
| 「ローンチコントロール」が抱える難題:集中を削ぐ複雑な操作 |
フェラーリが出願した特許によって「一発で課題が解決」
現代のスポーツカーやスーパーカーには、ほぼ例外なくローンチコントロール(Launch Control)が搭載されていますが、これは、車両に組み込まれた高度なドライビング管理ソフトウェア(トラクション、トルク、パワー)を瞬時に展開し、理論上最速のスタートを可能にするための機能です。
しかし、その機能の優秀さとは裏腹に、ローンチコントロールを「起動するプロセス」がしばしばドライバーにとって煩雑で集中を削ぐ要素となってることも指摘されており、たとえばダッシュボード上の滅多に使わない物理ボタンを探したり、走行中にタッチスクリーンメニューを深く掘り進む必要があったりと、起動の確認自体がドライビングに対するディストラクション(注意散漫)を引き起こすリスクを内包しています。※ある意味では、この複雑な動作によって、いつでもどこでもローンチコントロールを作動させ、事故を量産しないように抑制しているのかもしれない
フェラーリの解答:頭上の「コックピット・ハンドル」
そして今回、自動車情報メディア『CarBuzz』が報じたフェラーリの特許出願は極めてユニークかつアナログな解決策で、同社はルーフ(天井)にマウントされたプルハンドルを用いてローンチコントロールを制御するシステムを提示しており、このシステムの操作手順は非常に直感的。
- ドライバーがブレーキペダルを踏み込む。
- 頭上にあるハンドルを引き下げる。
- ローンチコントロールが作動すると、ハンドル自体に埋め込まれたライトリングが点灯し、同時に車内のアンビエント照明やトランスミッションのインジケーターランプも連動して発光。
これにより、ドライバーは視線を路面から大きく外すことなく、周辺視野で起動を確実に確認でき、その後ドライバーは通常通りアクセルを全開にし、ブレーキを解放して発進することに(発信後、プルハンドルは自動で元の位置に戻る)。
フェラーリは、このハンドルを事故時の安全上の懸念とならないよう設計している点も特許図面に盛り込んでおり、これを見るに「かなり実現性が高い」特許なのかもしれません。
アナログ操作がもたらす「感覚的なメリット」と「経済的メリット」
フェラーリのルーフマウント式「ローンチコントロール起動システム」は、「気分を盛り上げる」「カッコいい」といったギミック(仕掛け)に加え、重要なメリットを複数提供し、主なものとしては以下の通り。
1. ドライビングへの集中維持(安全性とパフォーマンス)
最も大きなメリットは「ドライバーの集中維持」。ボタンやメニューを探す手間がなくなり、操作が迅速かつ直感的になることでドライバーは路面への注意を最大限に払うことが可能となり、これは「ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)」の観点からも、安全性を高め、最高のパフォーマンスを発揮するための理想的なアプローチと言えます。※フェラーリはHMIを非常に重要視し、そのための特許出願も数多い
2. アナログな操作感(エモーション)
航空機やSF映画の宇宙船のコックピットを彷彿とさせるこの操作は、ドライバーに「特別な儀式」としての高揚感を提供。デジタル化が進む現代の車において、物理的でアナログな操作がエモーショナルな体験を増幅させる要素として機能することが想定されます。※できればなんらかの音声によるアナウンスを併用し、さらに気分を盛り上げてほしいものである
3. コスト削減とシンプル化(経営戦略)
驚くべきことに、このシステムは現行の複雑な配線やタッチスクリーンへの深い統合を必要とせず、(スタンドアローンとして機能するため)車両への組み込みがよりシンプルで安価になる可能性も。利益率の追求はフェラーリにとっても重要であり、この新しいシステムは「クールであること」と「製造の経済性」という、相反する要件を両立させようとする戦略的な知財保護の一環とも見ることができます。
フェラーリが開発を続ける未来技術のフロンティア
ローンチコントロールの特許以外にも、フェラーリは未来のモビリティを見据えた様々な技術で知財を固めており、単にクルマの性能を向上させるほか、「より運転に集中できる環境」を作り上げること、「維持をより簡素化するもの」など、オーナーにとっても大きなメリットを持つ特許出願も多数見られます。
- 異形ピストンエンジン: エンジンの小型化に貢献し得る長円形(Oblong-shaped)ピストンを備えた内燃機関。
- 自動ブレーキソフトウェア: コストのかかるバンパー修理を避けるための衝突回避自動ブレーキシステム。
- EV向け技術: 2030年までに販売の20%を占めるとされる電気自動車(EV)向けにも、驚きの前輪駆動システムや、シミュレートされたギアチェンジ機能と人工的なノイズ発生システムなど、「フェラーリらしさ」をEVでも再現するための技術特許を申請。
留意点
特許申請はあくまで知的財産権を保護する手段であり、将来の製品化を確約するものではなく、しかしこれらの特許群は、「パフォーマンスとエモーション」というフェラーリの核となる価値観を、いかに「次世代技術」や「新たなドライビング体験」へと昇華させていくかを示す、貴重なロードマップとして捉えることが可能である
-
-
フェラーリ、段差や小さな障害物を検知して自動的にブレーキをかける特許を出願。フロントバンパー保護システムとして機能?
| もちろん、フェラーリが出願するすべての特許が「実際に採用」されるわけではない | フロントスプリッター破損、もう心配なし? スーパーカーオーナーなら誰もが経験する悩み、それが低すぎる車高ゆえのフロ ...
続きを見る
あわせて読みたい、フェラーリ関連投稿
-
-
フェラーリが「巨大、かつ自由に角度を変更でき、取り外して持ち歩ける」車載ディスプレイ特許を出願。「車内エンターテイメントがないと助手期の人が退屈するので」
Image:United States Patent and Trademark Office | フェラーリは「助手席に座る人もドライバーと同じ体験をできるよう」助手席ディスプレイをいち早く取り入れ ...
続きを見る
-
-
フェラーリがさらに進化した「左右スライド式」ステアリングホイール構造を特許にて出願。荒唐無稽なようにも思えるが、どこかで本当に実装してくるかも
| フェラーリの場合、いずれの特許の内容も「特定の目的」に集約されている | これらが即座に、そしてそのまま市販車に採用されるわけではないが、進む方向を示唆していることは間違いない さて、フェラーリは ...
続きを見る
-
-
フェラーリが「回転式大型ディスプレイ」に関する特許を出願。「近年、大型画面の需要が拡大しているが、インテリアと調和せずデザイナーの仕事を台無しにすることがある」
| 意外なことではあるが、フェラーリはスポーツ走行以外のユーザーエクスペリエンス向上にも熱心である | 実際のところ、現行モデルの液晶メーターはスポーツカーセグメント「最大」である さて、様々な特許を ...
続きを見る
参照:CARBUZZ
















