| EUが導入した「対中関税」はある意味では特大ブーメランとなって返ってくる可能性も |
今や世界中のどの国であっても中国と喧嘩するのは「得策ではない」
さて、今週に「(以前決定された)EUの、中国車に対する関税」が発効することとなっていますが、これを受けて中国政府(中国商務省)が「EU諸国に対して投資を行わないように」という通達を出したとの報道。
中国は政治や経済、スポーツ、文化までもが密接に結びつき、かつ政府のコントロール下にあると」言われますが(日本だとこれらは良くも悪くも分離している)、これは日米欧からするとかなり異例の対応だとも考えられます。
つまり、政府が企業活動に口を出すことは(軍事・国防関連以外では)欧米でも例が少なく、しかし中国では堂々と政治が経済活動に関与しているということになり、そしてこの指示に従わなければ、その企業は様々な権利を制限あるいは剥奪されることになるものと思われ、つまり今回の通達は「非常に強い強制力を持つ」と考えて良さそうですね。
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中国政府は自国EVメーカーに対し2308億ドルもの補助金を出していたとの報告。その額は年々増加し、それでも数社を残して新興EVメーカーは倒産すると見られている
| こういった報道を見るに、中国の自動車メーカーが不当な保護を受けていると捉えられても仕方がない | 政府の支払った補助金は産業の保護にはならなかったかもしれないが、内需の拡大にはつながったであろう ...
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なぜ中国はEU諸国に対して規制を行うのか
なお、今回の「EU諸国への投資の禁止」は中国政府の”EUに対する報復”で、これはEUが新たに施行した関税に対する決定的な行動を取ったから。
少し前にEUは「中国の自動車メーカーが、EVを中国製製造するに際して大きな、そして金銭的優遇を与えている」として調査を行い、その調査完了後に「中国製電気自動車(EV)に対し、最大45.3%の関税を課す」と発表。
当然中国政府はこれに反発するものの、EU側としても頑として譲らず、双方の交渉が決裂した結果、今回の実施(関税の導入)に至っています。
ちなみにこの「関税の導入」は国ごとの判断に委ねられているといい、たとえばフィアットのあるイタリア、ルノーを抱えるフランスは「関税の導入を承認」しているため、これらの国に対して中国の自動車メーカーは今後(関税を撤廃するまでは)一切の投資を行わないということになるわけですね。
この関税は中国の自動車メーカーに対して「一律」に課されるものではなく、長い時間をかけた調査によって「自動車メーカーごと」に決められており、たとえばEU当局の捜査に協力し、積極的に資料を提出するなどした自動車メーカーの関税は低く抑えられ、(これだけが関税の決定要素ではないものの)MGの親会社であるSAIC(上海汽車)は上限である45.3%に対して35.3%、BYDだと17%、吉利汽車(ジーリー)だと18.8%。
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ついに中国製EVに対する欧州の追加関税発効、報告書の中では助成金のみならず「融資条件、用地取得費用、販売奨励金」など多岐にわたる補助があったことが判明
| これら中国政府の援助によって中国のEVメーカーは最大で1/3以上(欧州製EVに比較して)安価に電気自動車を製造可能に | これではさすがにEUも「不公平」だと感じるはずである さて、EUへと輸入さ ...
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そして今回の「投資保留指示」の一方、中国商務省は「関税導入に反対した国」に対しては積極投資を指示しており、これはかなり露骨なキャンペーンではあるものの、持久戦ともなれば効果を発揮することになりそうです(EU加盟国の家10カ国は関税導入を支持し、12カ国が棄権、ドイツを含む5カ国が反対している)。
参考までに、(関税を承認した)イタリアとフランスにとって悪影響を及ぼす可能性があり、というのも両国は最近、中国の自動車ブランド(SAICやチェリー、東風汽車など)を誘致するために熱心に動いてきたものの、これは確実に「頓挫」しそう。
一方でハンガリーは輸入税に反対票を投じ、そしてBYDは現在(欧州法人の)本社をオランダからハンガリーに移すことを検討している、と報じられています。
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