| おそらくはこの時期にランボルギーニ、ブガッティを傘下に収めたため、スーパースポーツ路線はそれらに担当させることにしたのだと思う |
ただしW12エンジンそのものは「VWフェートン」に引き継がれる
さて、現在フォルクスワーゲングループからは他のグループではあまり手を付けていない「W12(ベントレー)」や「W16(ブガッティ)」というW型エンジンを積むクルマが発売されていますが、かつてはフォルクスワーゲンブランドからも「W12」エンジンを搭載したコンセプトカーが発表されており、これは7つの世界記録を達成していたことが今更ながらに話題となっています。
VW W12コンセプトのデビューは1997年の東京モーターショー
このコンセプトカーは「フォルクスワーゲンW12コンセプトクーペ」といい、そのデビューは1997年の東京モーターショー(この頃、アウディTTも東京モーターショーでデビューしていたり、フォルクスワーゲングループは日本を重視していたようだ)。
搭載されるのはフォルクスワーゲン製の2.8リッターVR6エンジンを2つ連結した5.6リッターW12エンジンで、最高出力は414馬力、トランスミッションは6速シーケンシャル、「シンクロ」4WDシステムを搭載しています。
フォルクスワーゲンはその後、このコンセプトカーを3年間継続して開発を続けており、最終的には4WDから2WD(MR)へと変更しており、エンジンは6リッターにまで拡大され、出力は591馬力にまで向上することに。
そして2001年10月、フォルクスワーゲンはイタリアのナルド・サーキットにて高速走行テストを行い、24時間の高速走行にて平均時速183.5マイル(295km)、走行距離4,402マイル(7,084km)を記録。
さらには翌2002年2月23日には平均時速200.6マイル(322.8km)と4,809マイル(7,739km)という記録を達成し、この際には7つの世界記録、そして距離と時間に関する12の国際クラス記録を達成したとのこと。
なぜフォルクスワーゲンW12コンセプトは市販されなかったのか
なお、ここでちょっと不思議に思うのは「なぜこのクルマが発売されなかったのか」。
3年かけて改良を行い、かつ世界記録を達成したのであれば「発売しないのはもったいない」と考えてしまうわけですね。
ただ、この時期フォルクスワーゲングループにはいくつかの大きな動きがあり、まずひとつは「ブガッティ」の設立で、これは(VWが)ブガッティの商標権を獲得することによって1998年(W12コンセプト発表の翌年)に「ブガッティ・オトモビル」が立ち上げられています。
そして同じく1998年にはベントレー、1999年にはランボルギーニの買収を行っており、おそらくはこういったプレミアムブランドの買収によってフォルクスワーゲンブランドの立ち位置が変わってきたのだと思われ、W12コンセプトのようなハイパフォーマンスカーは、フォルクスワーゲンブランドではなく、ほかのブランドから発売したほうがいいんじゃないかという話になったのだと思われます。
なお、フォルクスワーゲングループにベントレー、ランボルギーニを招き入れ、ブガッティの商標権を獲得したのはポルシェ一族出身、そして当時のVWグループ会長であったフェルディナント・ピエヒ氏ですが、同氏は「大排気量、大パワー」に対して強いこだわりがあったと見え(ロールスロイスの買収も試みたが失敗)、ブガッティのW18エンジン(その後W16へと変更)を設計したのも同氏だと言われます(新幹線の中でふと思いついてメモ書きしたラフからこのエンジンが生まれている)。
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| 往々にして天才は「思いつき」を実現する | https://www.flickr.com/photos/110074903@N02/49778791641/in/album-72157713879 ...
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はたしてその後、VW参加となったブガッティはランボルギーニのシャシーやW18エンジン、W16エンジンを組み合わせたコンセプトカーを製作。
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さらには2000年にW16エンジンを積んだアウディ・ローゼマイヤーも発表しており、とにかくこの頃は「大排気量、大パワー」路線まっしぐらだったようで、しかし「フォルクスワーゲンブランドはスポーツカーのイメージとマッチしていない」と考えてW12コンセプトのノウハウはブガッティに引き継がれ、しかし「スポーツカーとはマッチしなくとも、高級車であればなんとかなるだろう」ということなのか、フォルクスワーゲンブランドからはW12エンジンを積んだ(同社史上、もっとも謎なモデル)フェートン(2002年)が登場することになったのだろうと考えています。
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