| この数年はサプライチェーンの混乱、電動化への対応状況等によって大きくランキングが変動している |
全般的にはアメリカンブランドの大きな躍進が目立つようだ
さて、JDパワーがおなじみ「自動車ブランドの満足度」に関わる調査結果を発表。
全体的な「満足度」は高まる傾向にありますが、その大きな要因は(調査項目の中にある)「価格」だといい、これは各市場でちょっと前まで報告されていた、”新車の供給が少なく、買おうと思っても新車がなく、あったとしても高い価格で販売されている”という傾向が薄れつつあるため。※1,000点満点中、平均値は昨年の786から793にアップ
なお、今回の調査は米国内を対象としており、日本ではまずないものの、米国の正規ディーラーは品薄になると平気で新車価格を(色々な理由をつけて)吊り上げてくる、といった状況がここ数年の調査に影響を及ぼしていたものと思われます。
-
この状況でも米自動車ディーラーの平均利益が2.4倍に伸びる!米ではモノの価格が日本に比較して変動しやすく、ディーラーが「新車不足を理由に」値上げしていることが原因か
| さらにアメリカの消費者は「品不足→値上げ」に慣れている | この傾向はまだ2-3年は続くことになりそうだ さて、現在は資材や半導体(マイクロチップ)不足、そしてロシアのウクライナ侵攻によって輸送上 ...
続きを見る
最新の「顧客満足度調査」ではEVオーナーの満足度が低い傾向が鮮明に
そこで今回公開された2023年米国販売満足度指数調査の内容を見てみると、まずセグメント別に「プレミアムカー」ではポルシェの満足度がもっとも高く、「プレミアムSUV」でもやはりポルシェ、「マスマーケットカー(大衆車)」ではシボレー、「マスマーケットSUV/ミニバン」だとGMC、「マスマーケットトラック」もGMC」という結果です。
その他の傾向としては「ガソリン、ディーゼルなど内燃機関自動車を購入した人の満足度(848点)は、電気自動車を購入した人の満足度(790点)よりもはるかに高く、これは価格がそもそも高いこと、そしてEV購入時に十分な説明を受けることができず、充電器の設置、充電方法の習得、新車のメンテナンススケジュールといった点についての(ディーラーからの)説明が不十分であるという意見が見られます。
これについて、JDのパワーの担当者いわく「ICE(内燃機関搭載)車の購入者は、ガソリンタンクに燃料を入れる方法を教わる必要はありませんが、EV購入者は自宅での充電方法や公共の充電ステーションを利用する際の注意点を知っておく必要があり、ディーラーの担当者はこれらをオーナーへと正しく伝える必要があるでしょう」。
2023年「顧客満足度調査」の結果(プレミアムカーブランド)はこうなっている
まずプレミアムカーブランドにおける満足度ランキングは以下の通り。
メモ
- ポルシェ・・・8400
- インフィニティ・・・832
- アルファロメオ・・・824
- リンカーン・・・820
- ボルボ・・・820
- ジャガー・・・818
- キャデラック・・・817
- メルセデス・ベンツ・・・816
- ランドローバー・・・815
- アキュラ・・・814
- BMW・・・813
- レクサス・・・808
- アウディ・・・807
- ジェネシス・・・756
ポルシェの満足度が高いのは「例年通り」であり驚きはないものの、今回のランキング全体ではいくつかの驚きがあり、これまで下位にあったインフィニティが2位となっていることで、これは最近開始されたディーラーの店構え含む「改革」「再ブランディング」が貢献したのかもしれません。
-
インフィニティもロゴを変更。「地平線の向こうに消えゆく無限の道」をさらに強調するとともに「発光」対応、INFINITIの文字間隔も広くなる
| 他ブランドとは異なり、インフィニティは「平面」「立体」とでロゴを使い分ける | インフィニティとしてはなんとしてもここからの挽回を図らねばならない さて、すでにロゴを変更した日産に続き、そのプレミ ...
続きを見る
そして3位は昨年1位だったアルファロメオ。
ただ、アルファロメオは昨年にトップを取るまでずっとランキングでは下の方にあり、北米ではあまり評判が良くなかったブランドです。
-
アルファロメオはなぜ売れなくなったのか?「品質と信頼性が低く、ディーラーの対応がよろしくない」うえに「スポーツカー大好きおじさん」しか買わないから
| アルファロメオは自動車メーカーとしてやるべき「品質の向上」「サービスの向上」「客層の拡大」を怠ってきた | これは今までのCEOが批判されても仕方がない さて、現在ブランドシフトを行っている最中の ...
