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| 新プログラム「ソリテール」から誕生した、唯一無二のクーペ「ブリュイヤール」 |
今後、ブガッティからは数々の「世界に一台」、唯一無二のハイパーカーが誕生しそうだ
ブガッティが新たに立ち上げたウルトラ・ビスポーク・プログラム「ソリテール(Solitaire)」の第一弾として、創業者エットーレ・ブガッティの愛馬「ブリュイヤール(あるいなブルイヤール=Brouillard)」に捧げる唯一無二のクーペを発表。
このモデルは、ブガッティの従来のビスポーク部門「シュール・ムジュール(Sur Mesure)」をも超える特別仕様として開発され、コーチビルドの伝統と現代技術が融合された1台となっています。
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エットーレ・ブガッティの「最愛の馬」へのオマージュ
車名「ブリュイヤール」は、エットーレ・ブガッティが特に愛していた純白のサラブレッドの名前に由来。
この馬は、ブガッティ自身が設計した特別な仕組みを使って自分で厩舎の扉を開けることができたといいますが、その気品ある佇まいと俊敏な動き、美しさは、エットーレが自身のクルマに求めた要素そのものであったと語り継がれる名馬です。
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「他と比べられるようであれば、それはブガッティではない」。創業者であるエットーレ・ブガッティの信念、卓越性の追求と経営破綻、そして再生(1)
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そういった背景もあり、このブリュイエールのシートバックやドアインナーパネル、ギアレバーには「馬」が様々な形であしらわれているわけですね。
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ソリテールとは何か? 新たな“ブガッティ流”コーチビルドの再定義
「ソリテール」は、クラシックカーの時代に栄えたコーチビルド文化、つまり車両メーカーと専門ボディビルダーとの協業による一点物の制作に着想を得たプログラム。
ブガッティでは、(二代目の)ジャン・ブガッティがこの文化を社内に取り込むことで、名車「タイプ57 SC アトランティック」などを生み出していますが、ソリテールは、その精神を現代に蘇らせたものといえます。
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参考までに、1920〜1930年代あたりまで、欧州のクルマの購入者は「車体とエンジンを」自動車メーカーから購入し、その後二コーチビルダーに持ち込んだり、あるいは納車前にコーチビルダーに「上モノ」つまりボディを架装させるという手法が一般的で、つまり当時は「すべてのクルマが購入者の意向を表したワンオフモデル」。※これを変えたのがT型フォード
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そのため当時は「同じクルマであっても」様々なボディ形状があったそうですが、ブガッティは「究極の美」を求めるあまり、外部のコーチビルダーがボディを架装することをよしとせず、自社内にコーチビルド部門を設立して(当時としては異例である)「自分たちが信じる美しさ」を追い求めたと言われます。
よって、今回発表された「ソリテール」プログラムは、まさにブガッティの原点に立ち返ったものだと考えてよく、ブガッティはこれまでの「ヴェイロン」「シロン」よりも「トゥールビヨン」の台数を抑え、しかしそこで失われる売上と利益をこの「ワンオフプログラム」でカバーあるいは大きく上回ろうとしているのかもしれません(つまりビジネスモデルの転換があり、よりエクスクルーシブなブランドへと変貌を遂げようとしている)。
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ブガッティ ブリュイヤールはこんなクルマ
このブリュイヤールはシロン世代のブガッティをベースとしてブガッティの最上位W16エンジン(1,600PS)を搭載し、これまでの20年にわたる技術開発の集大成ともいえるメカニズムが組み込まれたハイパーカー。
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その外観は「W16ミストラルのクーペ版」といった感じですが、トゥールビヨンに繋がる要素も盛り込まれているようで、シロン世代には見られなかった様々な要素も盛り込まれているようですね。
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有機的で彫刻的なデザイン。「馬の筋肉」を表現した造形
エクステリアデザインは「彫刻的で有機的な形状」がテーマだとされ、馬の筋肉や皮膚の下の腱をイメージし、シャープなラインは極力排除。
ボディ下部をダークトーンで仕上げることで車両全体を低く、より長く見せ、タイヤサイズも大きく感じさせる視覚効果が生まれています。
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ブガッティ・ミストラルの試乗レポートが登場、世界最速のオープントップは「まるでマツダ・ロードスターのように軽快で楽しい」【動画】
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フランク・ハイル(デザインディレクター)はそのデザインにつき、「ブリュイヤールには“簡素な中の複雑さ”が求められた。1,600馬力のハイパースポーツカーとしての機能性と、芸術作品としての美しさ、その両立が最大の挑戦だった」と語ります。
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ブガッティが「19年間デザインを牽引したデザイナーが退任する」と発表。後任は内部から、そしてシロン後継は後任デザイナーによって2年前から開発され2024年に発表予定
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エアロダイナミクスも“美”と融合
さらに細かく見てゆくと、固定式ダックテールウイングやリアディフューザー、ラジエター通過後のエアフロー最適化など、空力性能もデザインへと自然に融合し、美と機能を両立させる様式はブガッティの設計哲学そのもの。
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実際のところ、この「ダブルバブル」、さらにリアフェンダーとウイングとの融合は「量産車」では実現が難しい構造であると考えられ、こういったデザインを実現できるのであれば、オーナーも「高額な費用(このブリュイヤールの費用は明かされていないが、おそらくは20億円以上だと推測される)」を支払うだけの価値を十分に見出すことができそうですね。
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ブガッティのデザイナーが語る、「自分がデザインしたヴェイロンの中で、心に残る6モデル」。やはりブガッティはクルマというよりも芸術品だ
| もはや「自動車」という概念で製品を作ってはいない | さて、ブガッティのデザイナー、アキーム・アンシャイト氏(1993年にポルシェでキャリアを積み、1996年にVWグループ、2004年にブガッティ ...
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ブガッティ・ブリュイヤールの内装は“馬”と“パリ”の融合。芸術品レベルの仕上がり
ブリュイヤールのインテリアでは、パリで織られた特注のタータン柄生地やグリーンのカーボンファイバー、切削アルミニウムなど多彩な素材を融合させており、ガラスルーフを通じて“聖堂のような”開放感を演出しています。
ドアパネルやシート背面には刺繍で“馬”があしらわれ、シフトノブの内部には手作りのミニチュア馬の彫刻がガラスに封入されるなど、まさに“オートモーティブ・オートクチュール”と呼ぶにふさわしい仕上がりに。
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ブガッティが「過去の没デザイン、未発表のコンセプトカー、設立から苦境を経ての買収、現在、そして未来、さらには詐欺師」にまで触れるイベントを開催
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真の“ブガッティ・ファミリー”愛好家による依頼
この車を依頼したオーナーは、ブガッティの歴史に深い造詣を持ち、エットーレの父・カルロによる家具作品や、弟・レンブラントのブロンズ彫刻までも収集している人物。
ブリュイヤールは、ブガッティ一族の芸術性とクラフツマンシップを総結集させた、「愛馬へのオマージュ」として具現化された、と説明されています。
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年2台のみ製作。「ソリテール」は“究極のビスポーク”を体現
ソリテール・プログラムでは年間2台までの限定制作が予定されており、各モデルに最大限の時間と手間がかけられる体制が整っていることについてもアナウンスがなされ、今後は既存のパワートレインとシャシーをベースとし、完全新設計のボディとインテリアをもって「唯一無二」の価値観を届けてくれることになりそうですね。
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