| 時代とともにポルシェの「鑑定方法」も変化し、新しい時代へとバトンタッチがなされているようだ |
これからますます「ポルシェの鑑定」に対する需要は増えてゆくだろう
さて、ポルシェが公式コンテンツとして「ポルシェ鑑定人」について、そして「ポルシェ鑑定人はどんな仕事をしているのか」を紹介することに。
このポルシェ鑑定人の仕事とは「そのポルシェが真正であるかどうか」、そしてその来歴や”グレード詐称””年式詐称”を行っていないかどうかなどをチェックするもので、今回登場する鑑定人としてのプロフェッショナルはラウラ・ククックさん。
クラシックポルシェの鑑定人というと熟練の年配者を連想してしまうものの、なんとラウラ・ククックさんは30歳、そして女性という「極めて珍しい」存在です。
ポルシェ鑑定人はこんな人
そこでまずラウラ・ククックさんに焦点を当ててみると、現在ドイツはケルンにて父親とともに「ククック・エンジニアリング事務所」を経営しているそうで、つまりはポルシェの社員ではなく「独立した」立場にあるもよう(これは重要な要素でもある)。
自身は(権威あるクラシックカーコンテストである)コンコルソ・ デレガンツァの審査員を務めるほか、ポルシェはじめ様々な方面からの依頼によって世界中を仕事道具とともに飛び回っているそうで、ときには顧客とともにプライベートジェットでの移動に誘われることもあるものの、そういった場合でも「客観性を維持するため」こういった申し出を断り、自身で(通常の航空会社による)フライトを手配して移動するのだそう。
そして彼女は鑑定の際に「ストーリー」を重視しているといい、たとえば1976年型ポルシェ934ターボRSRの購入を考えている顧客から(その物件が真正かどうか)鑑定依頼を受けた際、そのクルマが過ごしてきたであろう情景を思い浮かべ、そしてそれと車体とを重ね合わせるといいます。
例を挙げると、車体の底面にある傷が「本当にル・マン24時間レースを走ってできたものであるかどうか」その情景を思い描きつつ傷をチェックする、という具合です(つまりは知識のみではなくイマジネーションも要求される)。
ラウラ・ククックさんの父親はエンジニアでもあり(そしてやはりポルシェ鑑定士でもある)、日常の足としてずっとポルシェに乗ってきたそうですが、そのため彼女は幼少の頃からポルシェに親しんでいて、高校卒業前にはポルシェ専門のチューナー、そしてポルシェを使用してレースに参加するチームでのインターンを経験したうえ、大学在学中にはマクラーレンにて開発エンジニアとしてインターンを修了したとのこと。
そして大学卒業には家業を継ぐ形で現在の仕事に就き、その後はこの分野にて日々高い評価を築いてゆくこととなったわけですね。
ポルシェの鑑定はこうやって行う
ポルシェの鑑定については「客観的に証明できる数値」を用いて行われ、ラウラ・ククックさんはこの手法を用いることで世界的に高く認められており、たとえば3Dスキャン、材料分析・年代測定用のための分光法を採用していると述べています。
これに加えそれぞれのモデルに関する知識、そして緻密な作業によってそのモデルの真性を判断することになりますが、たとえばポルシェ911カレラRS 2.7(ナナサンカレラ)のボディ鋼板の厚さは0.88ミリ、しかし派生モデルのライトウエイトだと0.8ミリ。
こういった差異は数値にて示すことができ、彼女は科学的にこれを分析することで「なりすまし」を証明することになります。
ただ、彼女の仕事の一部には「そのオーナーが信じていたことを覆す」ような残酷な事実を告げる必要が生じるそうで、そういったときにネガティブに働くのが「年齢が若く、女性で、ブロンド」という属人性。
つまりは言われない差別を受けて「お前の言う事など信じない」と激昂する顧客もいるそうですが、そういった場合に威力を発揮するのが「ケルン工科大学の車両修復学講師」という肩書であり、これを聞くと皆黙り込み、彼女の提示した事実を飲み込むようですね。
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参照:Porsche