正解”が、名車S2000を生んだ

SSMのまま直列5気筒+ATで市販されていたら──。それはそれで面白い歴史だったかもしれませんが、やはりぼくらが知るS2000の魅力は、軽量な直4+高回転+6MTというパッケージにこそ宿っているのだと考えられます。

なお、ホンダが5気筒エンジンを採用しなかった理由は明かされておらず、しかしホンダは1989年にアコードインスパイアとビガーへと直列5気筒エンジン(G型エンジン)を搭載したことがあり、よって技術的な問題はなかったものというのがぼくの認識(同じく5気筒エンジンを採用することで知られるのはアウディだが、当時のフォルクスワーゲングループ会長、フェルディナント・ピエヒ氏はホンダの5気筒エンジン搭載車を試すために日本をわざわざ訪れている)。

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参考までに、ホンダは1966年のロードレース世界選手権で、125ccクラスのRC149に並列5気筒エンジンを採用したことがあり、2001年以降にはMotoGP移行に伴い開発されたRC211VにV型5気筒エンジンを搭載したことも(2002年にMotoGP初代チャンピオンを獲得している)。

よってホンダと5気筒エンジンというのは意外と「縁が深く」、幅広い年代にまたがって5気筒エンジンを使用していたことがわかります。

そのためホンダがSSMに「5気筒エンジン」を積んだことにも納得がゆきますが、S2000には(5気筒ではなく)4気筒を選択しており、その理由はやはり「軽量性」であったのかもしれません。

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つまりパワーよりも軽量性を重視したのだとも考えられますが、ダウンした排気量を「超高回転」が補っており、それがS2000の性格を決定づけたのだとも考えられます(何度かS2000を運転したことがあるが、ぼくの記憶に残るのはハンドリングよりもエンジン特性である)。

ホンダは当時としては難しい選択をしながらも、“ドライバーを楽しませる”という哲学を貫き、結果としてS2000は今なお語り継がれる名車になったわけですが、現代のスポーツカーに必要なのは、スペックや電動化だけではなく、“キャラクター”かもしれない──そんなことを、S2000の誕生秘話は教えてくれるようにも思えますね。

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