
| 中国には129のEVメーカーが存在、だが100社以上が消える? |
生き残れるのはわずか15社、2030年までに淘汰完了か
中国は世界最大のEV市場として台頭し、過去10年で爆発的にNEV(新エネルギー車)メーカーが誕生しています。
しかしその裏で、すでに何百社というスタートアップが姿を消していて、2024年時点で販売実績のあるEV企業は129社にまで減少しているというのもまた現状(ピーク時には600社ほどが存在したと言われる)。
この状況に対し、今回コンサルティング会社アリックス・パートナーズ(AlixPartners)が、2030年までに生き残れるのはわずか15社程度だとする衝撃のレポートを発表して大きな話題を呼んでいます。※ただし、中国現地では「生き残るのはもっと少ない」という見解が示されている
-
-
「中国車の敵は中国車」。現在の中国ではEV市場の競争があまりに厳しく、「BYDとテスラが支配する市場において、NIO、シャオペン、Li Autoすら生き残る可能性はゼロ」
| 文字通り中国のEV市場は戦国時代にあり、淘汰が進む状況となっている | 最終的に「生き残る」ブランドは10社にすぎないと結論付けられる さて、中国の新興EVメーカーはピーク時で400~500社ほど ...
続きを見る
黒字化しているのはBYD、Li Auto、Seresグループのみ
ただ、「生き残るのは15社」といえど、これは中国のEV市場が縮小するという意味ではなく、「起業したものの黒字化できずに撤退するEVメーカーが多数出てくる」「BYDなど一部大手の市場占有率が上昇し、小規模EVメーカーにとっての生息領域が失われている」という現実に由来しています。
そしてこの15社が市場に残ることで、この15社が「中国国内のEV/PHEV市場の約75%を支配する」とも予測されており、つまるところ「勝ち組と負け組が明確になる」ということに。
-
-
EV業メーカー / EVブランドで黒字化できたのは世界でも4社のみ。3社は中国、テスラは中国以外で唯一の「黒字EVメーカー」に。なお中国のEVメーカーはこのままだと「7社に1社」しか利益を出せない
| ルシードの営業利益率は驚愕の「-374%」 | ジーカー(Zeekr)は大きく赤字を減らし黒字化へと向かっている さて、雨後の筍のようにどんどん誕生するEVメーカーですが、中国ではピーク時に「40 ...
続きを見る
現時点で(レポート内で)名前が明かされたのは一部の企業のみではありますが、それらはすでに黒字化に成功しているか、黒字化が目前とされる企業です。
まず、2024年時点で通年ベースで黒字化を果たしているのは以下の3社のみ。
- BYD(比亜迪)
- Li Auto(理想汽車)
- Seres Group(賽力斯集団)
※同社傘下にあるAITO、Landianなどのブランドも含む
また、以下のメーカー(ブランド)は黒字化に近づいているとされています。
- Zeekr(ジーカー)
- Xpeng(小鵬汽車)
- Leapmotor(零跑汽車)
つまり、大半の中国EVブランドはまだ持続可能なビジネスモデルを確立できていないのが現状で、現時点ではシャオミすらも「EV事業に関しては赤字」だとされ、一般にEVビジネスで利益を出すことが可能になるのは「30万台を販売してから」だとも言われていますね。
-
-
あの「GT-R似」1287馬力のエレクトリックセダンを発表して一躍有名になった中国HiPhi(ハイファイ)。創業から7年、わずか3車種を発売したのみで破産宣告
| 現在、中国のEV市場は「戦国時代」に突入しており生き残りは非常に困難だと言われている | HiPhi(ハイファイ)は高いデザイン性、そして先進性が評価されたEVメーカーではあったが さて、「R35 ...
