| その例を見ない破壊力はまさに「ゴジラ」と呼ぶにふさわしい |
最初にGT-Rを「ゴジラ」と呼んだカーメディアには敬意を表したい
さて、近代の日産GT-Rは「ゴジラ」なるニックネームで呼ばれることで知られますが、「ゴジラ」と「GT-R」の名前が結びついたのは1989年に登場したR32型スカイラインGT-Rであり、その発端は「ストリートとサーキットの両方においてその驚異的な性能を発揮し、とくにモータースポーツでの圧倒的な支配ぶりを指して1990年代初頭にオーストラリアのカーメディアが”ゴジラ”と名付けた」から。
それ以降、GT-Rは(本来の)ゴジラ同様に破壊と支配の象徴として君臨することとなり、世界で最も恐れられ尊敬されるスーパーカーの一つとなったわけですね。
「ゴジラ」の名が登場したのは1990年のオーストラリア・ツーリングカー選手権(ATCC)
初めて日産R32スカイライン GT-Rが「ゴジラ」の名を頂戴したのは1990年のオーストラリア・ツーリングカー選手権(ATCC)で、このレースではジム・リチャーズがR32 スカイラインGT-Rをドライブし、シーズン終了時にはジム・リチャーズが(フォード・シエラRS500のピーター・ブロックを圧倒的に上回る成績にて)3度目のオーストラリア・ツーリングカー選手権を制することとなっています。
しかしこの勝利はほんの始まりにしかすぎず、1991年にはR32 GT-Rが引き続き圧倒的な支配を見せ、ジム・リチャーズとマーク・スカイフが9戦中7戦で1位を獲得し、最終的には両者とも20ポイント以上の差をつけて他のドライバーを”制圧”することに。
さらに翌1992年のシーズンでもR32 GT-Rは連勝を重ね、マーク・スカイフが1位、ジム・リチャーズが3位に入るなど、まさに「ゴジラ並みの」手が付けられない強さを見せています。
ただ、R32 スカイラインGT-Rが強さを発揮したのはモータースポーツにおいてだけではなく「ストリート」においても同様で、その強さの源となったのは(モータースポーツのレギュレーションから逆算し排気量が決められた)2.6リッター直6ツインターボ「RB26DETT」エンジン、そしてATESSA(アテーサ)E-TSという4WDシステム。
まずエンジンは「自主規制」によって280馬力に出力が抑えられていたものの、実際にはオリフィスを抜くだけで300馬力以上を発生したりというポテンシャル、さらには強いチューニング耐性を持っており、日本においては「R32 スカイラインGT-Rの登場によってチューニングがビジネスとして成立するようになった」とも。
そしてアテーサE-TSは当時ポルシェが959に採用し、しかし「コストが高すぎるため、量産車には搭載できない」とされたトルクスプリットシステムを日産がアレンジしたもので、さらに日産はここへ4輪操舵を追加しています。
これらの技術は、GT-Rの伝説を作るための基盤となり、今なお高く評価されていますが、日産は電動化時代へと移行するに際しこれを「E-4ORCE」へと進化させ、その際に旧世代のアテーサE-TSの研究開発を打ち切り、このチームをホンダが丸ごと引き抜いたというウワサもあるもよう。
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それはともかく、R32スカイラインGT-Rの成功後、日産はその後継車R33(1995年)やR34(1998年)世代のGT-Rを発表し、とくにR33 スカイラインGT-Rはぬリュブルクリンクでの7分59秒887のラップタイムを記録し、初めて「量産車で8分を切ったクルマ」としても注目されることに。
R34はさらに技術的に進化し、R32 / R33スカイラインGT-Rと同じRB26DETTエンジンを維持しつつ、よりシャープなハンドリングが可能となったショートホイールベース(R33は車体が大きくなったことで強い批判を浴びた)、そして進化したエアロダイナミクス性能を誇り、モータースポーツの世界だけでなく、映画『ワイルド・スピード』でも大きな役割を果たし、カルト的な人気を獲得するとともにGT-Rの地位を不動のものとしています。
「R35」世代にてゴジラは大きく進化
そして2008年に日産はR35型GT-Rを発表し、これは今までのように「スカイライン」を名乗っておらず、GT-R史上では初めて米国を含む国際市場へと対応したモデル。
エンジンは直6からV6へと変化しているものの、圧倒的なパワーに路面状況を選ばない4WDという歴代GT-Rの特性を引き継いでおり、その「巨大な」ボディによって「ゴジラ」の名をより強固なものにしたのだとも考えられます。
そしてゴジラの名を全世界に広めたものまたR35 GT-Rであり、性能と技術の限界を押し広げる存在としても認知されることとなっていますが、デビューから17年が経過した今でもこの伝説は色あせることなく、自動車史における金字塔として語り継がれることとなりそうですね。
Image:NISSAN
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