| トヨタの”TNGA”は現段階では期待はずれ? |
Sankeibizによると、現在トヨタの「TNGA」は期待していたほどのコスト削減効果を上げることができていない、とのこと。
TNGAとはもともと「自動車そのもののパフォーマンスも向上させること」を狙ったものですが、それは表向きの狙いであって、内部的な目的としては「パーツやコンポーネント、設計を共有し、それらのコストを引き下げること」なのだとぼくは認識。
ただ、共通化によって「先端情報の共有」による優れた設計が可能となったり、下がったコストを研究開発に充てたり、素材により良いものを使用する余裕が生まれるため、対外的な「建前」と内部的な「ホンネ」は必ずしも相反するものではない、とも捉えています。※トヨタによるTNGAの解説はこちら
できればフォルクスワーゲンのように進めたかった
なお、記事ではTNGAを進めることによって「かかったコストが大きすぎた」と解説。
もちろんTNGAはスタートしたばかりであり、初期投資が大きかったということもあるようですが、開発現場においては商品力向上にコストが割かれることが多く(誰だっていいクルマを造りたい)、よってトヨタの車自体の性能は大きく向上したものの、コストが下がっていない、ということのようですね。
なお、TNGAはフォルクスワーゲン・アウディグループが進める「プラットフォーム戦略」に類似するもので、たとえばフォルクスワーゲン・アウディグループはプラットフォーム、エンジン、トランスミッションなど主要コンポーネントを共通化することで「部品点数が90%減った」。
つまりはこれらを設計するコスト、製造するコスト、保管するコスト、輸送するコストなどが大きく下がることになり、ディーゼル不正事件によって大量のリコールや補償金支払いによって一時は「経営難になる」とまで言われたものの、フタをあけると「2017年も最高益」。
一時は所有するランボルギーニやドゥカティ売却の話まで出たものの、結局は「業績が好転したので売らなくて良くなった」ということになったほど。
要は、「共通化」の効果はそれほどまでに大きい、ということですね。
加えて、ゴルフやポロを見ても分かる通り、「(共通化によって上位モデルの技術をもらえるので)クラスを超えた」装備や性能も持っており、これが結果として競争力の向上をもたらし、サイクルとしては「どこかの線を超えれば、すべてが上手く回りだす」とも考えられます。
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トヨタは20%のコスト削減を見込んでいた
なお、トヨタがTNGA展開によって見込んでいたコスト削減は20%。
しかしながら約1370億円を投じて工場へと導入した設備などが嵩んでいて、今の段階ではほぼ効果が上がっていないとされ、しかしながらいったんうまく回り始めれば「生産台数が世界トップクラスのトヨタだけに」削減できる費用も大きそう。
実際のところTNGAに基づき設計され、発売された車はプリウス、C-HRあたりにとどまり、まだまだ判断を行う段階ではない、とも考えられます。
ちなみにトヨタの営業利益は2014年辺りから下がってきているといい、しかしトヨタはメルセデス・ベンツやアウディ、BMWのようにエレクトリック化を推進し(EV生産のための)工場を建設しているわけではなく、単に「競争に呑まれて」利益率を削っている可能性も。
そうなるとまずは「商品力向上」が最優先課題とも言えそうですが、これに関してもTNGAが(これから)貢献するかもしれませんね。