| ネット上の反応と実際の消費者の反応とは必ずしも一致しない |
MTを(北米で)用意していないZ4は販売が伸び、MTを導入したGRスープラは販売を大きく損なう
さて、BMWも北米における2023年通年の販売状況を公表していますが、ここからは意外な事実が明らかに。
その事実とは「ジャンボキドニーを持つモデルの販売が好調である」ということで、これは2023年第2四半期終了後に報じられた内容(ジャンボキドニー人気)を年間通じて裏付けるものとなっています。
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圧倒的じゃないか・・・。BMWでは「ジャンボキドニー」を持つモデルのほうが、そうでないモデルに比較してずっと売れているという事実
| 実際に統計を取ってみると、ジャンボキドニー装着モデルの成長率がモノ凄い | しかもライバルメーカーのクルマをも圧倒、まさに成長の原動力と言っていい さて、近年の自動車デザインにおいて大きな話題とな ...
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「ジャンボキドニー」の評判はネット上では芳しくないが
なお、このジャンボキドニーグリルにつき、まず最初に採用されたのは4シリーズのフルモデルチェンジにおいてですが、この際には「ブーイングの嵐」が起きており、そのあまりの凄まじさにBMWのデザイナーが釈明を行ったほど(その少し前に行われた、7シリーズのフェイスリフトからその兆候が見られていた)。
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BMWのデザイナーが新型4シリーズのキドニーグリルについて語る!「批判があるのは承知の上だ。そもそも4シリーズは万人に向けてではなく、20%の人に対してだけデザインされたものだ」
| ボクはどうやらその20%に入っているらしい | さて、色々と話題となった新型BMW 4シリーズ。その話題の中心はなんといっても巨大な「バーチカルキドニー」ということになりますが、今回BMWのチーフ ...
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しかし実際には、今までBMWに興味を示さなかった人の注意を惹いたのか、4シリーズはじめキドニーグリルが大型化した新型7シリーズの販売も好調に推移し、BMWはこれを受けてさらにキドニーグリルを巨大化させるという戦略に出たわけですね。
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BMWのデザイナー「キドニーグリルはこれからも進化、そして多様化するでしょう。M4の巨大グリル?採用したことに後悔などしていません。もちろんです」
| たしかに、BMWはキドニーグリルのおかげでアウディやメルセデス・ベンツに比較して各モデルごとの個性が際立っている | 実際に販売に結びついているところを見ると、BMWの言うとおり、それは「正しい行 ...
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この「ジャンボキドニー」の採用においてはいくつかの理由があり、機能面としては「キドニーグリルを大きくすることで、その中に冷却系を集中させることができ、今まで左右にも振り分けていたラジエターを分散させなくても良くなるので軽量化や重心の適正化を図ることが可能となり、両サイドをエアカーテンなどエアロダイナミクスの効率化に使用することができる」。
そして戦略面においては「議論を呼ぶことでBMWブランドへの世間一般の関心を高める」というものがあって、さらには定期的にデザイン言語を入れ替えることで新鮮さを保つという目的も(これは比較的長い間おなじデザイン言語を採用するメルセデス・ベンツとは対象的である)。
デザイン上の理由だと「クルマをよりエキゾチックに見せることでイノベーターを狙う」「大きなクルマには大きなグリルを装着することで車格を強調する」というものもあり、ジャンボキドニーはじつに様々な役割を担っていることがわかります。
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BMWのデザイナー「成功しているときこそ変わるのだ。我々は前に進む必要があり、巨大キドニーグリルは変革の象徴である」。BMWは一歩も引く気はないらしい
| BMWは「変わらなければ競争から置いてゆかれる」と考えている | 自動車史上、デザインにおいてこれほどまでの議論と批判を巻き起こしたことはないであろうと思われる「近年のBMWにおける、キドニーグリ ...
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かくしてBMWはジャンボキドニーを今日も進化させ続けることになるのですが、現在のBMWの躍進ぶりを見るに、これらの思惑が「すべてうまく機能した」と考えることができそうですね。
BMWの「ジャンボキドニー」装着モデルの販売は好調だった
そこでBMWの戦略が成功した証拠でもある数字に目を向けてみると、フルモデルチェンジによってグリルが超巨大化した7シリーズの販売は80.9%も伸び、元祖ジャンボキドーである4シリーズの販売も37.4%伸長しています(BMW全体では9%の成長だったので、これらがいかに売れているかもよくわかる)。
一方、キドニーが「ジャンボ」ではない2シリーズは+0.6%、3シリーズは+11.8%、5シリーズは+7.4%、8シリーズは-21.3%。
そのほかにもBMWの2023年の販売における「気になるところ」がいくつかあり、まずひとつはZ4の販売が+20.2%となっており、これは兄弟車であるGRスープラの販売が-46.4%となったこととは対照的です(なぜZ4の販売が伸びたのかは不明である。たしかにフェイスリフトは行っているが)。
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いいなこのパープル!BMWがZ4のフェイスリフト版(LCI)を発表、装備充実に新ボディカラーを追加。なおMTの継続は今のところ無いもよう
| 個人的にBMW Z4はなかなかカッコいいと思うが、商業的な成功には結びつきにくいようだ | あたらしく設定された「パープル」は魅力的 さて、BMWがフェイスリフト(マイナーチェンジ/LCI)版とな ...
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そしてもうひとつは「BMWのSUVがあまり売れていない」ということ。
X1こそは+196.2%(21,042台)ですが、X2は-92.8%(191台)、X3は-4.0%(63,172台)、X4は-2.7%(9,536台)、X5は-11.9%(72,573台)、X6は-26.3%(10,077台)、X7は-6.2%(28,797台)と軒並みダウン。
一方新しく販売を開始したピュアエレクトリックモデルのiXは205.4%と好調ではあるものの、販売台数は17,301台と多くはなく、そして2023年に投入されたXMについても2,315台の販売にとどまるために既存モデルの不調をカバーしているとはいい難く、かつ既存モデルに「取って代わっている」とも言うべき存在ではなさそうです。
この状況は「SUVが軒並み好調で」あり、Q5(18%増)を62,912台販売し、かつQ7が+50%Q8が+45%となったうえ、電動化モデルであるQ4 e-tronが+178%、Q4 e-tron スポーツバックが+352%となったアウディとは大きな差があり、ハイパフォーマンスカーセグメントではメルセデス・ベンツ、アウディに勝利したものの、SUVでは「大敗」を喫していると考えていいのかもしれません。
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アウディが北米の販売実績を発表、R8とTTにとっては最後の年になるもそれぞれ2倍、1.4倍に販売が増加。なお販売の1/3はQ5が占める
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参照:BMW