| 現地での温度感がわからないのでナントモだが、ちょっと行き過ぎのような気もする |
こうなると、もうブランドの方向性を「社会の流れ」にあわせるしかない
さて、日本ではとうてい考えられないことですが、「ドイツの環境NGOの代表が、BMWとダイムラー(メルセデス・ベンツ)につき、二酸化炭素排出量の目標を十分に厳しくしておらず、気候変動への取り組みを真剣に行っていないとして、BMWとダイムラーを提訴した」との報道。
ロイター通信によると、この訴訟は、ドイツの市民が気候変動に関して民間企業を訴えた初めての例だそうですが、フォルクスワーゲンはすでにグリーンピースから同様の訴訟を起こされており、こういった訴訟が今後様々なメーカーを相手として拡大する可能性があるとも報じられています。
「環境警察」が動き出すと手がつけられない
これらドイツの大手自動車メーカー3社はいずれも電動化を推進しているのは周知のとおりで、しかし訴訟の中ではこれらの自動車メーカーが二酸化炭素の排出を抑制するために十分な努力をしていないと主張。
2020年5月にドイツで出された判例を参考として掲げていますが、これは「当時、ドイツの最高裁判所は、同国の気候変動法が将来の世代を守るために十分な効果を上げていないと判断し、主要な経済部門に排出量の予算を設定することになり、これによって国の環境目標が加速され、2030年までに1990年比で65%の排出量削減が義務づけられた」というもの。
裁判所の言い分としては、これらの要求を満たすことは現世代のライフスタイルに影響を与えるかもしれず、しかしこれらの目標を満たさないことは、将来の世代が生き延びるために著しく劇的な犠牲を強いられることになるというもので、「次世代のために現行世代が我慢しろ」ということに。
もちろん裁判所の考えもよくわかり、次世代に”現行世代のツケ”を払わせることも公平ではないと承知のうえであるものの、CO2排出が気候変動に及ぼす影響がどれほどなのか正確に算定できない状況において、こういった判断がなされるのはちょっと行き過ぎのような気もします。
実際のところダイムラーはロイターに対し、この訴えには根拠がないとした上で、「ダイムラーは以前から、気候ニュートラルへの道筋を明確に示しており、市場の状況が許す限り、10年後までに完全な電気自動車にすることが私たちの目標です」とコメント。
今回の訴訟は非常に難しい側面を持っていて、たとえばダイムラーやBMWが正面からこれを否定すると、世間や裁判所に対して「環境に対して責任を持っていない」という印象を与え、しかし反論しないとまた「責任を果たしていない」と捉えられる可能性も。
そう考えると、ダイムラーとBMWが今回の訴訟に勝ったとしてもイメージを好転させることは叶わず(勝者なき勝訴・・・)、もし負ければ恐ろしい前例ができてしまうことになりそうですね。
なお、こういった環境団体と営利企業とは基本的に相容れない存在でもあり、それはグレタさんやシーシェパードを見ても明白で、そもそも「論点がまったく違う」ところがある意味では滑稽にすら思えます(見ている世界や価値観が異なるだけであり、彼女やそういった組織を非難しているわけではない)。
自動車業界はその一挙手一投足が注目されることに
そうなると「環境問題のやり玉」にあげられている自動車業界は「なにをしても非難される」と考えてよく、もしメルセデス・ベンツのCEOが豊田章男社長のように「一気に電動化へと進むのは良くない」「ガソリン車大好き」と発言しようものなら、もう辞任騒ぎになる可能性も。
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参考までに、ベントレーやブガッティは「植林」を行っており、さらにベントレーやレンジローバーは「非レザー素材」の採用にも積極的で、これもまた「欧州での感情」に配慮したものだと考えられそう。
このままだと、あと数年もすれば、「デカいSUVや、派手なスポーツカー」に乗っていると石を投げられるような時代が来るのかもしれません。
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参照:Reuters