| 中国市場はクルマに関して独特の嗜好を持っており、いまやすべての自動車メーカーはそれを無視できない |
この美少女アバターは日本であれば大問題になりそうだ
さて、フォルクスワーゲンが中国モーターショー(2024年北京国際自動車展示会)にて「ID. CODE(コード)」コンセプトを発表。
同社によると「このコンセプトはすべて中国市場を見据えたもの」であり、中国向けのデザインと技術革新のプレビューとしての役割を持つそうですが、デジタル アバターやスマートウインドウなどの高度なテクノロジーが取り込まれ、(中国向けとはいいつつも)世界中で販売される将来のフォルクスワーゲン各モデルに影響を与える可能性も感じられます。
なお、フォルクスワーゲンは「取締役会に不評な」デザインを行ってしまったジョセフ・カバン氏を解任し、かわりにベントレーから異動させたアンドレアス・ミント氏をチーフデザイナーに据えてデザインのリブートを行っていますが、同時に「中国向けにデザインを変革せねばならない」とも述べており、今後そのデザインが変わってゆくのは間違いないと考えて良さそうですね。
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フォルクスワーゲン ID.コードはこんなクルマ
そこで今回発表されたID.コードを見てみると、そのスタイリングは中国にて好まれる「スタイリッシュなクーペスタイルのSUV」。
実際のところVWは「中国の顧客が望むものを志向している」と述べ、フラッシュサーフェスに細長くコンパクトなヘッドライト、そしてLiDARを持ちますが、もっとも「中国市場にアピール」しそうなのはドライバーとコミュニケーションを取ることができる「デジタル アバター」。
画像を見ると様々なタイプの美少女がドライバーへと語りかけるようですが、多くの自動車メーカーがこういったアバターを採用しており、トヨタですら「bZ3C」にてアバターを取り入れているので、実際のところこれは「中国でクルマを売るためには必須」なのかもしれません。
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そのほかヘッドライトに内蔵される「インタラクティブ3Dアイ」はそのクルマのオーナーを「光で追いかける」ことができるそうですが、やはり中国市場で求められるアニメーション表示も内蔵されており、これまでのフォルクスワーゲンのクルマとは全く異なるのがこのID.コードということになりそうです。※これまでのIDシリーズはドイツ本国で企画され、ドイツ的考え方によって作られた「道具」のような質実剛健なクルマであった
なお、このアバターは天気予報や天候の変化など、出発前に必要と思われる情報をドライバーに提供し、VWはこれを「完璧なコ・ドライバー」と表現しています。そのほか特筆すべきは「スマートウィンドウ」なるデバイスで、これはフロントガラス全体をカバーしてドアまで広がるワイド シアタースクリーンとしても機能し、サイド ウィンドウには天気、充電残量、ナビゲーション、メディアなどのウィジェットを表示できるうえ、これらすべてをタッチまたは音声で制御できるのだそう。
そう聞くとBMWがノイエクラッセにて採用する巨大なヘッドアップディスプレイ(パノラミックビジョン)に近いようにも思えますが、「インタラクティブ」なところに相違があるようにも思います。
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全体的に見てなかなかに美しいスタイリングを持つクルマだという印象で、しかしフォルクスワーゲンはこのID.コードについて「市販モデルとして投入されるのかどうか」について言及しておらず、しかし市販されなかったとしても、ここに採用される特徴のいくつかはこれから発売されるであろうEVへと反映されることになるのは間違いないだろう、と考えています(あらゆる意味でフォルクスワーゲンらしくないクルマであるが、それだけVWが変わろうとしているということなのだと思われる)。
ちなみにこの「グラスルーフ」もまた中国にて非常に好まれる、そして求められる装備でもありますね。
フォルクスワーゲン「ID.コード」を紹介する動画はこちら
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参照:Volkswagen