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フェラーリの「スペチアーレ」の歴史はつねにタイヤとともにあった。フェラーリが専用開発タイヤ、そしてその再販に際して見せた「こだわり」とは

フェラーリの「スペチアーレ」の歴史はつねにタイヤとともにあった。フェラーリが専用開発タイヤ、そしてその再販に際して見せた「こだわり」とは

| どんなに高性能なクルマであっても「タイヤのキャパシティ以上」の性能を発揮することはできない |

スポーツカー、スーパーカーにとってタイヤは「生命線」である

さて、スーパーカーやハイパーカーが進化する過程において重要な役割を常に担ってきたのが「タイヤ」。

ポルシェであれば50年前に登場した「911ターボ」の強烈なパワーとトルクを路面に伝えることができ、かつRRという特殊なレイアウトのネガを解消できるレベルのグリップを持つタイヤが要求され、そこで特別なタイヤ、そしてそれを収めるための「ターボフェンダー」が誕生しています。

そしてランボルギーニだと、LM002という前例のない「重量とパワー」に耐えるだけのタイヤが必要となり、やはり専用にタイヤが開発されていますが、現代においてもブガッティ、そしてケーニグセグの最高速が「タイヤに依存している」ことが知られており、つまりそのクルマのパフォーマンスは「クルマそのもの」のみではなく、タイヤによって制約を受けるということがよく知られています。

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フェラーリもまた「多くの専用タイヤ」を開発

そして世界最高のパフォーマンスを誇るスポーツカーを誇るフェラーリもまた「タイヤとともに歩んできた」自動車メーカーであり、とくに288GTO、F40、エンツォフェラーリにおいては、そのクルマのパフォーマンスが(当時の基準から)大きく逸脱した高性能を誇っていたため、ピレリとの長期に渡る共同開発がなされたことが公式コンテンツとして公開されることに。

まず、フェラーリが「我が社最初のスーパーカー」と形容する(288)GTOは専用の超ロープロファイルタイヤを採用した最初の一台なのだそう。

この銘柄は(ピレリ)P7 Cinturatoで、もともと世界ラリー選手権用に設計されたものを2887GTOの加速やブレーキ性能に適合するように調整されたタイヤだと説明されています。

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そして1987年に発売されたF40もまた専用に開発されたタイヤを装着していて、こちらはすでに市販されていたPゼロ コレッツィオーネをベースとし、コンパウンドやサイズが専用。

さらにF50用としてもやはり新しいコンパウンドとサイズを持つPゼロ コルサ システムが開発され、車両のパフォーマンスを担保すべく装着されています。

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フェラーリF40
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もちろんエンツォフェラーリに取り付けられるタイヤも「専用」で、こちらは耐ハイドロプレーニング性を向上させるべく異方性と非対称のトレッドパターンを採用することに。

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現代のクラシック / ネオクラシックカーコレクターの頭痛のタネは「タイヤ」である

こういった感じでいずれのメーカー、いずれのハイパフォーマンスカーも「車両とともにタイヤが共同開発されて」いて、裏返せば「そのタイヤがないと本来のパフォーマンスを発揮できない」ということになりますが、クルマが古くなればなるほど”当時のタイヤ”を入手することは困難となり、しかし古いタイヤは劣化が進んでいるのでこれを装着した状態で最適なパフォーマンスを発揮することは困難です(危険だと言ってもいい)。

よってポルシェは「過去の製品すべてに対応するタイヤ」を復刻販売しており、フェラーリも少し前に288GTO、F40、F50、エンツォ・フェラーリに適合するスペックのタイヤを「再販」したところ。

これでフェラーリ「スペチアーレ」のタイヤ問題も解決。ピレリがフェラーリと共同にてエンツォフェラーリと288GTOのタイヤを再販、なおF40とF50用は発売済み
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そしてフェラーリは「タイヤとパフォーマンスとの相関性」につき、1994年にピレリが掲げたキャッチコピー「Power is nothing without control(コントロールできなければどんなパワーも無意味である)」を引用することで端的に示していますが、フェラーリは過去の象徴的なスーパーカーにマッチするタイヤを「再開発する」に際しては相当な注意を払ったといい、その理由は「当時の車両が設計された意図に沿ったバランスやハンドリングを実現したかったから」。

もちろんタイヤに関する技術は日進月歩であり、現在の技術を用いれば、当時装着されていたタイヤと「見た目とサイズ」が全く同じ、しかし軽量性や耐久性、グリップ、限界能力につき「当時を遥かに超える」製品を作ることも可能です。

しかしそれでは「当時の設計者が意図したこと」をドライバーが(運転を通じて)感じ取ることが難しくなってしまい、よって「当時と同じフィーリング」を再現する必要があるわけですね(ある意味、このほうが難しそうだ)。

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こういったフェラーリの挑戦によってクラシック / ネオクラシックモデルのオーナーはいまでも爽快なハンドリングを楽しめるということになりますが、こうやって見ると、フェラーリには「新車開発」のほかにも様々な、そして重要な仕事があることもわかりますね(そして、こういった人たちのたゆまぬ努力によってフェラーリのクルマの価値、フェラーリオーナーの喜びが維持されている)。

「フェラーリでは、スペアパーツや純正部品の需要に日々対応しています。安全面からのタイヤの重要性は見過ごされがちです。特にリミテッドシリーズ車については、正確な仕様と正しいアスペクト比のタイヤを見つけるのは容易ではありません。最新のアフターマーケットのタイヤの一部はすでご利用いただけるようになっていますが、私たちはさらに一歩進んで、従来のサプライヤーであるピレリに新しいタイヤを2つ開発するように依頼しました。そして、開発を進める一方、ピレリに対しては、同社の既存のアフターマーケットタイヤを2本テストし、それらの性能が私たちの厳しい基準を満たしていることを確認するように依頼したのです。」

グローバルアフターセールスおよびフェラーリ・クラシケ責任者 アンドレア・モデナ

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フェラーリ
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参照:Ferrari

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