| 一本筋が通っているように見えるランボルギーニの展開も、CEOによってはずいぶん方向性が違っていたようだ |
ランボルギーニが今後「レトロモデル」を発表しないことにも「納得」
さて、2022年には4つのニューモデルを発表するとコミットしたランボルギーニ。
今回はそのCEO、ステファン・ヴィンケルマン氏がインタビューに答え、過去と未来についてのコメントを行っていますが、これによると「カウンタックLPI800-4はおそらく最後のレトロカーになるだろう」とのこと。
ここでいうレトロカーとはつまり「過去のモデルへのオマージュ」を色濃く反映したモデルを指しています。
「我々は常に前に進まねばならない」
そして、レトロカーがもう登場しないと発言した理由としては「ランボルギーニは後ろを振り返るのではなく、前を向くことに集中する必要がある」ためで、ステファン・ヴィンケルマン氏いわく「我々には、大きなフロントガラスと小さなバックミラーが必要なのです。歴史を理解し、過去に何が起こったかを調べることは重要ですが、私たちは革新的でなければならず、破壊的でなければならず、常に予想の上を行く存在でなければなりません」。
ステファン・ヴィンケルマン氏は1964年10月生まれで、イタリア(ローマ)育ちのドイツ人(ベルリン生まれ)という、フォルクスワーゲン・アウディグループにぴったりの人材でもあり、とくにランボルギーニとはマッチングがよく、イタリアンスーパーカーにドイツ車の信頼性を持たせることで大きな成長を実現した人物。
その功績が評価され、イタリア政府から2010年にグランドオフィサー、2014年にはイタリア最高位となるグランドクロス勲章を授与される(イタリア軍中尉の階級も持っている)など、評価の高いビジネスマンでもあります。
自動車業界のキャリアは1992年のメルセデス・ベンツが最初で、その後1994年から2004年までフィアット・アルファロメオにて経験を積み、2005年からフォルクスワーゲン・アウディグループへと移った後、2016年までランボルギーニのCEOへ、さらに2017年からブガッティCEOを努め、2021年にランボルギーニCEOへと復帰することに。
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正確には「過去に頼らない」
そして、同氏の「常に前を見る」という姿勢がよく現れているのが「ミウラ・コンセプト」の市販見送り。
このミウラ・コンセプトは当時フォルクスワーゲングループにてデザイン統括担当として就任したワルター・デ・シルヴァ(ランボルギーニのデザイナーも兼任し、エゴイスタなどもデザインした)氏がデザインしたもので、内外にて非常に高い評価を得たクルマです。
もちろんランボルギーニはこの市販化を検討したのだと思われるものの、新しくランボルギーニにやってきたステファン・ヴィンケルマン氏はなんとこの市販化を見送るという判断を下すことに。
加えて、ランボルギーニ創業者であるフェルッチオ・ランボルギーニについても「重要な存在ではない」とコメントしたことがあり、このあたりを見ても、「過去に何かを求める」人ではないようです。
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ただ、同氏がランボルギーニCEOへと就任した後、伝統の「LP」という二文字がネーミングに復活しており、ウラカンのデザイン(リアのルーバーやサイドステップ)にミウラとの類似性をもたせたり、アヴェンタドールに「ミウラ・オマージュ」を設定したり、ランボルギーニが1970年代から多用してきた「ヘキサゴン」を強調したり、けして過去を無視しているわけでも否定しているわけでもないもよう。
よって、正確にその方針を表現するならば、「過去に頼らない」ということになり、正しく過去や伝統を理解しつつも、それに頼り切るのではなく、それらを利用しつつも新しい価値を創造する、ということになりそうです。
ちなみにブガッティCEO在任中には、かのEB110へのオマージュを世に送り出しているので、やはり「過去を無視する人」ではなく、「過去を活用して未来に行く方法を知っている人」ということになるのかもしれません。
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その後、CEO交代とともにランボルギーニは変革を迎える
ただし2017年になると事情が変わり、というのもランボルギーニのCEOがステファノ・ドメニカリ氏に交代したから。
ステファン・ヴィンケルマン氏はランボルギーニにて輝かしい功績を残したものの、10年という在籍期間が(親会社のフォルクスワーゲンによって)シャッフル対象とされたようで、2017年から(VWグループ内の)ブガッティCEOへとその籍が変更されています。
代わりにやってきたのが、なんとスクーデリア・フェラーリで代表を努めていたステファノ・ドメニカリ氏ですが(現在はランボルギーニを離れF1のCEOに)、同氏はそれまでの経験を生かしてモータースポーツ部門「スクアドラ・コルセ」を強化し、モータースポーツへの関わりを強めつつ、サーキット走行専用モデル(エッセンツァSCV2など)をいくつか発売しています。
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そして同時に手を付けたのが「レトロ」路線であり、カウンタックLPI800-4の復活を決めたのもやはりステファノ・ドメニカリ氏。
実際にこのカウンタックLPI800-4が発表そして発売されたのはステファン・ヴィンケルマンCEOが着任してからではあるもんお、同氏が着任した時点では「カウンタック復活プロジェクトは進みすぎていて」キャンセルできなかったという事情があるようです。
こうやって見ると、確固たる方向性を持っているように見えるランボルギーニも、そのCEOの交代によってけっこう路線が変わっているということになり、そして今後はステファン・ヴィンケルマンCEO指揮のもと、「過去ではなく未来を」見て進むことになるものと思われ、もう二度と過去モデルへのオマージュは登場せず(これはこれで残念ではある)、期せずしてカウンタックLPI800-4は非常に(ランボルギーニの歴史上)レアな存在になった、とも受け取ることも可能です。
そしてステファン・ヴィンケルマンCEOは、ランボルギーニの今後については「電動化の推進」がトッププライオリティさと掲げつつ、ここ最近目撃例のあるウラカンのオフロードバージョン「ステラート」のようなモデルも(電動化とは別に)登場しうる、とコメント。
ちなみにこのウラカン「ステラート」は2019年に発表されたコンセプトカーで、つまりはステファノ・ドメニカリ氏時代の産物ということになりますが、このずっと前からウラカンのオフローダー版が登場するという話も存在し、じつは「ステファン・ヴィンケルマンCEOが、ずっとやりたかったこと」なのかもしれません。
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参照:Autocar