| ポルシェ・ミッションXには「チーター」、ミッションRには「イノシシ」、ヴィジョン357には「恐竜」ステッカーが貼られていた |
こういった裏話を開発した本人から聞くのはなかなか楽しいものである
さて、ポルシェが次世代ハイパーカーコンセプト、ミッションXの制作過程に関するコンテンツを公開。
ミッションXについては2022年半ばに「XS23」というプロジェクト名にて開発がスタートしたといい、そのテーマは「ポルシェの次の75年を象徴するのにふさわしいものは何か」であったことが明かされています。
そしてポルシェのデザイン部門トップ、ミヒャエル・マウアー氏によれば「それは夢のはじまりでした」。
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「ハイパーカー以上の存在」
このプロジェクトXS23、そしてミヒャエル・マウアー氏のいう「夢」を実現するのは959からカレラGT、そして918スパイダーへと続く先祖代々の系譜に連なる新世代ハイパーカーでなければならず、かつ最新の高性能テクノロジーを搭載しながらもプロポーションを可能な限りコンパクトに保つことが要求されたといいます。
まず最初に、過去5年間の数え切れないほどのコンセプトやアイデアが見直され再評価されることになりますが、ミヒャエル・マウアー氏いわく「私たちにとって重要だったのは、このクルマに明確なビジュアル・メッセージを与えることでした。どういうことかというと、”私は単なるハイパーカーではありません。モータースポーツは私の遺伝子の中にあるのです”と自ら主張するような、ハイパーカー以上の存在です」。
なお、少し前にはポルシェが試作しつつも「ボツ」にしたという”ケイマンに5リッターV8を押し込んだハイパーカー”が公開されていますが、そのボツの理由は「次世代を担うハイパーカーにしては、既存テクノロジーに頼りすぎているから」。
つまりは(パフォーマンスは満足の行くものではあったが)未来のハイパーカーなのに内燃機関を搭載するのはいかがなものかと判断されたようで、この時点でXS23のパワートレーンは「エレクトリック」と決められたのかもしれません。
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そしてXS23の開発プロセスに話を戻すと、ミヒャエル・マウアー氏は2014年から2017年にかけてル・マンで”4連勝”という歴史を刻んだ919ハイブリッドなどのレーシングカーに加え、1970年代の偉大なアイコンからもインスピレーションを得たといい、例えば外骨格を備えた軽量ガラスドーム、上向きにスイングするル・マン・スタイルのドアといったディティールで、ミヒャエル・マウアー氏いわく「それらすべてが、モータースポーツにおける栄光の過去のエコーなのです。私たちは幸運にも、この素晴らしい遺産を利用することができるのです」。
ミッションXはポルシェのレーシングカーの伝統を反映
その結果としてミッションXのヘッドライトは、伝統と現代性の共生を示しており、通常のポルシェだと4ポイントライトのエレメントは水平に配置されるものの、ミッションXでは906や908といったポルシェの歴史的レーシングカーにインスパイアされた”垂直型”を採用しています。
ミヒャエル・マウアー氏は”ミッション X のパネルの合わせ面”にも注目してほしいと語り、笑いながら「現代のハイパーカーの多くは、ほとんど穴だけで構成されていますよね」。
「それに比べると、ミッション X は滑らかで途切れのない面を多く用いています。その外観はほとんど彫刻のようであり、モノリシックです。ディテールへのこだわりもポルシェらしい。フロントライト、ライトストリップ、インテリアのスタートアップボタン、そしてPORSCHE文字のうち "E "は、高性能バッテリーを900ボルトのシステムアーキテクチャ経由で充電されているときにパルスを発します。
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なお、ミッションXのフロントに配置されるエンブレム(クレスト)は通常のカラー版、しかしホイールのセンターキャップに使用されるのは「モノクローム」。
そのデザインはミッションXと前後して発表された「ニューデザイン」ですね。
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ポルシェ・ミッションXはいつでも生産が可能
そしてポルシェでは常に「シリーズ生産を念頭に置いて」コンセプトカーを開発するといい、エンジニア、レーシングテクニシャン、エアロダイナミクスのスペシャリスト、その他多くの分野のエキスパートが集結して”ポルシェ・ミッション X が少なくとも理論的には実現できるよう”プロジェクトをサポートすることに。
ミヒャエル・マウアー氏は「もし量産化にゴーサインが出たとしたら」という問いに対し、「次のステップとしてエアロダイナミクスに取り組むことになるでしょうね。ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで最速のストリート・リーガル・カーにするためには、ボディを最適化する必要がある。風洞での微調整は何百時間にも及ぶことになります。ただ、このミッションXは現時点でも高い完成度を持っており、ヘッドライトを含むフロントの美観は非常に先進的で、インテリアさえもほとんど手を加えることなく実現可能です」とも答えています。
ミッションXのインテリアについて触れておくと、”妥協のないハイパーカーでありながら、(たとえばアストンマーティン・ヴァルキリーのように)機能優先のレーシングカーのコックピットのようにはデザインされていない”ことが大きな特徴。
ミヒャエル・マウアー氏は「ニュルブルクリンクの最速ラップを走れることを視覚的に誰かに証明する必要はないのです」とコメントしており、インテリアにはアルカンターラではなくレザー、そしてレザーの色を引き立てるファブリックが採用され、「デザインの質、素材、そしてすべての要素を可能な限り統合することに重点を置きました」。
全体的な構成は、カラー&トリム部門のチームと協力して作り上げており、最終的なボディ色はシグナルカラーではなく落ち着いた控えめな茶色の(専門色の)ロケットメタリック。
内外装のカラーコンビネーションは高級ファッション・ブランドによく使用される配色でもあり繊細な控えめさを表現していますが、これまでのポルシェには見られない試みとしてカーボンファイバーにもクリアカラーを用いた着色がなされています(これの実現には相当な回数の試作を行ったそうだ)。
「モータースポーツのデザインとエレガントでラグジュアリーな装備のコントラストは、興奮を生み出します。そして興奮は、私たちの最も重要なデザイン理念のひとつなのです。
かくしてミッションXは完成しお披露目されることとなったわけですが、ミヒャエル・マウアー氏は最後にちょっとした話を披露することに。
私たちデザイナーはステッカーが大好きなんですよ。あるとき、そのアイデアが一人歩きして、新しいコンセプトカーごとに動物のステッカーをデザインすることになったのです。ポルシェ・ビジョン357には恐竜のステッカーが貼られています。電気自動車時代の幕開けに、燃焼式エンジンを搭載したコンセプトカーを製作したことをユーモラスに表現しています。ミッションRのステッカーはイノシシでしたが、ショーの直前に剥がされ、今は私の社用車に貼られています。
参考までにですが、欧米では古い考え方の人、時代遅れのモノや人を指して「ダイナソー(恐竜)」と呼ぶことがあり、つまりポルシェは(ピンクピッグやダックテールのように)自虐の意味を込めてヴィジョン357に恐竜のステッカーを貼ったということになりそうです(ミッションRとイノシシの関係性については推察が及ばない)。
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そしてミッションXはというと、「陸上最速の動物であり、沈黙の狩人であるチーターがジャンプしている」さまを表したステッカーが左後輪の前に目立たないように貼られているのだそう。
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参照:Porsche