| マクラーレンはこれから大きな変革を迎えると思われるが、新CEOの実績を見る限り、その未来は明るそうだ |
ただしこれからニューモデルを開発し投入するまでの「空白期間」を乗り切ることができるかはわからない
さて、CEOの交代にて現在大きく揺れ動いているマクラーレン。
今回はマクラーレンのプロダクト戦略ディレクターであるジェイミー・コーストルフィン氏が「マクラーレンブランドの今後の製品計画」について語った内容がカーメディアによって公開されています。
なお、マクラーレン前CEO、マイク・フルーイット氏は「スーパーカーとハイパーカーのみ」の展開に固執しており、そのためラインアップが似通ってしまったこと、新しい顧客を取り込めなかったことなどから業績が悪化。
その後CEOに起用されたのはポルシェやフェラーリにてSUVを開発してきたマイケル・ライターズ氏ですが、同氏は、今後のマクラーレンは品質優先、そしてラインアップの見直しを行い、”被らない”構成へと変化させ、セダンやSUVの投入も視野に入れる」と語るなど、その方針が大きく変わっていることには大きく注目すべきかと思います。
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まずは「アルトゥーラ・スパイダー」が登場
まず今回のインタビューにおいて、ジェイミー・コーストルフィン氏が示唆したのはアルトゥーラ・スパイダーの存在。
同氏はこれについて明確に言及したわけではないものの、「我々は明らかにクーペに焦点を当てていますが、顧客のために明確かつ一貫して予測可能でありたいと思いますし、アルトゥーラのライフサイクルで次に何が起こるのかは過去のモデルを見れば明らかです」と語っているので、これまでのマクラーレンのコアシリーズであった12C、650S、675LT、720S、765LT、600LT等にオープンモデルを追加してきたことから想像できるとおり、アルトゥーラにもオープンモデル(すなわちフェラーリ296GTSのライバル)が登場するものと考えられます。
なお、アルトゥーラそのものは数度の発売延期を経験していますが、これは部品調達に遅延が出たということ、そしてマイケル・ライタース氏がCEOに就任した後、「この品質のままお客様に納車することはできない」と判断し、細部の調整を行ったことが理由だとされています(マイケル・ライタース氏は”今までのマクラレーンは、納車を急ぐあまりに品質をおろそかにしていた”とコメントしている)。
やはりマクラーレンもSUV?
マクラーレンはSUVのトレンドを敬遠してきた自動車メーカーのひとつであったものの、今やフェラーリでさえそのセグメントに参入し、プロサングエの開発を推進してきたのはマイケル・ライタース氏その人で、「SUVを愛している」とすら公言しています。
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ジェイミー・コーストルフィン氏はSUVについて、「我々の新しい最高経営責任者(CEO)は、すでにSUVの可能性を検討していると公言しており、その有用性は他ブランドの商業的成功を見ればわかるでしょう。この機会を検討することは適切なことだと思いますが、現時点では署名も承認も進行もされていません」。
ただ、マクラーレンの苦境は「スーパースポーツへの集中」が大きな理由となっていて、そのセーフティネットとして別のセグメントを持つ必要があること、そして今後も素晴らしいスポーツカーを作ろうとするならば(SUVという)資金獲得手段が必要であることは今やスーパーカーファンであれば誰もが理解しており、マクラーレンがSUVを作ることについて否定的に捉える人は少数派かもしれません。
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ただ、別の報道によると、マクラーレンはSUVほのかにも「セダン」を検討しているといい、もしかするとSUV市場はすでに過密であり、後発にメリットはないと判断し、であればまだランボルギーニやフェラーリが参入していないセダンにて勝負をかけることを考えているのかも。
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マクラーレンの電動化の方向性は?
そして次はマクラーレンの電動化の方向性について。
マクラーレンは「P1」でハイブリッドシステムを導入し、アルトゥーラにもハイブリッドシステムを導入していますが、今後ロータスやフェラーリのようにピュアエレクトリック化を目指すのか、ポルシェの一部ハイパフォーマンスモデルやランボルギーニのように代替燃料(合成燃料)の実用化と認可に期待を寄せるのかという疑問が残ります。
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この問題についてジェイミー・コーストルフィン氏は「非常に難しい問題ですが、我々の計画では、まず製品群を電動化してゆくことになります。エレクトリックモーターのトルクはターボラグ解消の手段としても有効であり、マクラーレンとしては、その活用によるドライブフィールをとても気に入っています。規制は国や地域によって様々ですし、いくつかの市場ではガソリンエンジンが生き残り、そしてなによりお客様がそれを求め、私達には販売のチャンスがあります」とコメント。
ここから推測するに、現時点ではピュアエレクトリック化に過度な期待を寄せず、ハイブリッドを推し進めることになるものと考えられますが、これまで「(ガソリンエンジン側で)ターボラグを打ち消そうとしてきた」ターボエンジンにつき、今後はエレクトリックモーターとの(電動ターボにせよアシストにせよ)併用によってターボラグを許容することが可能となり、ターボラグをエレクトリックモーターにて解消するという新しい考え方が主流となるのかもしれません。
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マクラーレンのデザインは将来的にどう変化する?
最後はマクラーレンのデザインについて。
マクラーレンは機能を視覚的に感じられる素晴らしいデザインを持っていますが、これまではモデル間での差別化が大きくはなく、マクラーレンにとってモデルラインアップ間における最大の差別化要素は「性能」であったわけですね。
よって今後はデザインをラインアップ間での差別化要素として取り入れることを検討しているようですが、ここで重要なのは「ガラっとその方向性を変えない」ということ。
ここではポルシェが引き合いに出され、「どの世代のポルシェ911であっても、それがポルシェ911であると認識できるよう、我々のクルマも”マクラーレンである”と認識されることを望んでいます」と語っており、さらには「既存のお客様が、自分のクルマが”最新のデザインではない”ことを恥ずかしく思わないようにしたい」とも。
つまり、現在のデザイン言語から大きく方向性を変えてしまうと、それまでのマクラーレンは「明らかに旧型」と認識されるようになってしまい、それを避けたいという意図だと考えられます。
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参照:Carbuzz