
| フェラーリのV6エンジンはどのようにして誕生し、どう現代にまで伝わっているのか |
エンツォ・フェラーリの息子ディーノの遺志から生まれたV6
「フェラーリといえばV12」と多くの人が考えるかもしれません。
しかし実際には、V6もまたフェラーリを象徴する重要な存在であり、その背景には、創業者エンツォ・フェラーリの息子であるアルフレード“ディーノ”フェラーリの情熱と悲劇的なストーリーが存在します。
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1956年、病床にあったディーノは、当時フェラーリのチーフエンジニアであったヴィットリオ・ヤーノと共に新しいV6エンジンの設計構想を練り上げることになるのですが、志半ばにて他界してしまうことに。
しかしディーノの死後、その遺志を継いで完成したのが「ディーノV6」。
1.5リッターからスタートしたこのエンジンは進化を続け、1958年には排気量を2.4リッターに拡大した後にF1マシン「246 F1」へと搭載され、そして同年、マイク・ホーソーンがフランスGPで優勝し、フェラーリのV6はついにF1での初勝利を挙げます。
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シャークノーズとV6の黄金期
1961年には「156 シャークノーズ」が登場。
120度のバンク角を持つV6は低重心を実現し、フィル・ヒルが同年のワールドチャンピオンに輝きますが、コンパクトで剛性の高いV6は、当時のフェラーリをライバルである英国勢から守る強力な武器として機能することに。
その後、V6はスポーツカー分野でも活躍しディーノ196 S(1958年)、246 S(1960年)、そして1965年の206 SPなど”軽量で俊敏なマシン”に搭載され、タルガ・フローリオやヒルクライムでの輝かしい戦績が記録されています。
フェラーリ初の市販V6「ディーノ」
1967年になるとフェラーリ初のミドシップ市販車「ディーノ206 GT」が登場。
ただし“フェラーリ”のバッジは与えられず、あくまで「ディーノ」として販売されており、後の246 GTでは排気量が2.4リッターへ拡大され、より扱いやすくなりますが、どちらも高回転域で真価を発揮するレーシングスピリットを備えた名車です。
206 GTはわずか150台のみの生産に留まっていて、希少性から現在でもコレクター垂涎の存在となっていることでも知られる一方、246 GTは3,500台以上が生産され、より多くの人々に「フェラーリのV6体験」を届け、ディーノの名を知らしめることに貢献しています。
現代に受け継がれるV6の魂
その後、長らく市販車から姿を消していたV6ですが、2022年の「296 GTB」でついに「復活」。
「156 シャークノーズ」に積まれたV6エンジン同様の120度バンクを持ち、しかし排気量は3.0リッター、さらにはツインターボで武装済み。
加えてエレクトリックモーターを組み合わせることでシステム出力は830馬力にも達しており、F1由来のハイブリッド技術を採用することでV12エンジンにも匹敵するパフォーマンスを実現しています。
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さらに2023年、フェラーリの新型ハイパーカー「F80」では、WEC参戦車両からフィードバックされたV6ターボハイブリッドを搭載。
ル・マン24時間レース制覇の実績を持つユニットが”そのまま”最強のロードカーを支えているわけですね。
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こうしてフェラーリV6の物語は、1950年代の病床で描かれた一つの夢から、現代のハイパーカーにまでつながることとなるのですが、この「小さな」6気筒エンジンは、今や跳ね馬のDNAを最も力強く体現する存在である、と言ってもいいのかもしれません。
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参照:Ferrari