| アイオニック5は「テスラキラー」最右翼と見られるが |
さて、先日は「韓国にて、ヒュンダイ(ヒョンデ)アイオニック5の今年生産分が1日で完売」とお伝えしましたが、今回は欧州でも大人気というお話。
具体的な数値で言えば、ヒュンダイ・アイオニック(IONIQ)5は欧州市場において236,000件の申し込みがあり、初回限定モデルの「ヒュンダイ・アイオニック5”プロジェクト45”」は予約開始後、24時間で予定台数(3,000台)の3倍以上もの登録があったとのこと。
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なお、この「プロジェクト45」とは、アイオニック5がコンセプトカー”45EVコンセプト”として発表された際の名を冠したモデルですが、もともと45EVコンセプトはヒュンダイが「45年前に発表した、ヒュンダイ・ポニー・クーペ(ジウジアーロデザイン)」へのオマージュとして企画されています。
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ヒュンダイ・アイオニック5はゲームチェンジャーに?
なお、この236,000件というのは「相当な数字」。
どれくらいに相当するのかというと、欧州市場における2020年EV(電気自動車)累計販売だったのがフォルクスワーゲングループ(ID.3に加え、アウディe-tron、ポルシェ・タイカンも含まれる)の172,000台、次がルノー・日産・三菱の135,000台、そして3番手はテスラの96,000台。
つまりヒュンダイ・アイオニック5の予約台数236,000台が「すべて今年中に納車できれば」、2021年にヒュンダイが欧州市場におけるEV販売No.1に躍り出る可能性も出てくるほどの台数ということになります(2020年だと、ヒュンダイ/キアは95,000台を売って4番手。アイオニック5はこの2.4倍を予約で集めている)。
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ヒュンダイ欧州の副社長、アンドレアス・クリストフ・ホフマン氏によると「超急速充電と航続距離の長さが評価されている」とのことですが、「突出した個性が欧州の顧客に評価されている」とも。
たしかにこの「個性」がウケたということは疑う余地がなく、テスラ「サイバートラック」しかり、個性的なEVに注目が集まる傾向が強く感じられます。
なお、EVというと「環境に優しい」ということから、丸みを帯びた自然に調和するエコフレンドリーなデザインを意識するメーカーも多く、しかし消費者が求めるのは「デジタルを強く意識させる」無機質でシャープなデザインだったということなのかもしれません。
ヒュンダイ・アイオニック5はこういったスペックを持っている
ヒュンダイ・アイオニックに積まれるバッテリーは58kWhと72.6kWh。
モーターについてはシングルそしてデュアルが用意され、72.6kWhバッテリー+4WDの組み合わせでは出力302HP、0−100km/h加速性能は5.2秒。
もっとも航続距離が長いのは72.6kWhバッテリー+シングルモーター(214HP)となり、こちらの一回あたりの走行可能距離は470〜480km(WLTP)。
エントリーモデルは58kWh+シングルモーターレイアウトを持ち出力は167HP、0−100km/h加速は8.5秒だとアナウンスされています。
現在正式に(欧州での)車両価格は公表されておらず、しかしベースモデルだと500万円台(補助金を計算に入れて)で購入できると言われます(初回限定モデルのアイオニック5”プロジェクト45”の価格は58,995ユーロ=日本円で約760万円、イギリスだとベースモデルが48,000ポンド~だと発表されている)。
つまり絶対的な価格だけを見れば安い車ではないものの、バッテリー容量を考慮すると「割安」であることも間違いはなく、実際に韓国ではテスラ・モデル3よりコストパフォーマンスが優れるとされており、韓国内では国や自治体の補助金を計算に入れるとアイオニック5は4000万~4750万ウォンで購入でき、対するテスラ・モデル3ロングレンジの実勢購入価格が4900万ウォンだという報道もあるようです。
加えて、アイオニック5には「超急速充電(800V)」対応という武器があり、これはバッテリー容量5%から80%までを18分、100km走行可能な容量を5分でチャージできるというもの。
よって、アイオニック5の成功は「個性的なデザイン、割安な価格、使い勝手の良さ」という要素によって達成されたということになりそうです。
ヒュンダイ・アイオニック5はテスラキラーに?
そこで現在話題となっているのが、このアイオニック5は「テスラキラー」足りうるのか?ということ。
そのデザイン、EVとして性能、価格、充電能力を考慮すれば「十分に(テスラで最も売れている)モデル3、そしてモデルYの対抗たりうる」と考えられます。
ただしこれについてはいくつかの懸念があり、最も大きなものは「充電ネットワーク」。
いかに「18分で80%まで」充電できる800Vアーキテクチャを持つと言えど、それに対応する充電器がなければ話にならず、この充電ネットワークの拡充がアイオニック5販売の成否を握るだろう、と考えられているようです。
ちなみにテスラ・モデル3/Yは400Vアーキテクチャを採用しますが、これは800Vよりも充電スピードが劣るものの「充電スタンドが相当数あり」、しかも現時点で充電スピードは問題となっていない、とも。
つまりアイオニック5の売り物のひとつである800V DCチャージングについては「そもそも求める人が少なく、充電スタンドが不足していればユーザーのメリットになりえない」と指摘する向きもあるようですね。※充電器も高価なので普及しにくい
こういった意見を鑑みるに、「初年度は爆発的に売れるが、実際の利便性はテスラのほうが優れる」ためにアイオニック5が大量に中古市場に出回ることになり、それによって中古相場が大きく下がって新車販売にも影響を与える」というサイクルも予想されます。
テスラの充電器「スーパーチャージャー」はその台数が豊富なこと、そしてテスラのクルマは売却価格が”非常に”高額なことでも知られますが、「買う」だけではなく「使う」「売る」ところまで考えると、やはりテスラに(まだ)分があるのかもしれません。
ヒュンダイ・アイオニック5の実車も目撃
なお、ヒュンダイ・アイオニック5はすでに実働車(プリプロダクションモデル?)も存在しており、その細部を捉えた動画も公開されています。