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テスラの販売が欧州で半減。BYDが「テスラの「3倍の台数」を売って覇権を握る「地殻変動」が起きる。なお欧州の電動化比率は6割に

テスラ

| 中国勢の大逆襲。テスラの牙城が崩れた欧州市場の衝撃的な真実とは? |

「価格優先」にて中国車が選ばれている可能性が高く、この流れはもはや止めようがない

欧州の自動車市場で歴史的な地殻変動が起きいると話題になっており、かつてEV市場を牽引していたテスラ(Tesla)の販売台数が急落する一方、中国の自動車メーカー、特にBYD(比亜迪)やSAIC(上海汽車)が驚異的な成長率で市場シェアを拡大していることが明らかに。

直近で発表された統計を見てみると、2025年10月、BYDはテスラの約3倍にあたる車両を欧州で販売し、結果的に中国勢の合計シェアは6.8%に到達。

この数字は、単なる販売競争を超え、自動車産業のサプライチェーンと勢力図が根底から覆りつつあることを示しています。

ここでは、この「テスラ失速」と「中国勢の急拡大」の裏側にある要因を探ってみたいと思います。

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サマリー:欧州市場で起きている4つの変化

  • テスラの販売急落: 2025年10月の欧州販売台数が前年比48.5%減となり、ポルシェにも抜かれる事態に
  • BYDの驚異的成長: 同月には欧州販売台数が前年比206.8%増を記録し、テスラの約3倍となる17,470台を販売
  • 中国勢の勢力拡大: 中国ブランド全体の欧州市場シェアが6.8%に到達。SAIC(MGなど)も販売を大幅に伸ばす
  • EVは市場をリード: 欧州の新車販売台数全体は1.4%増で、BEV(バッテリーEV)のシェアは16.4%に拡大。特にBYD Dolphinが中国勢BEVのベストセラーに

BYDとSAIC:中国ブランドの圧倒的な急拡大

詳細:販売台数の衝撃的な比較

中国メーカーは今やニッチな存在ではなくなり、欧州連合(EU)、イギリス、EFTA(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)を含む地域全体で市場の主要プレーヤーとしての地位を確立しています。

なお、欧州(EU)では対中国車関税が発動していますが、それでもここまで販売が伸びるということは「いまだ中国車の価格優位性は揺らいでいない」ということなのでしょうね。

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マクサス
ついに中国製EVに対する欧州の追加関税発効、報告書の中では助成金のみならず「融資条件、用地取得費用、販売奨励金」など多岐にわたる補助があったことが判明

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2025年10月 欧州主要自動車メーカー販売実績

メーカー2025年10月 販売台数前年同月比 成長率市場シェア(中国勢合計)
BYD17,470台+206.8%約1.6%
SAIC (MGなど)23,860台+35.9%約2.1%
テスラ6,964台-48.5%約0.6%
中国ブランド全体約75,000台非公開6.8%

(注:SAICはBYDを上回る台数を販売しており、中国勢の成長を牽引している)

BYDは10月だけで前年同月比206.8%増という驚異的な伸びを見せ、テスラの販売台数(6,964台)を遥かに凌駕。

また、MGブランドなどを展開するSAICも10月の販売台数が23,860台に達し、中国勢の最大手として市場を牽引しています。

BYD Dolphinが示す「勝ちパターン」

中国ブランドが欧州で成功している理由の一つは「バッテリーEV(BEV)のラインナップの多様化と競争力のある価格設定」であると分析され、特に、BYDの小型EVである「BYD Dolphin(ドルフィン)」は、中国ブランドのBEVの中でベストセラーに。

その人気の背景には、「Euro NCAP」で最高評価の5つ星を獲得するなど、高い安全性と優れたバリュー・フォー・マネーが両立している点が指摘されています。

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テスラ急落の深刻な要因

テスラにとって2025年10月は悪夢のような月となり、販売台数は前年同月比で48.5%減の6,964台へと急落し、量販メーカーであるにもかかわらず、プレミアムカーメーカーのポルシェ(7,653台、-26%)にも販売台数で抜かれるという厳しい結果に。

失速の裏側にある複数の要因

テスラの販売減少については以下の4つの要素が報じられていますが、どの要素がそれくらい関係しているのかは判断が難しく、少し前までは「イーロン・マスク氏のイメージ的問題」が大きいとされていたものの、今ではそれは「複数ある要因のうちのひとつ」でしかなく、つまりテスラは様々な問題を抱えているということになりそうです。

  1. 製品ラインナップの陳腐化:
    • テスラは長期間にわたり主力モデル(Model 3, Model Y)の大幅なモデルチェンジを行っておらず、しかしその間には中国メーカーや欧州の伝統的なメーカーが次々と新型EVを投入して競争が激化※モデルYのフェイスリフトが不発であったことを考慮すると、根本的なモデルチェンジが必要なのかも
  2. 激化する競争環境:
    • BYDだけでなくXpeng、Zeekr、MGといった中国メーカーや、BMW、VWなどの伝統的欧州メーカーもEVラインアップを強化しており、市場の選択肢が爆発的に増加している
  3. 政治的・イメージ的な逆風:
    • イーロン・マスクCEOの政治的言動が、特に北欧諸国(スウェーデン、デンマークなど)の消費者の中で反発を生み、ブランドイメージに悪影響を与えている可能性が指摘される
  4. 価格帯の脆弱性:
    • テスラは純粋なBEVのみのラインナップであり、価格に敏感な層に対応できるプラグインハイブリッド車(PHEV)を持たないことが、幅広い消費者層を取り込んでいる中国勢に比べて不利に働いている
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欧州市場全体のトレンド:ハイブリッドが依然最強

上述の通りテスラは「BEVのみ」のラインアップであり、それが販売の足かせになっているとも言われるものの、BEV市場は38.6%も成長しており、しかしその中でテスラの販売が縮小しているということは「テスラが市場にキャッチアップできていない」ことを意味します。

パワートレイン別シェア(2025年10月まで)

パワートレイン市場シェア(1〜10月)前年比 成長率
ハイブリッド(HEV)34.6%-
ガソリン車27.4%-
バッテリーEV (BEV)16.4%+38.6% (10月単月)
プラグインハイブリッド (PHEV)9.1%+43.2%
ディーゼル車9.2%-24.5%
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新車登録台数全体は1.4%増とわずかな伸びではあるものの、電動化の流れが明確にあらわれており、上述の通りBEVの販売が伸びていることに加え、ハイブリッド車(HEV)が依然として「最も人気のパワートレイン(34.6%)」であることからもその傾向を見て取れますね。

これは燃費と利便性のバランスを求める消費者に支持されているためだとも思われますが、PHEVも43.2%増と大きく伸びていることからも「電動化の多様な選択肢」が欧州における電動化を牽引しているように思われます(電動化比率は驚くべきことに60%に達している)。

結論:EV市場は「テスラ一強」から「多極化」へ

2025年10月の欧州市場のデータは、EV市場がもはやテスラを中心とした「一強時代」ではなく、価格競争力と製品の多様性を持つ中国メーカー、そして伝統的なブランドが入り乱れる「多極化時代」に突入したことを明確に示しているのかもしれません。

特に、BYDのような中国勢は、迅速な製品投入とコスト競争力、そして高い安全性を兼ね備えたモデル(Dolphinなど)を投入することで、欧州の消費者の心を掴み始めていることがわかり、そして今後さらにインフレが進み、可処分所得が減少するであろうことを考慮すると「この流れは止めようがないトレンド」なのかもしれませんね。

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参照:Carscoops

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