
| ホンダ・プレリュード、Type R仕様を見送った理由とは? |
プレリュードと「タイプR」とはキャラクター的にマッチしない
ホンダが発表した新型「プレリュード(Prelude)」がスポーティクーペとして注目を集めているのは既報の通り。
その一方で、「なぜType Rのような本格スポーツ仕様にしなかったのか?」という疑問も多く聞かれます。
今回、ホンダが栃木県にあるテストコースでメディア向けの試乗イベント「Honda Tech Workshop」を開催しており、そこで プレリュード開発責任者である斉藤義治(さいとう よしはる)氏に直接インタビューを行ったカーメディアによって「その理由」、そしてホンダの新戦略と将来の展望が明らかになっています。
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Type Rの足回りを多数流用、だが“フルType R仕様”ではない
新型プレリュードは、シビック・タイプRのサスペンションやステアリング機構の多くを流用しており、具体的には以下の主要コンポーネントがType R由来です。
- デュアルアクシス・フロントサスペンション
- ステアリングラック
- アダプティブダンパー
- 13.8インチブレーキローター
- ブレンボ製4ピストンキャリパー
ただし、セッティングは「GTカー寄りの快適志向」。
ダンパーはより柔らかく調整され、ステアリングギア比はType Rより3%クイックに設定されています。
一方でリミテッドスリップデフ(LSD)など、さらなるType R要素の採用は見送られ、斉藤氏が説明する理由は以下の通り。
「(LSDの)装着は技術的には可能です。しかし、このモデルにおいては必要と判断しませんでした。」
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プレリュードがアコード系プラットフォームを捨てた理由
かつてプレリュードは「アコード」をベースにしており、そのため、今回の「シビック系プラットフォーム採用」には一部ファンから「コストダウンでは?」との批判もあるもよう。
しかし、斉藤氏はこれを明確に否定し、むしろ「最大限の性能を引き出すための進化」だと強調します。
「以前の世代ではアコードがパフォーマンスベースとして最適でした。
しかし現在ではType Rこそが“性能の基準”です。Type Rのサスペンションはアコードには適合しません。このプラットフォームこそ、シャシー性能を最大限に引き出せる最良の選択なのです。」
近年、アコードは快適性を重視した上級セダンへとシフトし、パフォーマンス志向の役割はシビック/Type Rが担っています。
その結果、プレリュード復活のベースとして、Type Rの開発成果を直接流用できる構造としてシビック系プラットフォームが選ばれたのは当然の帰結かもしれませんね。
あえて「Type R」にしなかった理由──“日常で楽しめるGT”を目指す
では、なぜホンダは「タイプRの開発成果を直接流用できる」プラットフォームを採用しながらフルType R仕様を避けたのか?
斉藤氏はその理由を次のように説明します。
「このモデルでは、スピードやパワーだけに特化するのではなく、どんなシーンでも“楽しさ”を提供したかったのです。
パワーを追求するのなら、別の方向性になります。プレリュードは、日常でも気軽に走りを楽しめる存在を目指しました。」
つまり、ホンダはこのプレリュードを“ピュアスポーツ”ではなく、 グランドツアラー(GT)としての性格を重視しているということに。
硬派なType Rとは異なり、より幅広い層が楽しめる「上質な走りの快楽」がテーマとなっているそうですが、これはターゲットの一部が「若者」ではなく、1980-1990年代に「実際にプレリュードに乗っていた」人々が対象であるという事実にも由来するのかもしれません。
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将来的にはType R化も? 開発責任者は否定せず
ただし斉藤氏は「タイプR化」の可能性を完全には否定しておらず、LSDなどのハードウェアは後から容易に追加できる設計となっており、出力が200馬力を超える将来の高性能バージョンでは”搭載の必要性も出てくる”と示唆しています。
現時点でのプレリュードは2.0リッター直4ハイブリッド(約200ps/32kgm)を搭載し、 eCVTと前輪駆動を採用。
もし将来的に出力向上モデルが登場すれば、「プレリュード・タイプR」誕生の可能性も十分考えられますが、ハイブリッドパワートレーンとマニュアル・トランスミッションとの組み合わせは実現が難しく、よって「プレリュードのハイパワー版」が登場したとしても、それは先代同様にタイプRではなく「タイプS」を名乗るのかもしれませんね。
まとめ:プレリュードは“走りの原点”を再定義するモデル
・シビック・タイプRの主要部品を多数流用
・アコードではなくType Rプラットフォーム採用
・LSDやターボ非採用は“快適GT志向”のため
・将来的にType R派生モデル登場の可能性も
ホンダが新生プレリュードに込めたのは、パワーよりも「走る喜び」。
これは、往年のプレリュードが持っていた「美しいクーペとしての品格」と「誰でも楽しめるハンドリング」を現代的に再解釈したものといえそうです。
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