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中国自動車業界に異変発生。「PHEVがガソリン車よりも安く売られ」EVより大きく成長する可能性も。さらにEVの安売りも加速し「ほとんどの新興EV企業が値引き戦略を採用」

中国自動車業界に異変発生。「PHEVがガソリン車よりも安く売られ」EVより大きく成長する可能性も。さらにEVの安売りも加速し「ほとんどの新興EV企業が値引き戦略を採用」
NETA

| 2024年、はやくも中国の自動車市場は再編の時を迎えるだろう |

すでに生き残りをかけた熾烈な競争が始まっている

さて、中国にてPHEVの値下げ競争が激化し、もはや「ガソリン車よりも安く売られ、人気を博している」との報道。

これについては中国ならではの特殊要因がありそうですが、まず消費者側の事情としては「現在、中国の景気先行き不透明感が強まり、安価なクルマを求める人が増えたこと」。

ガソリン車よりもPHEVが安価なのであれば、そちらを選ばない理由はなく、しかしこれに加え、現在中国ではNEV(BEV、PHEV、FCV)に対する補助や税制優遇が手厚く、よってクルマを購入する際には(同じ価格であったとしても)ガソリン車ではなくNEVを選ぼうというユーザーが多い、という背景もあるもよう。

加えて、中国では「ナンバープレートを取得することが非常に難しい(多額の金銭が必要であったり、倍率の高い抽選に挑戦する必要がある)」という実情があり、これはガソリン車だといっそうハードルが上がるものの、NEVであればそのハードルが逆に下がり、あるいは「障壁がなくなる」ため、やはり多くの人がNEVを選んでいるわけですね。

BYD
中国ではEVよりもPHEVのほうが人気があり前年比72%の伸び。なおEVは14%増、逆にガソリン車は11%のマイナス、通常のハイブリッドも15%マイナス

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なぜ中国ではPHEVのほうがガソリン車よりも安く販売できるのか?

しかしながら、いかに多くの人がNEVを好むとしても、ガソリン車よりもNEVを安く作って提供することは難しく、EVであればバッテリーコストの高さ、PHEVであれば(バッテリーが小さくなりそのコストが下がるといえど)「エレクトリックとガソリンという2つのパワートレーンが一つの車両に混在する」という部品点数の多さ、それに付随すつコストの上昇が発生します。

実際のところ、日本だと「ハイブリッド版のプリウス」よりも「PHEV版のプリウス」のほうが(装備の差はあれど)100万円ほど高価な価格設定を持っていて、一般的な認識だとガソリン車→ハイブリッド車→PHEV→EV(BEV)の順に価格が高くなってゆくわけですね。

ただ、現在の中国ではPHEV→ガソリン車→EVという価格ヒエラルキーが形成されつつあるというのが今回の報道の内容であり、ここにも(上述の”消費者側の事情”のほかにも)やはり中国ならではの特殊事情が大きく関係していそう。

ORA

その事情というのは「中国における熾烈な自動車業界の競争」であり、度々報じられているとおり、中国では「EVを作れば国からお金がもらえる」ので、売れるかどうかを考えずにEVを作りまくるという事情が存在します。※PHEVの製造でも補助金をもらえるのかどうかはわからないが、PHEVは中国の指定するNEV=新エネルギー車に該当するため、補助金が支給されるものと推測。もしそうだとするとPHEVの製造コストはガソリン車よりも安くなる可能性がある

そしてこの国からの補助金を目当てとして多くの新興EVメーカーが設立され、現在では500社ほどが存在すると言われますが、利益を出しているのはBYDはじめ本の数社だと言われ、そこへ昨今の(中国での)景気減速によってEVが売れなくなってしまい、これらEVメーカーがEVの価格を下げて販売し始め、これにつられる形でPHEVの価格も下がっている現状があるわけですね。

なお、ガソリン車については「(中国では)そもそも、価格を重視する人が購入する乗り物ではない」ためにEVとPHEVとの値下がりとは無関係のところにあり、つまりは影響を受けない独自市場を形成しているものと思われます。

BMW
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中国では心理的抵抗線である10万元(約220万円)を切るPHEVが多数登場

そして現在中国では「PHEVの安売り競争」が始まっており、まず口火を切ったのはGMの現地合弁企業である上汽GM五菱(SAIC-GM-Wuling)。

中国では「価格重視型顧客の心理的抵抗線」と言われる10万元(現在の為替レートでは220万円)を下回る99,800元のPHEVセダン(Xingguang)を発売し、これに続いて長安汽車がPHEVパワートレーンを積むSUV、Q05の価格を73,900元に引き下げています。

さらにNETAは「X」SUVを99,800元に引き下げており、BYDも「Qin Plus DM-i(PHEV)」を20%ほど値下げして79,800元に。

これら上汽GM五菱、長安、NETA、BYDはいずれも中国では大手に属し(2024年2月のEV~PHEV含む~販売だと上汽GM五菱は2位、BYDは1位である)、現在の中国では大手が率先して値下げを行っているという状況となっているわけですね。

BYDはEV業界中「特許出願件数」もトップクラス。一方テスラの特許出願件数はBYDの1/16にとどまり、この差は両者の「強み」の差に起因するようだ
BYD

なお、この様相についても中国のビジネススタイルが反映されていて、中国では(たとえ大手であっても)シェアを獲得するためにはなりふり構わず、損失も許容するという「焼銭」なる手法が一般的だとされ、まずシェアを獲得した後、そこから収益化を考えてゆくという考え方が採用されています。

つまりはこの戦略によってライバルを潰し、首位に立って市場を牛耳ることを目的としているわけですが、この「あおり」を受けた弱小企業がバタバタと倒産することは間違いなく、生き残った企業であっても体力を消耗してしまうということに。

実際のところ、中国乗用車協会(CPCA)の崔東秀書記長は、「競争が激化するため、2024年は新エネルギー車企業にとって重要な年となるでしょう。ほとんどの自動車メーカーは、市場シェアを維持するために割引を提供し、価格競争を繰り広げる計画を持っています」とコメントしていて、中国が国をあげて推進している「EV集中戦略」が思わぬ影響を自動車業界に与えている、ということなのかもしれません(あるいは、こういった市場の”成長痛”については百も承知であり、強い企業を生き残らせるという国策なのかもしれない)。

参考までに、VWのエントリーモデル、ラヴィダ(ガソリンエンジン)の価格は94,000元、もっとも安価なトヨタ・カローラ(これもガソリン)の価格は128,000元なので、ナンバープレート取得コスト、購入時や購入後の税制優遇や維持コストを含めると、もはやこのクラスではガソリン車を購入する意味はなく、実際のところ、現在の中国では「販売される新車の5台に2台が電動化車両」であるということにも頷けますね。

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参照:South China Morning Post

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