| 中国ではすでに「コスト競争」が発生しており、今後はEVメーカーも淘汰の時代へ |
そしてこのコスト競争に日米欧の自動車メーカーが巻き込まれることになるのかも
さて、(なにか面白いことをやってくるという意味で)ぼくが注目している中国の自動車ブランド、Zeekr。
これはロータスやボルボ、スマートを傘下に収める吉利汽車が展開するブランドですが、SUV、コンパクトカー、ミニバンなど総合的に展開していることが特徴です(中国のブランドでは、スポーツカーのみ、SUVのみといった車種構成ではなく、ひとつのブランドにコンセプトを持たせ、そのコンセプトの元でフルラインアップ展開することが多い)。
Zeekrはテスラ同様に「ギガプレス」を導入
そして今回報じられているのが、Zeekrが発表した高級ミニバン、「009」にギガキャストが使用されている、ということ。
このギガキャストはテスラがモデルYやサイバートラックの製造のために取り入れたことでその名を知られるようになっていますが、簡単に言うとその名のとおり「とんでもなく大きなプレス機」。
従来のキャストマシンではそこまで大きなパーツを鋳造することができず、何個かに分けて鋳造を行い、それらを溶接して一つのパーツに成形していたわけですが、それでは手間と時間がかかってしまいます。
一方、このギガキャストは「従来のパーツを溶接して組み立てたくらいの」大きなサイズのパーツを一度で作ることができ、これによって製造コストを大きく引き下げることができるわけですね。
そしてこのZeekr 009の場合、長さ1.4m、幅1.6mの大きなリアアンダーボディ部分をひとつのアルミダイキャストで作っており、このパーツのみで(ギガキャストを使用しない場合に比較して)溶接箇所を800箇所近くも減らすことができたといいます。
さらには車両の軽量化、構造的な剛性の向上、欠陥の低減にもつながるとZeekrは述べており、これによって様々な利点を得たということになりますね。
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上述の通り、テスラはこのギガキャストを2020年後半から稼働させていますが、このギガキャストはイタリアのイドラグループが製造し納品したもので、まずは溶解させたアルミニウムを鋳造型内のコールドチャンバーに注入するという工程を踏み、アルミニウムが冷却して固まると鋳型が取り除かれ、ロボットが次の鋳造のために鋳型を洗浄し、また次のアルミニウムを流し込むというもの。
テスラのギガキャストは1時間あたり最大45個の鋳造品を製造することができるといいますが、Zeekrが使用するギガキャストは中国のLK社が製造したもので、ライバルであるNioが(製造コストを削減するために設計された)新しいシャーシを発表した直後に導入されており、すでに中国の自動車メーカー同士での厳しい競争が開始されていると考えていいのかもしれません。
ただしギガキャストには欠点も
ただしこのギガキャストにも欠点があるといい、それは製造工程に起因するものではなく、「もしもの事故の場合」。
このギガキャストで製造したパーツはいわば「一枚モノ」なので、どこか破損すれば(部分的に修理できないので)全交換する必要が生じ、その場合の修理費用が極端に高くなってしまうわけですね。
ただしZeekrではその課題についても「解決済み」だといい、Zeekrいわく部分的に補修ができる方法を取り入れることにより「万一の事故の際にも修理費用を低減することができ、私たちの技術革新のために、お客様が追加料金を支払う必要はありません」と自信を見せています。
そしてZeekrは「将来的に "もっと多くのモデルでギガキャスティング技術を使用することになる」とも語っており、そしてほかの中国の自動車メーカーもこれに追随することになりそうですね。
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参照:Reuters