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フォルクスワーゲン「2万ユーロのEVを本当に発売できるかは確信を持てない。6%の利益がなければ市場投入できず、我々は慈善事業をするつもりはない」

2023/11/20

VW

| 現在開発中の「2万ユーロのEV」を実際に投入したとして、その頃には「もっと安いEV」が主流となっているかもしれない |

EVを取り巻く環境は予想よりも遥かに速く変化している

さて、フォルクスワーゲンは4月に「2万ユーロ以下で販売できるEVの開発に取り組んでいる」と発表していますが、実際にそれを発売するか、そして発売できるかどうかは「わからない」とのこと。

フォルクスワーゲンは現在EVの全体的な需要減退、そして中国製の安価なEVの侵略にさらされており「計画通り」既存EVを販売できていない状態だと報じられ、そのため従来の計画を変更し「EVを全く新しいブランドから、新しい製品として販売する」という方向性から一転し、一部で「従来のガソリン車のイメージを引き継ぎ、その延長線上として販売する(そのほうが顧客のスムーズな移行を移行を促せる)」という方針へとシフトしています。

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さらにフォルクスワーゲンは「安価なEV」の製造へ

これに加え、フォルクスワーゲンは(上述の通り)中国製EVに対抗すべく安価なEVを製造しようという計画を発表したわけですが、当初は「25,000ドル程度の」EVとしてID.2 Allを示したものの、そこからわずかな機関で中国車の価格がどんどん下がってしまい、さらにここから目標ラインを下げて現在のところは「22,000ドル(2万ユーロい)」。※さらにその前の計画ではID.3がボトムを担当するはずだった

つまりは何もかもが予想や計画どおりに進まないのが現在のEV市場であり(これはVWのみではなく、他社も同様である)、そして今回報じられているのが「フォルクスワーゲンは2万ユーロのEVを発売するかどうか迷っている」ということ。

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これについては単に「利益」の面で判断がつきかねるようで、いかに(以前にフォルクスワーゲンがコメントしていた)新型バッテリーの実用化ができたとしても「2万ユーロでEVを販売して利益を出す」ことは非常に難しく、そのためフォルクスワーゲンCEOのオリバー・ブルーメ氏は「それが可能かどうかについては自信がない」と語っています。

直近の会見では、2万ユーロのEVにつき、「利益率が非常に低いため、現時点ではまだ生産は決まっていない」と述べ、しかし2020年代後半には「2万ユーロで販売しても利益を取れるようになれるという確信を持っている」とも。

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フォルクスワーゲンは6%の利益率を確保せねばならない

オリバー・ブルーメCEOは「車両が生産に入るには6%の利益率が必要であり、我々が行うのは慈善事業ではなく、私たちはお金を稼ぐつもりです。反面、私たちには、適切な製品を適切な価格で市場に投入する責任があります。電気自動車の早期導入者にリーチした後、今度は自宅に充電ステーションを設置する機会のない消費者にこの技術を納得してもらう必要があるのです」とも語っていて、これまでフォルクスワーゲンがそうしてきたように「誰にでも手が届く安価なクルマを提供する」ことを使命として進めてゆく意向を示しています。

ただ、ここで想定外であったのが上述の「中国のEVメーカー」であり、まったくノーマークであった中国の新興EVメーカーが力をつけて欧州市場にて(欧米の)既存自動車メーカーのEVを駆逐する勢いを見せていることについては「どう対応していいのかわからない」のかも。

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1年前の予測はもちろん、半年前の予測ですらまったく今の”市場の実際”とは異なる様相を呈しており、今から計画したことが実現するであろう数年先には「もうまったく予想がつかない」状態になっていることも推測可能。

このまま中国の自動車メーカーが勢力を伸ばすのかもしれませんし、どこかで(致命的な)品質問題が生じたり中国政府が補助金を打ち切ったりして中国車が競争力を失い、日米欧の既存自動車メーカーが輝きを取り戻す可能性も否定できず、各自動車メーカーにとっては「様々な選択肢を持ち、いかようにでも方向転換できるよう」備える必要があるのだと思われます。

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参照:Reuters

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