続きを見る
価格競争とイノベーション速度が企業をふるいにかける
アリックス・パートナーズのアジア自動車部門責任者、スティーブン・ダイアー氏は次のように指摘しており、この状況は技術革新やコスト効率において業界全体の底上げを促す一方、中小のEVメーカーには過酷な環境となっています。
「中国は世界で最も競争が激しいNEV市場。価格競争は熾烈を極め、新興勢力が次々と革新を起こす。そのスピードについていける企業だけが生き残る」
さらに、「競争が過酷」なために値引き販売に走ってしまい、製品としての魅力向上を怠るようになってしまうとすぐに競争力を失ってしまい、これもまた「衰退」の原因となるほか、そのEVメーカーがなくなると消費者はアフターサービスやアップデート、コネクテッド関連サービスを受けることができなくなって「クルマとしての価値を失ってしまう」可能性があり、このあたり、倒産が現実的となってきたEV業界において、消費者は「価格」よりも「信用」を重視するようになるのかもしれません。
-
-
中国の新興EVメーカー、哪吒汽車(Neta Auto / ネタオート)が破産危機? トヨタによる買収報道は否定、資金調達失敗が深刻化
Image:Neta Auto | トヨタ買収報道は“完全否定”、だが事態はより深刻に | “買収否定”の裏で進むネタ破産の現実とは ここ数日、中国発の電気自動車スタートアップ「哪吒汽車(ネタオート ...
続きを見る
地方政府の支援で淘汰ペースは「緩やか」になる可能性も
ただし興味深いのは、地方政府が「雇用の維持」や「地域経済の保護」を理由に、赤字企業への資金注入や支援を継続している点で、このため、企業数の減少ペースはやや緩やかになる可能性もあるものの、傾いた企業、競争力を失った企業にお金をひたすら注ぎ込み続けることもできず、いずれにせよ業界再編は不可避であり、資金力・技術・販売力を持つブランドだけが生き残ると見られています。
-
-
いま中国で何が起きているのか?「世界一未来的なEVメーカー」、HiPhiが工場を閉鎖し給与未払いと報じられる。EVの供給過剰による「倒産の嵐」が吹き荒れる予兆か
HiPhi | 結局のところ、多くの中国の自動車メーカーにとって、EVは「目先のお金儲けのための道具」でしかなかったのかもしれない | 一波乱あったのち、「自動車メーカーとしての責任感」をもって活動す ...
続きを見る
結論:中国EV市場は「勝ち残り15社」時代へ突入
EVバブルの波に乗って乱立した中国のNEVメーカーたち。
しかし今、その多くが淘汰される「生存競争のフェーズ」に突入しています。
BYDやLi Autoのように、確実な技術・販売戦略・生産体制を整えたメーカー以外は、価格競争とイノベーションの波に飲まれて市場から姿を消す可能性が高く、これは自動車史上でもまれに見る大規模な業界再編となりそうで、幸いにして日本市場はこの影響を受けることはなく、ぼくらはこの歴史的大変動について「高みの見物」を決め込むことができそうです。
合わせて読みたい、関連投稿
-
-
【中国で急増中】走行0km中古車とは?表に出ない“数字の裏側”に潜む問題、そして市場崩壊と連鎖倒産の危険性
| 現在の中国では供給過剰、そして値引き、さらには自社登録による販売台数水増し、現金獲得のための中古車市場への横流しなど「なんでもあり」の状態である | あまりに多くの課題が山積し「どこから手を付けて ...
続きを見る
-
-
中国EV価格戦争がついに終了?”仕掛け人”のBYDも「このままでは持続不能」「共倒れになる」と発言。これまでの好調は「無理な安売り」によって支えられる
| EV価格が“米国の格安車”以下の値段に…そして政府が動き出した | ちなみに米国で最も安価なクルマは日産ヴァーサである さて、しばらく前から報じられていた、中国国内で激化しているEV(電気自動車) ...
続きを見る
-
-
ディープシークの衝撃冷めやらぬ昨今、中国の自動車メーカーが相次ぎ「Deepseekと車両の統合を完了した」と発表。EVのみならず日米欧は車載AIでも遅れを取るか
| 正直なところ、技術や品質は別として、「ビジネスのスピード」だけは中国に勝つことができそうにない | これでますます中国の自動車メーカーの(中国市場での)支配力が強まるであろう さて、一時は株式市場 ...
続きを見る