| 一部の純粋主義者には「神をも恐れぬ大胆な行為」だと目に映るかもしれない |
それでも、「F40の魂を宿したまま」V12エンジン搭載による進化を期待したい
さて、米ユーチューバー、マイク・バロウズが「フェラーリF40をシャシーやパワートレーン含めゼロから作り上げる」という前代未聞のプロジェクトを公開し大きな話題に。
そして話題となっているのは「外観(これだけは本物のF40のパーツを一部使用している)はまんまF40なのに、その中は全くの別モノ」ということに起因していますが、たとえばよくあるレプリカのようにポンティアック・フィエロやトヨタMR2をベースにしているのではなく、エンジンには812スーパーファストに積まれていた6.5リッターV12を使用するなど、「もともとのF40よりも優れたクルマを作ろうとしている」ためです。
フルスクラッチで製作されるフェラーリF40はこんなクルマ
このマイク・バロウズの試みはなんとも大胆なものではありますが、カーエンスージアストやフェラーリの純粋主義者たちに対して興味深い質問を投げかけることとなり、そしてその質問とは「このプロジェクトがF40の名にふさわしいものとなるのかどうか」。
そしてその問いに答えるために考慮すべきいくつかの重要な要素があり、ここでそれらを見てみたいと思います。
まず、フェラーリ以上のシャーシを作り上げることは、非常に野心的な目標で、オリジナルのF40は軽量化を追求したカーボンファイバー製のボディとチューブラースチールフレームを組み合わせていますが、マイク・バロウズはフェラーリの設計をコピーするのではなく、オリジナルのCADモデルをガイドとして使用し、現代の性能基準に合わせて最適化を行っています。
これが成功すれば、強度や剛性、ハンドリングの面で改善がなされる可能性が生じ、しかし過度に変更を加えることでF40の魅力が失われてしまう可能性もあるため、そのバランスは非常に繊細です。
さらにエンジンについては上述のとおり、F40オリジナルの2.9リッター・ツインターボVから812スーパーファスト由来の6.5リットル自然吸気V12エンジンへ。
そのキャラクターをどうやってF40に近づけるのか
このV12エンジンは800馬力を発揮し、「ドッカンターボ」で知られるF40の「478馬力」を大きく超え、しかもそのパワーフィールはV8ツインターボとは全く異なるものであり、F40の荒々しく、大型ターボチャージャーによるキャラクター(これがF40のアイコニックな魅力の一部でもある)を実現できるものではなく、ともすると「オールドスクールなF40の外観と、現代的なフェラーリのパワートレインテクノロジーの融合」に過ぎないクルマとなってしまう可能性も。
そうなってくると、このクルマは(オリジナルのF40のボディパネルを使用しているとしても)エンジンをV12に変更し、シャーシを新造しているため、このクルマが本当にF40と言えるのかという疑問が生じ、ある意味ではテセウスの船のようではあるものの、テセウスの船のように、同じ構造を保っているわけではなく、その判断には迷いが生じるところです。
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まだこのプロジェクトは完了していないため、その結論は先送りにとはなってしまいますが、心臓部と骨格が全く新しいものに変わった場合、それは依然としてF40の精神を持っているのかどうか、あるいはフェラーリへの背信行為なのか、人々がどう判断するのかは気になる部分。
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そしてもっと気になるのはマイク・バロウズの「真意」であり、そして同氏は単なるF40の再現にとどまらず、フェラーリの遺産を尊重しながら、F40がもし技術が異なって進化していたらどうなっただろうかという点での再構築を目指しているのかもしれず、それが進化なのか、オリジナルからの逸脱なのかはという点についても評価が分かれるのかもしれません。
フェラーリF40をほぼゼロベースで再構築する動画はこちら
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参照:StanceWorks(YouTube)