| 現在、多くの自動車メーカーが「ガソリン車の持つ、走る愉しさ」を電動化時代に再現しようとしているが |
ホンダはその再現の目標を「本質的なもの」に設定し、中途半端な技術でお茶を濁すことはないようだ
さて、現在「FFホットハッチ」は絶滅にひんしたセグメントであり、とくにエレクトリック時代になると「FF」そのものがなくなるであろうこととから(現在の流れを見る限り、フロントモーター+前輪駆動よりも、リアモーター+後輪駆動のほうが多数派となるようだ)完全にその存在が消えてしまうと考えて良いのかもしれません。
実際のところプジョーはすでに「GTi」を廃止し、ルノーも(メガーヌなど)R.S.モデルを廃止する予定だとされ、フォードはフィエスタとフォーカスを廃止するために「ST」「RS」グレードも自動的に消滅することに。
なお、ハッチバックのメイン市場である欧州にて、ガソリンエンジンを搭載するハッチバックが消え去ってゆくのには様々な理由があり、触媒に使用する希少金属の価格が上がってしまい、ハッチバックの価格も高くなってしまって価格競争力が無くなってしまったこと、コンパクトEVがそれに取って代わろうとしていることなどが挙げられ、つまりは「時代の波にのまれてしまい」抗うことができなくなってきたわけですね(更に自動車メーカーは”選択と集中”を迫られており、利益の薄いこのセグメントに固執することはビジネス的に許されない)。
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ただしいくつかのFFホットハッチは存続も
しかしながら、この状況においてもヒョンデは当面i30Nを残すことになるものと思われ、フォルクスワーゲンもゴルフGTIを存続させるとコメントしており(駆動方式はともかく、エレクトリック時代になっても存続し続けるようだ)、そして今回はホンダが「タイプRを存続させる」と言及しているため、ホットハッチのうちいくつかは新しい時代になっても存続する可能性が出てきています。
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今後、ホンダの「タイプR」はどうなる?
そこで今回英国Autocarが報じた内容ですが、これは今後のタイプRについてのあり方につき、タイプRプロジェクトのリードエンジニアである柿沼秀樹氏が語ったもの。
まず同氏は「タイプRがなければ、ホンダはない(Without Type R, there is no Honda)」という頼もしいコメントから入り、「タイプRそのものは、パワートレインに依存するものではありません。ある種のフィロソフィー、走る歓びの原理であり、それにはさまざまな側面があります。この感動を、カーボンニュートラルや多少の電動化、あるいはまったく別の技術で、あるパワートレインで提供できれば、これも正当にタイプRと言えるでしょう 」と述べています。
つまり、タイプRの定義とは「走る歓び」にあり、これを実現できればガソリンでもハイブリッドでもピュアエレクトリックでもOKということになりそうで、実際に同氏は「カーボンニュートラルを達成するためには、パワートレインそのものにこだわる必要はありません。ガソリンエンジンをを搭載したクルマであっても、それを達成できる可能性があるのです。だから次のタイプRがガソリンエンジン搭載モデルとなる可能性を否定はしません。ただし、現状を考えると、その可能性は非常に低いでしょう」とも。
この「ガソリンでもカーボンフリーを達成可能」というのは、おそらく合成燃料(Eフューエル)を指しているものと思われ、しかしこちらはまだまだ開発途上にある技術であり、たしかに自動車メーカーのエンジニアとしては、これに頼るクルマを開発することはできないのかもしれませんね。
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ただしホンダは困難に挑戦
さらに柿沼秀樹氏は「我々ホンダは、ドライビングプレジャーこそが、プライベートモビリティ、つまり個人移動の核となる本質だと強く信じています。しかしながら、カーボンニュートラルや排ガス規制が非常に厳しい中で、このようなスポーツモデルをその枠の中で考えることは非常に難しいこともまた事実なのです。しかし、ホンダにとってそれは、お客様に走る喜びを提供するための新しいハードル、新しいチャレンジに過ぎないのです。そう、私たちはぜひともさらなるタイプRを世に送り出したいと思っています」と語っていて、同氏にはまさに拍手喝采を送りたいところ。
なお、ホンダは新型シビック・タイプR発表に際し「勝利は一瞬。挑戦は永遠。」というコピーを使用していて(ホンダはけっこう心に残るコピーを使用することが多い)、困難に挑戦することを美徳としているフシがあり、そしてこれまでの数々の挑戦を鑑みるに(スポーツカーのみではなく、フィットやオデッセイ、ステップワゴンで市場を創出したことを考慮しても)、いかに困難があったとしても、その目標を達成してくれるのかもしれません。
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ちなみにですが、トヨタは「走る歓び」の達成手段のひとつをマニュアル・トランスミッションだと理解していると見え、しかしホンダはこれに意義を唱えており、「もっと本質的なもの」を探究することを重要視しているようですね。
そして一つ注意を要するのは、今回はあくまでも広義の「タイプR」について語っているものと思われ、つまり「シビック」タイプRのみに絞っているわけではないものと思われます。
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参照:Autocar