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| ポルシェ、モータースポーツ戦略を再編:IMSAとフォーミュラEの2本柱に集中 |
ル・マンでは「優勝に手が届く」パフォーマンスを誇っただけに残念である
今年のル・マン24時間レースでは王者フェラーリを徹底的に苦しめたポルシェですが、優勝に手が届きそうな位置にいながらも「WEC撤退」を電撃発表。
ポルシェによれば「モータースポーツにおける包括的な再編の一環として、今後のファクトリープロジェクトを2つに集約する」とのことで、その2つとは「北米のIMSA ウェザーテック・スポーツカー選手権へのポルシェ 963での参戦」、および「ABB FIA フォーミュラE世界選手権へのポルシェ 99X Electricでの参戦」だとアナウンスされています。
これにより、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは、現在のシーズンをもってFIA 世界耐久選手権(WEC)へのファクトリー参戦を終了することとなり、ポルシェのパートナーであったペンスキーにとっても大きな痛手となりそうですね。
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WEC撤退の理由は「現在の状況により」
ポルシェAG開発担当取締役のミヒャエル・シュタイナー博士は、「現在の状況により、今シーズン限りでWECへの参戦を継続しないことを大変残念に思っています」と述べる一方、新たな戦略の意義を強調していますが、「現在の状況」についてはその中身に触れられておらず、しかし中国での販売減少、そして北米市場におけるトランプ関税による困難であると推測可能。
もちろんポルシェとしては苦渋の決断であったのだと思われますが、様々な事情を考慮した取捨選択の結果、すでに一定のプレゼンスを構築し、さしあたっての危機に直面していない欧州市場よりも、「今後嵐の予感しかない」北米市場での存在感の確保、そしてフォルクスワーゲングループあげて推進中の「電動化」を優先したということなのかもしれません。※ポルシェはカスタマーサポートを続けると発表しているので、もしかするとカスタマーチームからのWEC参戦があるかもしれない
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1. 北米市場と耐久レースの重要性:IMSAへの注力
IMSA ウェザーテック・スポーツカー選手権への参戦は、ポルシェにとって北米市場と耐久レースの重要性を改めて示すものであり、ポルシェは同シリーズについて以下のようにコメントしています。
- ハイライトレース:デイトナ24時間レースを含むIMSAシリーズでの活動を通じ、ポルシェのブランドと耐久レースの伝統を維持
- ポルシェ 963:LMDh規定のハイブリッドプロトタイプである963をIMSAに集中投入し、総合優勝を目指す
- カスタマーレーシング:IMSAとフォーミュラEの2つのファクトリー参戦に加え、カスタマーレーシング(顧客への車両提供・サポート)は、引き続きポルシェのモータースポーツ戦略の重要な柱であり続ける
2. 電動化技術の開発拠点:フォーミュラE
そしてフォーミュラEへのファクトリー参戦は、ポルシェの高性能EV技術開発のための開発環境としての役割を担うこととなるもよう。
- 技術的知見:ポルシェはフォーミュラEという競争の激しい環境で、すで電動プロダクションスポーツカーのための貴重な知見を得ており、これを継続する意向
- 高性能化の推進:前出のミヒャエル・シュタイナー博士は「この競争環境において、我々は高性能車両の開発をさらに推進し続ける」とコメント
- 将来への布石:特に、シーズン13(2026/27年)に導入される第4世代のフォーミュラEマシンは、さらなる開発の自由度がもたらされ、これにより、ポルシェはフル電動量産車に対する”より急進的な”学習曲線を達成できると期待
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3. モータースポーツの伝統と未来
ポルシェにとって、モータースポーツは常にブランドの重要な要素であり、将来の技術開発プラットフォームとして活用されていますが、ポルシェ モータースポーツにて副社長を務めるトーマス・ラウデンバッハ氏は以下のように述べ、残された「2つ」の分野において、これまで以上に貪欲に勝利を追求してゆくこととなりそうですね。
「我々はモータースポーツを未来のテクノロジーのための場として利用し、我々のスポーツカーの潜在能力を示すために活用しています。北米IMSAシリーズのポルシェ 963と、フォーミュラE世界選手権のポルシェ 99X Electricにより、我々は今後も総合優勝を目指して戦い続けます。それが我々の伝統であり、焦点です。」
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