ポルシェがついに中国市場に日和る？中国での開発拠点を強化し、中国向けにスマートコクピットの強化を図るとの報道。ついにポルシェにも「アバター」が搭載される日が来るのかも

｜　現在、ポルシェの製品と中国市場のトレンドとは乖離が生じ、人々の心がポルシェから離れるのもやむをえない　｜

中国のクルマは自動車の本質的価値を離れ、別の製品へと進化しつつある

さて、ポルシェは中国市場にて大きな落ち込みを記録していますが、この販売減少を食い止めるべく中国の開発拠点を強化し「中国車に対抗する」との報道。※これまで中国市場は8年連続でポルシェ最大のマーケットであったが、今年はその地位を失うことになりそうだ

これによると、今回の対抗策は主に「スマートコクピット」「先進運転支援システム（ADAS）」に関するもので、対中戦略の要に位置づけられている、とのこと。

なお、先日はルノーも「EV開発拠点を中国にシフトする」と報じられているので、「中国において車両の開発を行う」というのは（それぞれ目的は異なれど）一つのトレンドとなるのかもしれません。

ポルシェがついに中国車の「後追い」に

今回のニュースにおいて衝撃的なのは「中国での開発を強化する」という事実よりも、これまで独自のフィロソフィーを持って自身の価値観に従い製品を開発してきたポルシェが「中国市場に日和って、しかも中国車の後を追う」とも受け取れる行動を取ろうとしていること。

今やポルシェもフォルクスワーゲングループの一員でもあり、大きく利益を失っているフォルクスワーゲンの「穴埋め」をする必要があるためには仕方のないことではありますが（同グループ内では、利益額という点において、ポルシェがもっとも有望である。そしてVWグループとポルシェのCEOは現在同一人物である）、これはぼくにとってややショッキングな事実です。

ポルシェは中国で一体何を行うのか

そこで今回のポルシェの「対策」詳細ですが、すでに2022年に設立されていた「中国開発チーム」に対する2度目の大規模増員を行い、ここではまず”音声認識能力の精度向上””ボイスコントロール機能の向上”を追求するとされ、その次の課題がADAS（こちらについては調査を開始した段階だとされる）。

ちなみに中国車にはいくつかのトレンドがあり、エクステリアだと「ツルっとした外観」「スリムなLEDライト」「格納式ドアハンドル」「クーペ風セダン」、インテリアだと「広々とした室内」「グラスルーフ」「巨大なモニター」「シンプルで先進的、未来的なインターフェース」「豪華かつ快適さをもたらす装備」そして「アバター」。

この「アバター」というのは比較的重要な要素だと見え、多くの中国車にはアバターが装備され、音声にてこれを介して車両をコントロールしたりコミュニケーションを図ることが可能となっていますが、ポルシェもこれを取り入れることになるのかもしれません。

なお、中国市場では「（製品ジャンル問わず）キャラクター」が好まれる傾向にあるようで、そのためポルシェは数年前の中国モーターショーにおいて（他の国や地域では例を見ない）「パンダ」をイメージした中国専用のキャラクターを用いたことがあり、そして親会社のフォルクスワーゲンも最新コンセプトでは「アバター」を取り入れています（特に中国では美少女キャラが人気である）。※フォルクスワーゲンはポルシェの一足先に対中戦略を強化し中国市場にマッチしたクルマの開発を開始している

さらに言えば、中国市場では（欧米で重要視される）「クルマの基本性能」よりも「新規性」が求められる傾向があり、よって「タンクターン」「ダンス」「水上航行」「横にスライドし駐車できる」といった機能が高く評価されていて、しかし日米欧の自動車メーカーはここにさほど力を入れていないため（クルマづくりのプライオリティが異なる）、製品と中国市場の嗜好との乖離が大きいというのが今の状況かと思います。

よって、中国の多くの消費者にとっては「日米欧のクルマはなんか古臭い」「その割に高い」「（目立つ機能がないので）他人に自慢できない」という印象があるのかもしれず、ポルシェは今回の「中国の開発拠点の増強」によってこれらの一部をなんとかしたい、と考えているのかもしれません。

そしてポルシェのこういった行動は「今に始まった」ことではなく、最新モデルでは広いグラスルーフを取り入れたり、新型パナメーラでは「ダンス」を披露していますが（新型パナメーラには新開発のアクティブサスが内蔵されており、もともとダンスが目的ではないが、中国市場へのアピールを考えると”プロモーション上”踊らせる必要があったのだと思われる）、今後様々な「中国重視」の機能や装備が追加されてゆくのかもしれません。

ただ、上述のとおりポルシェの本質的価値は「（911が）スポーツカーのメートル原器」と表現されるように、他社がベンチマークとするほどの独自性、そしてその達成領域の高さにあったのだと考えていて、これが「他社の後を追いかける」「今顕在化している消費者の要望に合わせる」クルマづくりを行うとなると、結果的に”他社と変わらず”、「オンリーワン」ではなく「その他大勢の選択肢の中のひとつ」になってしまい、根本的な解決にはならない可能性も。

しかしこの現状をもっとも重く捉えているのはポルシェ自身であることは間違いなく、今回の「中国での開発拠点の強化」にあわせ、なんらかの（ほかの）対策を検討しているのかもしれませんね。

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参照：36kr