続きを見る
しかしながらCEOがジャン・フィリップ・インペラート氏に代わり、大きな改革を行うことで製品に対する信頼性の回復、ディーラー対応の向上等による顧客満足度の向上を掲げていて、昨年の1位、そして今回の3位はその効果が現れたと考えてよいかと思われます。
-
「販売満足度指数」2022年最新版が公開!万年下位のアルファロメオがなぜかトップに立ちポルシェは2位、レクサスは3位へ。新車不足等の混乱によって順位が大幅変動
| かつてここまで自動車の販売現場が混乱したことはないだろう | まだまだあと1-2年は混乱が続きそう さて、調査会社であるJDパワーが毎年実施、そして公開している「販売満足度指数」。コロナ禍に突入し ...
続きを見る
一方、上位常連であったレクサスの満足度が大きく下がっていて、その理由はわからないものの、様々な報道を見ると、レクサスには「EVに買い換えようと思っても選択肢がRZしかない」「そのRZも航続距離が短く、その割に価格が高い」という批判が多いといい、それが如実に現れたのかもしれません。
そして最下位はブービーのアウディにも大きく数値が劣るジェネシス。
ジェネシスはそのデザイン性の高さから一気に販売を伸ばすことになり、しかし品質がそれに追いつかず、結果的に様々な問題が生じているとも聞かれますが、これは「消費者が期待した品質を満たせない時に起こる」現象でもあり、現在販売を急激に拡大しているヒョンデ、そして中国の新興メーカーのクルマについても同じことが言えるかもしれません(割安なことや、デザイン的な訴求力が高いことから一時的に”一気に”販売が拡大するものの、消費者が品質に不満をおぼえ、急拡大から1-2年で急激に販売が減ってしまうことがある)。
2023年「顧客満足度調査」の結果(普及価格帯ブランド)はこうなっている
そしてこちらは普及価格帯ブランドの満足度ランキング。
- ビュイック・・・824
- GMC・・・821
- シボレー・・・812
- 三菱・・・812
- スバル・・・808
- ジープ・・・805
- ダッジ・・・802
- ミニ・・・802
- 日産・・・799
- フォード・・・794
- マツダ・・・793
- ラム・・・792
- フォルクスワーゲン・・・792
- ヒョンデ・・・779
- クライスラー・・・773
- トヨタ・・・773
- ホンダ・・・771
- キア・・・766
こちらについても「大荒れ」となっていますが、まず傾向として挙げられるのはアメリカンブランドの順位が(全部ではないけれど)おしなべて高くなっていること。
これは品質の改善に加え、アメリカ人により好まれる製品のラインアップ、そしてEVの積極投入が奏功しているものと思われます。
日本の自動車メーカーだと三菱とスバルの満足度が高く、これは「ニッチ」に特化しているため支持が厚いものと推測していて、一方でフルラインナップ展開を行うホンダ、トヨタの順位がかなり低いことについては「乗り換えるべきEVがない」という評価がなされているのかもしれません。
なお、これまで下位にあった日産とミニがやや上に移動しているものの、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、キアの順位が低いのは「これまでどおり」でもありますね(キアは魅力的なEVを持っているが、それでも満足度が高くない)。
あわせて読みたい、関連投稿
-
統計により「ポルシェ911がもっとも満足度の高いクルマ」であることが明らかに。ボクはそれを「ポルシェは顧客に媚びるためにクルマを作っているわけではない」からだと考える
| 多くの自動車メーカーは消費者に媚びようとするが、ときにはそれがアダになることがある | そして品質の高さが満足度の高さにつながるようではないようだ さて、調査会社であるJDパワーが毎年恒例、米国に ...
続きを見る
-
「そのクルマの寿命通じ、もっとも壊れにくく信頼性の高いリスト」が公開。トップは初代トヨタ・セルシオ、シビックやカムリ、ロードスターもランクイン
| やはり日本車の耐久性は非常に高い | そして「新しいクルマが必ずしも信頼性が高い」とは限らない さて、消費者から絶大な信頼を得ているとされる米コンシューマーレポートが「予測信頼性に基づく、もっとも ...
続きを見る
-
毎年恒例、「もっとも信頼性の低いブランドランキング」公開!テスラが初のランクイン、おなじみアウディやメルセデス・ベンツを抑えての「ワースト」は?
| 品質の高いブランドはいずれも「納得」だが、品質の低いブランドランキングには「意外」な面々も | 低評価が定着してしまっているブランドも存在しており、改善の目処が立たないブランドも さて、調査会社で ...
続きを見る
参照:JD Power