| テスラの「スーパーチャージャー」はこれまでに想像しなかったような利益をテスラにもたらすことになりそうだ |
自動車メーカーのNACS採用に続き、スーパーチャージャーの購入が充電サービス業者のトレンドとなるのかも
さて、英国の石油メジャー、BP(旧ブリティッシュ・ペトロリアム)がテスラのスーパーチャージャーを大量に購入するという「1億ドル規模の」契約が締結されたとの報道。
現在の世の中の流れだと「ガソリンエンジン搭載車の販売が徐々に禁止される」ことになり、よってガソリンの使用量も徐々に減ってくるものと思われます。
石油会社は「ガソリンにかわる」収益源を模索中
そういった中で石油会社各社とも「ガソリンの販売減少を補うビジネス」を模索しているわけですが、現在のところそれに変わる有力な商流は明確ではないように見え、そしてなぜか「合成燃料(Eフューエル)」に関して石油会社各社は興味を示していないもよう。
傍から見ると、石油メジャーはすでにガソリンの流通網を持っているので、合成燃料を精製さえできれば合成燃料業界を牛耳ることができるように思うのですが(ポルシェは合成燃料の精製に乗り出しているが、流通網を持たず、ここが課題だと言われている)、ここに乗り出さないのは「精製にかかるコストが高すぎて採算が取れない」「合成燃料の未来が不確かであり、ここに投資を行うことは出来ない」という判断があるからなのかもしれません。
そんな中で出てきたのが「BPがテスラのスーパーチャージャーを大量購入」というニュースであり、実際にテスラとの契約を結んだのはBPのEV向け電気事業「BPパルス(一般人向けにEV用充電サービスを展開している)」。
報道によると、BPパルスはテスラから1億ドル相当の充電器(スーパーチャージャー)を購入し、早ければ2024年から展開を行うとされ、テスラが石油メジャーはもちろん国際企業にスーパーチャージャーを販売するのは「初」であり、スーパーチャージャーがテスラ以外の充電ネットワークサービス用として導入されるのもまた「初」。※ただし2016年には、モントリオールを拠点とするエレクトリックタクシー向け充電サービス用として導入されたことがあり、しかしこれは一般消費者向けではない
テスラ「スーパーチャージャー」は大きなビジネスの可能性を秘めている
なお、スーパーチャージャー関連の話題だと「トヨタまでもがテスラの充電規格を採用した」といったものが記憶に新しく、事実上北米ではテスラの規格「NACS」が標準となりつつあります。
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この理由としては、まず「テスラの充電器の設置数が多い(北米だと稼働している急速充電器の60%がスーパーチャージャーだと言われる)」こと、そして「テスラの充電器の信頼性が非常に高い」こと。
現在北米では様々な充電事業者が充電器を設置して充電ステーションを展開しているものの、まさにこれは群雄割拠の状態であり、サービスの内容や充電設備もバラバラ。
これでは消費者にとって「使いやすい」とは言えず、であれば最も数が多く、利用方法も統一されているテスラのスーパーチャージャーを利用してもらったほうが自社の顧客に対し満足度の高い充電体験を提供できる、と(自動車メーカー各社とも)考えたのだと思われます。
加えて、テスラのスーパーチャージャーは信頼性が高く、「せっかく充電しに行ったのに故障している」という他社製充電器の”あるある”もなく、たしかにEVユーザーにとってはテスラのスーパーチャージャーを利用したほうがずっと便利ということになりそうですね。
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なお、スーパーチャージャーについてはもともとテスラ車専用充電器として開発・設置されていますが、テスラは最近になってこれを他社に開放し、ホワイトハウスとの契約によってさらに設置台数を加速させる計画を持っています。
これによってさらにスーパーチャージャーの優位性が拡大するということになりますが、もしかすると今後BP同様、テスラのスーパーチャージャーを自社の充電ネットワーク用として取り入れる企業が続々登場するかもしれません。
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なお、今回の契約に際し、BPパルスは(導入する)充電器の数などについて言及しておらず、しかし出力は250kWとなること、それぞれの充電器はBPパルス仕様となること(どの程度まで変更されるのかはわからない)、BPパルスによって設置、運用されること、NACS および複合充電システム (CCS) と互換性のあるテスラのマジックドックが装備されることが明かされています(プラグ アンド チャージ機能により、支払いも簡素化および自動化される)。
主要な設置拠点は、ヒューストン、フェニックス、ロサンゼルス、シカゴ、ワシントンDC等からスタートするといい、BPパルスのグローバル CEO、リチャード・バートレット氏によれば「テスラの持つ、業界をリードするハードウェアを使用してBPパルスの持つネットワークを強化することは、米国における高速でオープンアクセスの充電インフラストラクチャに対する当社の目標の大きな前進であり、優れた顧客体験を提供するという当社の目標を前進させることに繋がります」。
一方、テスラの充電インフラストラクチャ担当シニア ディレクターのレベッカ ティヌッチ氏は「テスラでは、すべての EV 所有者に優れた充電体験を提供できるよう取り組んでいます。当社の急速充電ハードウェアの販売は我が社にとって新たな一歩であり、世界の持続可能なエネルギーへの移行を加速するという当社の使命を支援するために拡大を目指す分野であり、これは、世界の持続可能なエネルギーへの移行に向けた正しい一歩となるでしょう」 とコメントしており、今後も継続し充電器を販売する意向を示しています。
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