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ポルシェ、バッテリー戦略を見直し。セルフォース・グループでの量産を見送って「研究開発」に特化、生産計画を縮小

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| 以前よりポルシェは「バッテリー調達」に課題を抱えていたと報じられているが |

現在の状況、とくに「中国での失速」は想定外であると思われる

ポルシェは将来における主要な駆動技術として電動化を重視し続けていますが、電気自動車市場の立ち上がりが想定よりも緩やかであること、さらに米国や中国市場の環境変化を受け、今回「バッテリー事業の方向性を見直す」ことを正式発表。

この一環として、ポルシェの子会社 Cellforce Group(セルフォース・グループ) につき、今後「バッテリーセルとシステムの研究開発」に注力し、大規模生産の計画は追求しない方針を採用する、とアナウンスしています。

ただし電動化は加速、欧州で57%を達成

それでもポルシェは電動化に対して一定の成功を(株主対策のためか)主張していて、ポルシェによれば「2025年上半期、欧州市場で販売された車両の約57%が電動化モデル(EVおよびハイブリッド)によって占められ、IPO時に掲げた目標を上回り、世界全体でも36%の電動化率を達成した」。

加えてオリバー・ブルーメCEOは次のように述べています。

「ポルシェは既存自動車メーカーの中でも電動化を最も成功裏に進めています。電動化は今後もスポーツカーにおける重要な駆動技術であり続けます。」

実際のところ同社は2019年から電動化戦略を推進しており、現在はタイカンやマカンEVが市場で高い評価を獲得。

さらにカイエンEVや718シリーズのEVスポーツカーなど、新モデルも順次投入予定であることにも触れており、現時点では「その計画に大きな方向修正はない」ことについても触れられています。

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セルフォース・グループの再編と背景

この「セルフォース・グループ」について補足しておくと、もともとポルシェはほかのバッテリーメーカーとの協業にてバッテリーの供給を受ける予定であったものの、このバッテリー会社が破綻したことでその計画が頓挫してしまい、別途セルフォースグループを傘下に収めます。

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そして2022年、ポルシェはドイツ・キルヒェンテルンスフルトにバッテリー工場を建設し、生産拡大を計画していたのですが、EV市場の成長が想定よりも遅く、規模の経済を確立できない(つまり生産設備に投資しても、元が取れない)ことから計画を見直すことになったわけですね。

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これにつき、R&D担当役員のミヒャエル・シュタイナー博士はこう説明しています。

「セルフォースは高性能セルの開発とパイロット生産に成功しましたが、世界的な需要不足により、大規模生産を採算に合う形で実現することは困難です。」

そのため、セルフォースは今後「研究開発型組織」として存続し、VWグループのPowerCoから開発案件を受託することで数駅構造を確率する予定だとされ、また、影響を受ける(つまり解雇される)従業員には社会的責任を持ったサポートが提供され、必要に応じてPowerCoへの雇用機会も紹介されることとなるもよう。

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今後の展望:高性能バッテリーとハイブリッド戦略

ポルシェは、セルフォースで培った技術を引き続き活用し、次世代の高性能バッテリー開発に注力して行くと述べていて、特に、2025年3月に買収したV4Smart GmbH & Co. KGのリチウムイオンラウンドセルはすでに911 GTSのブースターセルとして実用化されており、今後はパフォーマンス・ハイブリッド仕様の911シリーズにも展開される予定です。

さらにポルシェは今後も、内燃機関・ハイブリッド・EVの3種類の駆動方式を2030年代まで全セグメントで併売する戦略を維持し、柔軟な商品展開で電動化シフトを進めていくとしています。

つまり、苦境に陥ってはいるものの、ポルシェは依然として電動化において先進的な存在であり、今後の展開にも期待がかかるという状況に変わりはないものと見られます。

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参照:Porsche

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