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時代を「あまりにも先取りしすぎたクルマ」、アウディ A2とは一体何だったのか?当時は評価されなかった悲運の珍車、A2がいま再評価される理由とは

時代を「あまりにも先取りしすぎたクルマ」、アウディ A2とは一体何だったのか?当時は評価されなかった悲運の珍車、A2がいま再評価される理由とは

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| 時代の先駆者:アウディ A2 誕生25周年記念 |

アルミボディ採用の「3リッターカー」伝説とは

今から25年前に登場し世間の意見を二分したクルマ、それがアウディ A2。

(当時としては)革新的なアルミニウムボディを採用したこのコンパクトカーは、軽量で空気抵抗に優れ、燃費にも非常に優れ、5種類のエンジンバリエーションが提供されましたが、特にA2 1.2 TDIは、世界初の4ドア3リッターカー(燃料消費量100kmあたり3リットル未満)として大きなセンセーションを巻き起こしています。

しかしその一方、販売は当初の期待には届かず、アウディは約5年間で176,377台を生産するにとどまり、結果的に2005年に生産を終了しましたが、その革新性は色褪せておらず、むしろ現在、A2は「セカンドキャリア」として、価値の安定したモダンクラシックとして熱狂的なファンに愛されるに至っています。

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究極の軽量化:アルミボディ「ASF」の採用

1990年代初頭、フォルクスワーゲングループとアウディは「3リッターカー」を開発目標として掲げており、デザイナーたちは、ネッカーズウルムにあるアルミニウムセンターの専門家と緊密に協力し、1995年5月にはコンセプトスタディ「Ringo」を発表。

これは、アウディ スペース フレーム(ASF)技術をコンパクトカーに応用したもので、先行するA8のASFよりも構造が簡素化されていたことが特徴です。※ASF登場初期は、アルミニウム・スペースフレームと呼ばれていたが、後にアルミ以外の素材も使用するようになったため、アウディ スペース フレームと改名されている

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こんなコンセプトカーもあった。「オールアルミ」表現のため全身ポリッシュ仕上げの「アウディASFコンセプト」

アウディが1993年に発表した「ASFコンセプト」。 「ASF」とは「アウディスペースフレーム」の略で、アウディがアメリカのアルコア社と開発を進めてきた軽量プラットフォームを指し、アルミの押出材と鋳造 ...

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そして1999年9月のIAA(フランクフルト国際モーターショー)においてm市販化に向け開発されたアウディ A2が世界初公開。

そしてこのA2は、近代の自動車史においてボディが完全にアルミニウムで作られた初めてのコンパクトカーでもあったわけですね。

  • ボディシェルの重量:ドアとテールゲートを含めてわずか約153kg。これは、従来のスチールボディを持つ同等のセダンのボディシェル重量の約60%にしか過ぎなかった
  • サイズと空間:全長3.83m、全幅1.67m、全高1.55mという小さな外寸にもかかわらず、乗員には十分な室内空間を提供していた
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世界初の4ドア3リッターカー「A2 1.2 TDI」

アウディ A2ファミリーの中でも特に象徴的なのが、1999年末に発表され2001年3月に発売された「A2 1.2 TDI」。※生産期間中、アウディ A2には2種類のガソリンエンジンと3種類のディーゼルエンジン(ポンプノズル直噴式3気筒ユニット)が提供されていた

  • 驚異的な燃費:最高出力61PSを発揮し、燃料消費量は100kmあたりわずか2.99リットルのディーゼル燃料しか必要としなかった
  • 徹底的な軽量化:直噴ターボディーゼルエンジンもすべてアルミニウム製。特殊なアルミ鍛造軽量ホイールや、重量を最適化したリアシートなどにより、ベーシックモデルと比べてさらに135kgの軽量化を達成し、車両重量は855kgに抑えられていた
  • 驚異的な空力性能:エンジニアは、フロントの吸気口を部分的に閉鎖し、タイヤのサイドウォールに溝を設けるなどの工夫により、ベースモデルでも優秀だった0.28という空気抵抗係数(Cd値)を、0.25という驚異的な数値まで削減することに成功
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特別仕様車と現代の評価

2002年には、最高速度200km/h以上を可能にする1.6リッター FSIエンジンが追加され、2003年3月からはイモライエロー、ミスミレード・パールエフェクトなどの鮮やかな専用色を採用した特別仕様車「colour.storm」が登場し、これはルーフやホイールアーチトリムなどのマットブラックのディテールとのコントラストが際立つという(アウディらしからぬ)オシャレなモデルです。

ただしこのA2も「いいところばかり」ではなく、当初批判を浴びたのは「高すぎる」ということで、これは「アルミニウムボディを採用した専用設計車」でもあったため、「やむをえない」部分であったのかもしれません。

そのほか「デザインが個性的(奇抜)すぎる」といった意見もあったものの、約四半世紀が経った今、「この小さなスペースの魔術師」は、その経済性、信頼性、そして魅力的なデザインによって、多くのドライバーから愛されるカルト的な名車としての地位を確立しています。

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エンジンモデル名生産期間生産台数
1.2L TDI 45kW / 61PSAudi A2 1.2 TDI2000–20056,555
1.4L 55kW / 75PSAudi A2 1.42000–200581,649
1.4L TDI 55kW / 75PSAudi A2 1.4 TDI2000–200569,676
1.4L TDI 66kW / 90PSAudi A2 1.4 TDI2001–20057,416
1.6L FSI 81kW / 110PSAudi A2 1.62002–200511,081
合計176,377

往々にして、「時代の先駆者」は理解されにくい

多くの場合、「珍車」は現役当時あまり売れず、しかし後年になって評価される傾向にありますが、このA2も「その例に漏れない」存在なのかもしれません。

そして「後になって再評価される」クルマはつまるところ「当時、先に行き過ぎていて人々の理解が追いつかなかったクルマ」であるとも考えられ、今になってようやくその試みや意図が理解されるようになった、ということなのでしょうね。

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参照:Audi

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